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これは氷の惑星アースと金の惑星ガイアの物語・・・。
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「ブルメシアの方は如何でございましたか?」
綺麗に輝くシャンデリアに反射する大きな空間。
そう、そこはトレノで唯一の・・オークション会場。
 


「悪くないよ?砂の中に隠れた砂ネズミ共とあの醜い象女さえ視界に入らなければ・・ね。僕の美意識を今にも破壊しそうだよ、奴らの存在は」
相当な値打ちがありそうなソファーにもたれこむ銀色の髪の青年・・クジャ。
「次はその砂ネズミ狩りさ・・。もう少しこの美しいトレノで 奴らの臭いを落としたいところだけど・・。あの象女に『早く憎きネズミを倒しておくれ』って言われたんだよねぇ。全く。僕を何だと思ってるんだか」
ぶつぶつと文句を言う、クジャ。
その後に言う言葉を分かっているのかオークショニアは。
「それではクレイラに向けて例のものを準備いたします」
「ああ、頼むよ・・・」
ところで・・ とクジャの中で ふとよぎるダガーの姿。
「見たかい? 今日は可愛いお客さんがいたね?」
「可愛いお客様・・ですか?どなたかお気に召された御婦人でも?」
「ああ、とてもお気に召したね・・。 追いかけていた小鳥が 自分の方から飛び込んできたのだから・・」
・・?? 追いかけていた小鳥?
疑問に疑問を重ねているオークショニアなんて気にも留めず、自分の言葉に酔いしれながらクジャは言う。

「まさかこんなところでキミに会えるとはねぇ・・。さすがに今日ばかりはこの僕も運命ってモノを信じようって気になったよ。でも今はまだキミの羽根を休める時ではないよ?そう。キミの帰るべき巣はここじゃないんだ・・・。
キミのママが待っているお城に帰るんだ。そうしたら僕も・・」
それは、天子の笑みではない。
そう。それは憎い憎い・・。
優しく迎えてあげるよ
悪魔の微笑み。

------
ガルガン・ルー。
古のアレクサンドリアとトレノを結んだ機関。
ガルガントというガルガン草が大好きな大蜘蛛に乗り、がたがたと道なき道を駆けていく。
しかし、それも時が過ぎれば終わりが来る。

「着いたっスね」
「ちょっとガルガントも疲れちゃったみたいね」
ダガーは必死にガルガン草を食べているガルガントを見つめ、そう言った。
「しかしアレクサンドリアにこのような場所があるとは・・。全く知らなかったでございます」
「・・何処っスかね、ここは?」
「とりあえず、風の通り道があるから・・。どこかに通じている筈よ」
確かに 未だに風が・・空気がここまでくるということは、どこかに出口があるということだろう。
「とにかく、行きましょう!」
改めて気を張るダガーの一声で前に進む一行。   

「ここ、ほんとにアレクサンドリアなんスか?」
「知らぬが、きっとそうであろう!」
しかし、右を見ても左が見ても知らない空間が広がるばかり。
「・・で。どっちに行けば外に出られるんスかね?」
「う~む、それは・・ きっとこっちでありますぞ!」
「そういう風に行動するのをなんていうか分かる?」
「・・?バッシュ殿・・?」
「こういうときは勘で動かないほうが良いってことよ。 ね?ダガー」
ダガーが知っているのを分かっているかのように、バッシュはダガーに声をかける。
「・・ええ。トット先生から、この場所の話を聞いた事があるの。この場所は、昔のアレクサンドリア王が敵国の侵入を防ぐために設けた場所だって。それから、確かトット先生は、こんな事も言っていたわね・・」
「姫様! そのような話は後ほど、ゆっくりと聞かせて-」
勝手に先に進んでいたスタイナーの目の前には・・・。
一行を覆いかぶさるかのような大きな大きな・・鉄製の牢屋。
「お主、何をした!」
いつものようにスタイナーとマーカスがぶつかり合う。
「俺は何にもしてないっスよ。変な言い掛かりは止めて欲しいっス」
「ふがー!!本当に何もしとらんのか!?」
「信じられないんスか?」
「とにかく後ろに・・」
もう逃げられないわよ・・。残念だけど
そう。
覆いかぶさるかのうような・・ではなく。
紛れもなく、覆いかぶさっている状態で左右上下みても逃げられる術が無い。
そんな一行を見つめながら笑う、2人の・・。
「引っ掛かったでおじゃる」
「いい眺めでごじゃる」
おじゃるとごじゃる・・ではなく、ゾーンとソーンがお互いの顔を見つめ、笑いあっていた。
「ゾーン、ソーン! プルート隊隊長のスタイナーだ!直ちに、この仕掛けを解除するのだ!!」
「そう言う訳には、いかないでごじゃるな」
「諦めるでおじゃる。話があってもなくても、ブラネ様には会わせるでおじゃるよ。」
「何たって、ガーネット姫を捕らえよ!と命令したのは、ブラネ様でごじゃるからな!」
「!?」
お互いの顔を見つめあう一行ら。
「・・・そのブラネの目的は一体何なの?」
冷静にゾーンとソーンに問う、バッシュ。
「・・!!バッシュ!ブラネ様を呼び捨てに-」
「貴方こそ分かってないわね。その『ブラネ様』が何故私たちをここに閉じ込める許可を彼らにする訳?」
「何かの間違いであります・・」
「その間違いが仇となるわよ?スタイナー」
それに・・・。
冷たい氷の鳥はにやりと微笑を浮かべる。
「その『ブラネ様』に話したいことがあるわ。呼びなさい」



------
大樹の幹らを潜り抜け、たどりついた聖なる楽園・・・。クレイラ。

「・・・・・ここが・・・クレイラ・・?」
不思議な雰囲気が醸し出している聖樹を見てサクはふと思う。
・・・ここは・・・フレアが修行していた場所に似ているな・・。
「ブルメシア王はご健在だったようじゃ」
ほっと息を吐くフライヤ。
「ほら、あそこで手を振っている・・。ジタンよ、私は王に謁見してくるが・・お主達はしばらく休んでおいてくれぬか?」
「ああ、わかった」
それじゃ、と言い フライヤは奥へ奥へと入っていった。

ふと。
「・・?」
サクは何かの匂いを感じた。それは木々からなのだが・・。
「・・気のせいか?」
サク・ビビ・ジタンの3人は街中に入っていった。
刹那。
「あっ!!! とんがり帽子のオバケ!!」
小さな男の子がビビを指差し警戒心を立てる。
「そ、それ以上、近寄らないでっ!」
「やっぱり俺達を襲うつもりだったのかっ!?」
「え・・・ぼ・・ボクは・・」
「言ってみろ!!何故ブルメシアを襲った!!」
「ボク・・ボクは何も・・」
弱気なビビに対し、ジタンは声を掛けてやる事が出来ずにいた。
だがサクは違った。
「この子は何もしていない。私とジタンとフライヤと共に旅をしている・・」
「だからって-」
「ビビはビビだ」
ぴっしりというサク。
「私の仲間を侮辱したら・・どうなるか-
「ひっ」
獣の瞳でにらみつけられる兵士。
「・・さあ、行くぞ。ビビ」
「・・うん・・」


しかし、フライヤは夜になっても帰ってこなかった。
「なんだかなー」
「・・さすがにフライヤは何をしているのか・・気になるな」
ふと思った。
・・・ここの匂い・・。
(ナツカシイ)
「・・フレアも思っている・・か・・」
「・・?」
「フレアもここを守りたいということだ。ここは私たちの故郷にかなり似ている。それがどんなに短期間で終わったとしても、私たちは覚えている。だから・・」
「・・・守る・・か」
そう言って、ジタンは大きな月を見た。

 
翌日。
突然大聖堂に呼び出された3人は一日いなかったフライヤを見ていた。
「フライヤ様」
クレイラの大祭司は静かにクレイラに言う。
「我々はこれから古来より伝わる砂嵐の力を強めるための儀式を執り行います。クレイラを取り巻く砂嵐の力を強めれば、敵も諦めて帰ってくれる事でしょう。そこで、竜騎士であるフライヤ様の力を加え、より強力な砂嵐を作りたいと思うのですが・・・」
「ブルメシアとクレイラがひとつだった頃から伝わるあの儀式の事ですね?わかりました」 

ジタンはそれを聞き、朝呼び出されたときのフライヤの言葉を思い出す。
『ジタン、私はブルメシアを守る事が出来なかった・・・もうこれ以上、ブラネの思い通りにはさせたくないのじゃ!』
(・・フライヤ、何だか変わったな。初めて会った頃は、そんなに強い心を持った奴だとは思わなかったぜ)
『フラットレイ様が願ったブルメシアの平和は遂に叶える事が出来なかった・・。 今の私に出来る事は、この美しいクレイラを守る事のみじゃ・・』
(クレイラを守る事は、きっと、フライヤ自身のためにもなると思うぜ)

 一方サクリティスは・・・。
(儀式・・ねぇ・・)
(? どうしたフレア)
(・・・覚悟・・した方がいいかもしれない)
(・・・・儀式は上手くいかないだろう・・な)
(ああ・・、クレイラの周りに渦巻いている黒い力・・。
時期を見ているのだろうね。この結界を解くための・・!)
(・・・この場所は・・守れないのか・・?)
否。
(私たちが一つになったらこの場所を守ることができるだろう)
そして儀式を見ていた。

 しゃらん・・・。
そんな不思議な音がしたとたんに激しくなる。
聖堂がぴりぴりと痺れるかのような音を立てる。

そして。儀式が終わりがけのときにぴーん、という何かが切れる音がした。
弦が・・切れたのだ。
「弦が切れた・・・不吉な・・」
「・・力が強すぎたのだな」
その場の緊張に対し、サクは口を開く。
「・・お前たちがこの場を『守りたい』『守りたい』と願う力・・念が強いほど、強力な力を要する。だが・・・」
そう言ってルビー色に光る石を手にする。
「・・これはその念に負けたということだな」
「・・・どうすれば」
不安がる神官に対し、獣の瞳は黒い力のみを見つめていた。


------
「ガーネット姫もようやく16歳を迎えたでおじゃるな」
にやりと笑みを浮かべるゾーン。
「ガーネット姫もようやく召喚獣を取り出せるようになったでごじゃる」
こちらもにやりと笑みを浮かべるソーン。
それをぶち壊した一匹の大鳥がいた。
ぎぃぎぃ言いながら、閉じ込められた檻をがたがたとさせる。
その拍子に、大鳥の羽根がぽろぽろと落ちる。
しかもそれは「凍っている」のだ。
こんな迷惑な話は殆どない・・。
「うるさいでおじゃる!!」
「静かにしてろでごじゃる!!」
大鳥に怒りをぶつけるゾーンとソーンだが、後ろで怒っていらっしゃるお方をお忘れなのだろうか・・?
「ゾーン!ソーン!そんな大鳥かまっている場合じゃないよ!!早くガーネットから召喚獣を取り出すんだよ!!」
「分かってるでおじゃる!!」
そう言い、ぱたぱたと気を失っているガーネットへ走っていった。

------
事の発展はバッシュが「ブラネ様」と話したいという所から始まった。

「・・で、どうよ?」
にやりと微笑んでいるバッシュ。
それが不気味にさえ思えたゾーンとソーンは、
「・・分かったでおじゃる!」
「特別に了承するでごじゃるよ!!」
と。
あっさりと了承を得た。
だが・・。

こつこつこつこつ。
ぼそっとバッシュはダガーに声を掛ける。
「ねぇ・・どこまで行く気かしら」
こつこつこつこつ。
音をたてて歩いているのでゾーンとソーンには分からない。
「・・・地下に・・お母様がいるとは考えられない・・」
「だからといって、ここから逃げれるわけない・・わね。でも、私は呼びなさいといったのに~・・」
ふふ とダガーは横で微笑んだ。

そして地下部屋へ、たどり着いた。

「おお、ガーネット! 何処に行っておったのじゃ。母は夜も寝られん程に心配しておったぞ!さあ、もっと近う寄って顔を見せておくれ」
ダガーはブラネを見るや否や、俯いてこういった。
「・・お母様、ひとつお聞きしたい事があるのです・・」
「何じゃ? 可愛いお前の聞きたい事なら何でも答えてやるぞ」
にっこりと微笑んだブラネをバッシュは見、偽の笑みだ と一瞬で理解した。
それでも話は進んでいく。
「ブルメシアを滅ぼしたという話は本当の話なんでしょうか?」
「何だ、聞きたいというのは、そんな事なのか?それは違うのじゃ、ガーネット。あれは、ブルメシアのネズミ達がアレクサンドリアを滅ぼそうと企んでおったのじゃ。だが、この美しきアレクサンドリアをそう易々と滅ぼされてはならんじゃろ? だから、そうなる前に手を打ったのじゃ」
「・・・その話、信じでも良いのでしょうか?」
「当たり前ではないか。それとも母の言ってる事が信じられぬのか?」
「わたしには、その話を信じる事が出来ません!」
「おお、どうしてなのじゃ?この母の言う事が信じられぬと申すのか?」
「・・・自分の目で見てきたのです。この世界が、どんな形をしていて、どんな人たちがいるのかを。そのなかで、唯一信じられる仲間の中に、ブルメシアの人がいます。その人の種族が、そんなことをする人じゃありません!!」
必死に言うダガー。
しかし、この話もここで終わり。
「自信気だね~・・」
ダガーたちの後ろから声がした。

声の主は、銀髪で長い。
ふわりとしたローブはなにか異様な形をしていた。
最低でも、この世界では見かけられないような・・・。
「どのぐらい、この世界を見てきたかは分からないけど。そろそろ お時間だよ・・小鳥さん」
はっ とダガーは目を見開いた。
なにかくる・・。
それは分かっているのに・・。
スリプル
そして、その場でふわりと床に落ちてすやすやと寝てしまうダガー。
(・・まずい・・!!)
反転させるも、もはやそこは敵の領域。
完璧に囲まれている状態で何もすることが出来ない・・。
「小鳥のお仲間は・・抹殺ですか?」
その通りだ とブラネは頷く。
「そんなに簡単にいくものですか!意地を見してあげるわっ」
そう言って詠唱するが・・・何かに阻まれる。
(・・・この気配・・もしかして・・)
「何もしないでおしまい?」
そんな言葉とは裏腹に、「別のこと」で動揺を隠せないバッシュ。
(・・まさか・・目覚めてしまったの?)
そして『それ』は現れたのだ。 

------
そして今。
バッシュは「神獣」の力と化しているのだが・・。
ぎぃぎぃとまた檻を傾けたりしている。
また、何故、ここに閉じ込められたのかというと。
珍しい「珍獣」だから ということなのだが・・。
『なによ!もう!こんな所にレディーを入れないでよ!!しかも私のことを「珍獣」とか言っちゃったりして!!れっきとした「神獣」なんだからねぇ!!』
といっているのは誰にも分かるまい・・。

そんな文句を言いつつも・・。
バッシュ・・ヴァシカル=クリスタルはダガーだけを誰よりもしっかりと視ていた。


------
冷たい氷のような眼差しで、獣は敵を見ていた。
敵は操り人形。
それを無言で切り裂く。
うざったい。
その獣の心はそのようなことを考えていただろう。
だが、不安もあった。
「何かが起こる気配がする・・」
ここだけではなく、この世界全てに・・。
内容まではわからないが、獣は黒き気配を感じていた。 
 

それは早朝のことだった。
空からひらりひらりと落ちてきた物体があったのだ。
それは・・「黒魔道士兵!!」
それは無知であり、人間ではない存在物質。
問答無用・・否 初めから「感情」「考え」というものがない黒魔道士兵にとってはとてもやりやすい場だ。言葉通りに、ブルメシアとクレイラの人々を殺していく。
「ちっくしょう、調子に乗りやがって! 街の方は大丈夫か!?」
「・・・全員パニック状態だな・・」
ジタンの目の前にはサクがいた。
さすが、冷静冷淡なだけある。
だが、「そんなクールになっている場合じゃないだろ?!」
「分かっている・・だが・・」
ジタンを見つめたのは・・・人間ではない「殺気」。
「この木々らを守る」
そう言うや否や、大剣を持ち直し、走り去っていった。
「・・・・」
ジタンはぞくりとした。
あれは人間ではない。
分かっている。分かっていることだが・・。
ふと、周囲を見てみる。
「何だ、まだこんなところにいたのか?」
双子の巫女、シャロンとシャノンが居た。
「ええ、私達、この場所がとっても好きですの」
「心を洗い流すような砂嵐の景色はなくなりましたけどもね」
堅苦しかった雰囲気が、ふわりとした雰囲気に変わる。
「そうだな、オレも綺麗だと思うよ。この街は綺麗な街だ。住んでいる人も、とても優しい人達ばかりだ」
だから・・だからこそ。サクと同じように・・「守りたい」。
「だから、何としてもみんなを守りたい!さあ、大聖堂に集まろう!みんなで力を合わせれば、何とかなるさ!」
そう言い、ジタンと生き残ったものたちは大聖堂の中へと走っていた。

だが、相手は厄介。
大聖堂の目前の目前、まさに目と鼻の先。
敵が現れたのだ。
しかも左右に5体ずつ。
「くそぉっ、守りきれるかっ!?」
ずばっ と綺麗な十文字が敵の懐に描かれた。
「やっと頂上か・・」
「サク!!」
「なんとか無事着いたようだ。だが・・」
そう、相手は厄介。
「まだまだ来るらしい・・」
ふわりとまた光が5体追加される。
「さすがに量産型だけあるな・・。倒しても倒してもゾンビのよう復活してくる・・」
そう言うと必然的に溜息がついた。
「だが・・倒すしかないな・・」
サクでさえ、疲れが出ている。
・・・否。それは「疲れ」ではないのだ。
とてつもない気配。
それを敏感に感じる。
原因は分かっている。だが、無理なのだ。
そう思い、敵へと向かっていくが・・。
「邪悪なる者達よ、そこまでだっ!この槍が折れぬ限り、この地を奪う事は出来ない!鍛え抜いた私の槍の前には、お前達など薄菜も同然!」
突然大聖堂の天辺から男が舞い降りてきた。
それは若い若い、ブルメシアの民。
「さあ、早く逃げるのだ!」
「誰だか知らないけど、恩にきるぜ!」
その男に任せ、ジタンらは大聖堂の奥へと入っていった。

------
悲しみの歌・・苦しみの歌・・愛しさの歌・・・そして破壊の歌。
どれもかしこも、リヴァイアサン-サクリティスとあの山の神殿で出会ってからの「思い出」として親しんだ歌たち。
だが・・それは・・。
私の父に送った歌なんだと、あの時感じたんだ。


ぽろん、と悲しげな音が・・ハープが啼く。そして私は込み上げてくる「黒き気配」を追い払うかのように謳った。ただただ、ビビはその不思議な旋律に耳を傾けていた。
・・幸運にも生き残ったクレイラの民らと共に。

そして少しだけ、黒き気配が消え、私はほっとした。

「寂しい歌だね・・」
そう言ったビビは私に言った。
「何で、そんな寂しい歌を歌うの?」
「・・これはフレアの父がフレアの母に対して歌った歌だ。守れなかった・・悔しさと裏腹の愛しさ・・。それを詩に切り替えて「不安要素」を消す効果がある・・」
「・・そうなの?・・フレアのお父さんとお母さんはどうなったの?」
「・・・・・・・・・・・」
無言になってしまったサクは、何か複雑そうな顔をしていた。
それ以上言ってはならないと思い、ビビは「そろそろジタンたちのところへ行こうよ」と上手く話を切り替えた。

 その時・・。横を通り過ぎていく、小さなネズミ・・。

 「あ、あれ? 今のパックじゃ・・?」
きょろりとそこにいた仲間を見つめてみる、ビビ。
「みんな、どうしたの?」
『何か』が起こっているのは確かなのだが、後から入ってきた、ビビとサクはその『何か』が全くもって分からなかった。
ふと、ビビはフライヤの顔を覗いてみた。
「あれ? もしかして、泣いてるの、フライヤ?」
その声を聞いて図星だったのか、フライヤはただ苦く微笑んだ。
「面映ゆいのう・・幾度となく夢に見た男にやっと出会えたというのに・・・」
そして決心したのか、壁にかけておいた愛槍を手にし、こう言った。
「さあ、ジタン!まだ敵の手が休まった訳ではなかろう! 今一度、体勢を立て直すのじゃ!」

 その時だった。
「ひえぇぇぇっ! ひえぇ、命は・・命ばかりはお助けをっ!!」
左端にいた全員が右側を見た。
そこにいたのは、アレクサンドリア国で女戦士では実力がある・・・「ベアトリクス!!!」
「ふっ、情けないネズミどもよ!お前達には、この宝珠を持っておく資格はありません!」
美しい持ち方をせず、少々下品な持ち方で宝玉を持っている。
「この宝珠さえ手に入れば、もうこの街などに用はない!」
「待てっ!」
「待つのじゃ!」
そう言い、ベアトリクスを追っていった。

 
「黒魔道士達よ、用は済みました。引き上げる準備に取り掛かりなさい」
ベアトリクスは近くにいた黒魔道士兵に指示すると黒魔道士兵は魔法を放出するため詠唱に取り掛かった。
「それで逃げるというのか・・」
残念だな、と赤の瞳で睨んでいた者が言った。
ふわり と強烈なプレッシャーを抱きながらも、さわりと揺れるショックピンクの短めな髪。
「・・・貴方とはもう一度戦いたかったのですが・・」
「紳士だな。だが、もう二度と私とお前は会えない」
「・・?」
「何故って顔だな・・私の正体は・・-」
己の事を言おうとした途端。
「サク!大丈夫か!?」
ジタンたちが駆け寄ってきた。
「貴方とは会えないのですね・・残念で極まりないです」
「コレも運命の内だ。それにこのパターンすら慣れているからな」
「・・・・・それよりもいいのですか?」
「何が?」
「私を逃がすことになるじゃないですか?」
「ならば、言おう。逃げれるなら逃げろ」
なんだか捨てられたようですね・・ と苦笑する、ベアトリクス。
そしてさようならと言葉を告げ、先ほどの黒魔道士たちが放出した魔法の中へと入っていった。

「何で逃がしたんだ!!」
興奮状態でキレるジタン。
それをそっけなく、「別に逃がしたわけではないぞ?」そう言って、地面を指差した。
「この魔法は『デジョン』と呼ばれる異次元移動魔法。今のうちならば、この中に入ってもベアトリクスに間に合うだろう」
「まじかっ!?じゃあ遠慮なく。お前達も、すぐ来いよ!」
そう言いつつ、ジタンは喜んで魔法の中へと飛び込んでいった。
それを見ていたビビが、「ジタンが行っちゃったよ!?」と驚いているビビに、フライヤは故郷を眺めていた。
そこからならば近くにでもあるかのような『青き都市』。
「私にとっては、もうこの地を訪れる事はないやもしれぬ。また、お主にとっては、お主の本当の姿を知る最後の機会やもしれぬな、ビビ。さあ、ビビよ! 勇気を持って行くのじゃ!」
フライヤもまた、魔法のなかへと飛び込んでいく。
「あううう、フライヤまでも・・」
左右にゆらゆらと混乱しているのだろうか、動くビビ。
はた、と思い出したかのように、サクを見た。
「サクは行かないの?」
「お前が先だな」
「ええーーー。僕、高所恐怖症なのに・・」
「だが、少しだけ慣れたのではないか?」
「う・・ん。で、でも・・」
だが、その言葉を残したままビビは無理やり押しこまれ、魔法の中へと入れられた。
ビビは振り向く。
「サク・・!!!!」
「お前たちの旅は面白かったぞ。だが、お前たちとは別に『やらなければならない事』が出来た。お前たちは、このまま前に進め。後ろを振り向くな。そして強くなれ・・」
絶句のビビに対してサクはにこりと微笑んだ。
「さらばだ・・小さき者よ」
そういうのと同時に、ビビもまた魔法の力によって飛んでいった。
さあ・・ と、木々たちが揺れる。
「残されたのは私と残りのブルメシア人・・ということか」

------
・・閉じ込められた鼠たちは果たして動かないことが前提なのだろうか?
否・・鼠達は実に勇敢で・・・。
「脱出するのだ!」
「本気っスか?」
「このままじっとはしていられないのである!」
「まあ、いいっスけど・・・」
「だがどうやって・・」
「って、そこまで練ってなかったッスか!??」
・・実に勇敢で単純である・・。


------
その頃・・。
赤いレッドローズの色に染まった飛空艇が空を飛んでいた。
場所は・・・・・フレア、そしてサクがいる美しき聖樹「クレイラ」上空。
「さて・・。ガーネットも召喚士の力を持たなければ、ただの小娘。もはやガーネットに召喚獣を呼び出す力は無く、呼び出せるのは、このダークマターによってのみ!」
黒い光を宿した宝玉を美しいものと言わんばかりにそっと見つめるブラネがそこにはいた。
それは狂い、醜くなった、強大な猫のような・・。
「クジャの言っておった事が本当かどうか、こいつを使えばすぐにわかるというものだ」
黒い宝玉を空に掲げ叫んだ。
「さあ、オーディンよ!お前の剛力を見せておくれ!!」

その間にジタンたちは同じくブラネが乗っている飛空艇にようやく着いた。
「ふぅ~、ついたな」
「なかなか長かったのぉ・・」
なんだか、いつの間にかお爺さん、お婆さんのように疲れ果てている尻尾を持っている二人組みがぐちぐちいっているが、それはおいといて。
「あ・・・あれ・・・」
ビビが恐怖の声を上げた。

ビビが見つめていたのは「暗黒」。
全てを破壊するかのような黒い闇・・。
そこから馬が現れた。
馬もやはり黒く、狂気に満ち溢れていた。
その馬に乗っていたのは、騎士だった。
騎士もまた狂気に満ち溢れ・・ある「一点」を見つめていた。
それは・・・・。
騎士は手に持っていた大きな大きな槍を上空に掲げ、一気に「一点」に投げつけた。
その「一点」・・・クレイラ
「!!」
がくん、と崩れたのがフライヤだった。
「クレイラ・・・フレアが・・パックが・・皆皆・・・」
「どうすれば・・いいんだよ・・!!畜生!!」
全てを破壊する槍を見つめて絶望を感じる3人。

『大丈夫だ』
ふわりと。
声が聞こえた。
「フレア・・?」
「フレア!!どこに!」
『ここは大丈夫。行きなさい。貴方たちはやらなければいけないものがある。貴方たちは守らなくてはいけないものがある。それは何なのかは、貴方たち自身がしっかり分かってるはずだ。そして・・・』
それから、声がぷつりと聞こえなくなった。
「じゃあ・・じゃあフレアはどうなるんだよ!!」
「・・・行きなさい・・か・・」
ぽつりと重たげな言葉を口にした。
そして、ビビは決意をする。
このまま・・フレアの言葉通り、進むことに。
「行かないと・・恐いけど行かないと・・。フレアが言ったんだ。行こう!ジタン、フライヤ!」
「成長したな・・ビビ。ビビの言うとおりだぜ!」
「そうじゃな!行くぞ!」
「でもどうやって-」

「空が・・・夕焼けのようだ・・」
(ベアトリクス!!)
(隠れよう!!)
敵の気配を感じ、すぐさま隠れるジタンたち。
「何故・・・」
おおん!
「・・獣の声・・?」
カッと空が赤く光る。
「・・・サク・・?」

ベアトリクスは目をこしらえてきっちりと見つめた。
一匹の獣がいる。
赤い鬣が長く尾まで続き、とても長く、ふわりとしていそうな感触さえ感じそうな白の体。
口から出されるのは強力な火炎放射。
それは赤というよりも明るい紅といったほうがいいほど、空を反映させる。
すぐさま、それが「サクリティス=リヴァイア」だと感じた。

だが・・今はそれどころではない。
「何故・・ブラネ様があんなにも変わってしまったのか・・。そして、何故ガーネット様を処刑するのか・・」
(処刑!!ダガーが!?)
(ジタン、しっかりしろ!今お前が暴れると・・・)
(そうだよ!ジタン!)
(分かった、分かったから引っ張ったりしないでくれ・・い・・いたい!)

「私は・・私は・・」

「おおベアトリクス将軍、例の物は手に入れたか!?」
「はっ、お望みの宝珠は、この通り手に入れました。」
「おおっ、これさえあれば!・・いや違う、後もうひとつだ!もうひとつ、宝珠を揃えなければ!!」

興奮し、だん、とブラネはテーブルを叩いた。
「ベアトリクス将軍よ!早く、後ひとつの宝珠を見つけ出すのじゃ!」
「・・わかりました。ところでブラネ様、ガーネット姫のお体の方は大丈夫ですか?」
「ガーネット?ガーネットの体からすべての召喚獣を抜き出した後はあの小娘は、もはや用無しになるな!」
以前から、ガーネットのことを気にかけていた。
だが・・小娘?自分の子供のように可愛がっていたガーネットを小娘?
「・・・ブラネ様、それはどういう事ですか?」
冷静に、実に冷静にベアトリクスは聞いた。
しかし、返ってきた答えは・・実に現実で、残酷。
「ガーネットは宝珠を盗み出した罪で処刑する!!」
一瞬、どこか天国へと飛んで行きそうになった。
「今、何と?」
「ええい、何度も言わせるな!このレッドローズがアレクサンドリアに到着したら、直ちにガーネットは処刑すると申したのじゃ!お前は、早く後ひとつの宝珠の在処を探し出せ!!」
「ブラネ様・・」

(何故、ブラネ様がクレイラを消滅させる必要があったのか・・。そして、何故召喚獣、そして黒魔道士などを使われるのか・・。そして・・)
獣を見た。獣は怒り狂いながら、去っていった。
(私は・・・このような事のために技を磨いてきたわけではないのに・・。それなのに、何も出来ない)
去っていった獣は鳴き続ける。
(何故、お前は他人を救いたがる?何故、お前はそこまでして自分を壊す?
そして、何故私はお前のように何も出来ないんだ・・?)

不安ばかりのベアトリクスに対し、いつ見つかるかどうかの問題となっていたジタンたちはこそこそと話していた。 
(何で呆然としているんだ?)
(・・・まるで殺気がないな・・)
(よし、いまのうちに!!あのポットで飛ぼうぜ)
(ええ!?あれでどこにいくの?)
(当然!俺、さっき兵士がテレポットを使ってアレクサンドリアに戻る所を見ちゃったし聞いたからね)
(さすがジタン!)
(ダガー、待ってろ!俺が絶対助けてやる!!!)


------
アレクサンドリア城内では一種の異変が起きていた。
氷の鳥でもなく、囚われの身の王女でもない。
そう。それは、ちっぽけな兵隊とちっぽけな盗賊に起こった異変である。

そうそれは、スタイナーとマーカスが入っている牢獄で起こった。
「何を・・しようとしているんだっ!!あの二人は!」
そう言ったのは、牢獄の身回りをしていた一人から洩れたもの。
洩れるのも無理はない。
その牢獄はまさに今、振り子のように動き出しているのだから。
そして、それがどんどんとこちらに向いてきているという彼女たちにとっては非常事態。
「まずい・・逃げ-」
言葉が続くことはなく、どん という音が鳴り響いた。
「ふうう・・なんとか脱出できたッス」
「姫様~!!今このスタイナー、行きますぞ!!」
「って、姫様ばっかり・・」
牢獄内でなんどもなんどもぐちぐちねちねちと散々話を聞かされたので、嫌になってきたマーカスであった。


そして裏門に続く道にたどり着いたとき、マーカスが足を止めた。
「・・・?」
何故、と思いスタイナーも足を止めた。
「じゃ、俺は兄貴がいる魔の森へ急ぐっスから」
そう言い、すたたたと走り去っていった。
「って、待つのだ貴様-」
感謝の言葉も貰っていないスタイナーだが、マーカスの素早い足に勝つことはできない。
その刹那。
どすんと何かが落ちてきた。
「ぐえっ」
スタイナーが苦しい悲鳴をあげた。
「あれ、おっさんじゃないか」
あっけらかんとした言葉がスタイナーの頭上から聞こえた。
「貴様! 何故!このような場所にいるのだ!?」
そんな言葉とは裏腹に、疑問を投げかけるジタン。
「スタイナーのおっさん・・! ここはアレクサンドリアなのか?」
「うぬぬぬ、今は貴様の質問に答えている時間はないである!自分は一刻も早くこのアレクサンドリアの地下牢から抜けだし姫様をお助けしなければならんのだっ!!」
「それだけ聞ければ充分だ、さあ、ダガーを助けに行こう!」
「どいつもこいつも自分をノケモノにしおってからに!」
「おっさん、来ないのか? ダガーが殺されてもいいのかよ!」
「姫様が殺される!? 訳のわからぬ事を申すでない!」
「本当だよ、おじちゃん」
さみしく・・本当に寂しく言うビビ。
「ブラネがレッドローズに乗ってアレクサンドリアに帰ってきたら、お姉ちゃんを殺してしまうんだって。ボク、聞いたんだ・・」
「それは本当でござるか、ビビ殿!?」
「って、本当にビビの言葉しか聞かないんだな・・おっさん」
それじゃあ探さないとな、と言い出したのはいいが。
20分経っても、その地下牢が見つからない。
「なんて広いんだ、ここは」
ううむ と一番城のことを知っていそうなスタイナーが唸る。
どうするの~? と不安そうなビビ。
なんとも言えん といっているのはフライヤー。

「ふう」
ジタンは溜息をもらした。
そして休憩がらみに、ふと紫色に光る蝋燭を見つけ。
「変な光の蝋燭だな・・」
呟きながらも触ってみると、ぐるりと壁は動き・・・-。
「うわっ!!」
暗闇の中へとジタンは入っていった。 

「なんだここ・・」
そう思って、スタイナー・ビビ・フライヤーを呼び出した。
「・・・寒いぃぃ」
「なんて寒さだ・・」
「すっげぇ寒いな・・ここは」
「・・・」
一人だけ無言だったのは、スタイナー。
「どうしたんだ?おっさん」
「・・・何故、寒いのか」
「???」
「ここは人を閉じ込める「牢」だ。牢獄とはいえども、罰を受ける場所ではない。したがって・・この寒さは・・」
きゅおぉぉ と鳥の鳴き声がした。
「・・・なんだ今の鳴き声・・」
「いってみよう!!!」

きゅおお とまた鳴き声がした。
そこにいたのは、大きなブルースカイの鳥。
散らばっていたのはその鳥の羽から抜け落ちた羽根。
それは・・綺麗な結晶と化しきらきらと床で光っていた。
「なんだこいつは!!」
フライヤは驚き、そう言った。
「モンスター・・・?」
きゅう・・ と小さく鳴く鳥。
「違う・・・違うよ。これは・・・」
【これはまるでフレアと相対な雰囲気】
「これは・・・・リーズだよ、ジタン」
ビビが呟いた。


かちゃり と鳥籠の扉が開いた。
すまなさそうに きゅう と鳥は鳴く。
「本当にお前、リーズなのか?」
こくりと頷く鳥・・・否、リーズ。
そしてリーズは遠くの方をじぃーと見つめていた。
そこで倒れていた人物は・・・。
「ダガー!!!」
慌ててダガーの元に駆け寄ると、ダガーはまったく動かずに横たわっていた。
「なんで・・・こんな」
『強力な眠りの魔法で眠らされて、ダガーさんの魔力を吸収されたんです』
ばさりとリーズは翼をはためく。
「やっと、会えたってのに・・・くそっ」
『そんなことをしている場合では-』
ない、というその時だった。

「いたでごじゃる!」
「あいつらでおじゃる!」
双子のごじゃるとおじゃる・・・じゃなかった、ゾーンとソーンの双子の魔法使いが現れた。
その後ろから、もう一人・・。大将ベアトリクス。
「お久しぶりですね、スタイナー。これまで、何処へ行っていたのですか? まさか、このようなケダモノ達と遊んでいた訳ではないでしょうね?」
ジタンは「ケダモノ扱い」され、怒鳴った。
「何だとっ!ケダモノはいったいどっちだと思っているんだっ!」
「・・・まだ、貴方達は懲りていないようですね。アレクサンドリアに刃向かう者は、私が許しません。もう、この地には足を踏み入れぬ事です」
『いい加減にしなさい、貴方』
すっと出てきたのは大きな鳥。
『貴方は分かっている筈。今の状況も、ブラネの思惑も』
「・・・分かっている。だが・・・私がガーネット様を守る!!」
『だったら、貴方は私たちの仲間です』
「違う!!最低でもその後ろのケダモノ達は!!」
『・・・フレアを見て、サクを見て、貴方はどう思いました?』
「・・・・!!」
『あの人はいつもそう。誰かを守りたい、守らなければならない。それが私たちの「存在意義」だから。しかし、ブルメシアの民を守ったのはそれだけではない。・・・自然を守り続けたブルメシアの民をあの人は美しいと思って守ったのです』
「・・・だからなんだ・・・」
『一人で抱えないことだ』
ソプラノの声から、突然アルトの声に変貌した。
『全て一人で抱えようとするから無茶をする。一人で抱えようとするから、誰かを傷つける。相手から見たら、それは「エゴ」としかいいようがない』
「・・・」
『ということで・・・そこのおじゃるさんとごじゃるさん?』
「「ち・・ちがーう!!」」
『どちらでも良いですが、そろそろご退場してもらいましょうか?』
ばさり、と翼を大きく広げ、突風を生み出した。
不思議なのはゾーンとソーンだけが吹き飛ばされたのだ。
だがそれは部屋の外から退場するまでは至らなかった。
「何の騒ぎじゃ!」
うるさいおばさん、ブラネが来たのだ。
「こいつらがガーネット姫をさらおうとしているのでごじゃる!」
「ガーネットか。もうガーネットからはすべての召喚獣を抽出したのか?」
「抽出したでおじゃる!」
「だったら、早くガーネットを捕らえて牢屋に閉じ込めておしまい!」
「「わかったでおじゃる!」」

ゾーンとソーンは動き始めたが、そこにベアトリクスが立ちはだかった。
「その命令、どうかお取り下げください!」
「ほう」
実は興味がなかった、という感じで微笑するブラネ。
「このブラネに逆らうとは、どういう経緯じゃ?」
あの時自信を持っていえなかったことを、今・・ここに。
「ブラネ様、私の使命はガーネット様の身を守る事。どうか、これ以上ガーネット様に手をお出しにならないでください!」
そして騎士剣を構え、言い放った。
「あなた達、この場は私に任せて早く逃げなさい!」
同感だ、と言い槍を構える、フライヤ。
「私はこの場を去れぬ! ジタンよ、早く逃げるのじゃ!」
「・・・」
無言で立ち尽くすスタイナー。
その異常さにジタンは気づいた。
「どうしたんだよ、おっさん」
「忠誠を誓ってきたブラネ様に刃を向けたベアトリクスと、自らの仲間を殺されながらも、共闘して姫様を守ろうとしてくれているフライヤ。ブラネ様が本気で怒ってしまった以上、彼女達の命を取りかねん!」
きりっとジタンを見つめるスタイナー。
ジタンすらこんな瞳を見たことはなかった。
「ジタン、お主に頼みがある!」
「な、何だい改まって・・」
「アレクサンドリアを無事脱出し、姫様をトット先生の元へ送り届けてはくれぬか?トット先生なら、この荒んだアレクサンドリアを救うための良い手立てを考えてくれるはずだ!」
「わかったぜ! その心意気、オレが引き受けた!」
「ボクも頑張ってみる!!」
「ジタン殿、ビビ殿、リーズ殿・・・。頼りにしているぞ!」

 

「ついさっきまでは敵と味方だった者が今は手を組み、味方を逃がす。まさしく感動の場面だな。
面白い。ゾーンとソーンよ、私を本気で怒らせた奴らを徹底的にやっつけておしまい!そしてガーネットを逃がすな!殺せ!」
「わかったでごじゃる」

「フライヤ、ベアトリクス・・・おっさん! 後を頼んだぞ!」
「任せておくのじゃ!」
「さあリーズ! 行こう!」
『ええ、さあ私の背中に乗ってください!』
「・・・俺たちを凍りつかせないようにな」
そこが一番不安だった。
『そこは問題無いですから・・・』
「にがさないでごじゃる!!」
脱出口から強大な獣が出てきた。
それとは裏腹に、大鳥は飛び出す準備をしていた。
『行きますよ・・・しっかりと捕まっていてください!』
「おう!」
「大鳥を噛み殺すでごじゃる!」
ばっ、と獣はジャンプした。
しかし、大鳥が飛び出したのが早かったのか、獣は完全に氷づけ状態にされたのだ。

鳥は大きく羽ばたきながら、素早く地下から脱出する。

旋回しつつ、出口へと急ぐリーズ。
「頑張れ、リーズ!」
「リーズ…頑張って…」
リーズの背中で応援するジタン、ビビ。
そして眠れる姫ダガーを乗せて、大いなる氷の鳥は飛んでいく。

だが、もうすぐ出口だというのに。
「しまった・・・罠か!!」
リーズを覆いかぶさるかのような大きな大きな・・鉄製の牢屋。
またもや引っかかってしまったようだ。
「何度見ても、いい眺めでごじゃる」
くすくすと笑っているゾーンとソーン。
「お前達っ、卑怯だぞ!!」
「これが我々のやり方でごじゃる」
「お前達に口出しはさせないでおじゃる」
「くそぅ…何とかできないのかっ!」

その問いにリーズが答えた。
『壊しましょうか?』
「なっ…」「そう簡単には壊れないでおじゃるよ!」
ゾーンとソーンがきーきー言っている間に、大鳥の口から放たれた強力な冷気が鉄製の牢屋を凍らせる。
『今です!ジタン、ビビ』
「おう!」「うん!」
その氷漬けにされた牢屋の扉付近をジタンの「シフトブレイク」とビビのサンダラで木っ端微塵に破壊した。
ひゅんと何かが飛んでいった音の後には、その場にはゾーンとソーンしかいなかった。
呆然と空を見つめる二人しか。
「…ま…まんまと」
「逃げられてしまったでごじゃる…」 

------
地下道をどんどんと駆け上っていく。
そうどんどんと…。

「なんか・・・おかしくないか?」
ジタンがそう思い始めたのは、結構経ってからだった。
そして大鳥に声をかけてみる。
「おーい、リーズ!おかしくないか?」
「…」
リーズは無言。
何故、と思いながらも今度は大声で言ってみた。
「リーズぅ!!おーい、聞こえているだろう?」
「…」
どんだけ大きな声でも聞こえていないようだ。
「まさか…」
ふと最悪な考えをした。
(リーズ、意識が無いのか!?)
意識が無い状態で体は動いている。
そんな状況はあると聞いたことがあったが…。
(まさか、リーズがなるなんて…!!)
ひゅんと何やら地下の駅みたいな所に着いたが、無視。
「…あ~、通り過ぎたか…」
恐らくあそこはスタイナーが言っていたトレノだったのだろう。
「でも、このままじゃ降りる事も出来ないし…」
その時に目の前に光が見えた。
「…!出口か!」
ばっ、と飛び出した。

刹那。
糸が切れたかのようにリーズは急降下し始めた。
「う…わあああ!!」
そのまま地面に衝突したのである。
 

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