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これは氷の惑星アースと金の惑星ガイアの物語・・・。
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熱いものが触れた様な気がして、フレイアは意識を取り戻した。
まるで荷物を持つかのように抱えられているようで、意識があっても体が動かないし、朦朧としているので動くことが出来ない。
ふと、意識を失う瞬間に掌に握ったものがあったのを思い出した。
それは咄嗟の事だったし、この世界にとってはあまりにも負荷が強いかもしれないが…。
それでも、と希望を残す意味で掌にあるそれをぽろりと地面に落とした。
それからのフレイアの意識はない。




ジタン達一行は船を下りる。
そこは雪原が広がっており、近くには白く覆われた神殿があった。
そこは聖なる地と呼ばれており、別名があるらしいが、そんな事は一行としてはどうでも良い事だった。
中に入ると怪しい目でこちらを見てくる司祭が話しかけてきた。
「ん~、何ですか君達は? ここは神聖な地、もう少し静かにしなされ。 さっきの奴らといい、とんがり帽子共は礼儀を知らんな!」
特徴的な発言にジタンは突っ込んだ質問をする。
「あんた、今何て言った? ビビにソックリな奴を見たのか?」
「あんたとは何ですか! 私はこの聖なる地、エスト・ガザの司祭! 口の利き方に気をつけなさい。 あなた方は、あの騒々しい一団の仲間なんですか?」
「それらは何処に行ったのですか? 知っているのなら言って貰わなければ…この世界の命が掛かっているかもしれない緊急事態なのですから」
「命…それは全て平等… そして全ての生命は星へ還るのです。 そう、輝く島…『魂の道』を通って…」
謎の発言をする司祭に対して、溜息をつくエーコ。
「何言ってるのか分かんないけど…黒魔道士と一緒にいた女の子は見かけなかったわけ?」
「ワタシは黙ってみていただけじゃよ。 それに、彼らはここでは何もしておらん。 彼らは大勢で押し掛けおった…あれが黒魔道士軍団なのじゃろう。 誰もここには見向きもせずに、この先のグルグ火山の方へ進んでいったのじゃ」
「グルグ火山?」
「今でこそ活動しとらんが、この山はグルグ火山と呼ばれているのじゃ。 昔はモグラと呼ばれた奴らが火山の中に住んでたという噂もあるが…それもずいぶん昔の話でな。 何者かが入口を封印して以来誰も立ち寄らないような場所じゃ。 …という訳でな、彼らの目的はグルグ火山のようじゃよ」
まるで自分は関係ないように言う司祭をちょっと睨みつけながらジタンは言う。
「それで? 女の子も一緒にいたんだな?」
「そういえば、黒魔道士が女の子を抱えてましたな……」
「フレイアだよ、ジタン!!」
「そうとわかればグズグズしてられない! オレ達も、そのグルグ火山へ行くぞ!!」
「ジタン、僕も行くよ! 黒魔道士の村のみんなももうわかってくれると思うんだ!」
「そうだな……いつまでもクジャの言いなりって訳にはいかない!」

ということでメンバーをジタン、エーコ、ビビ、リーズに絞り、活動していない休火山へ足を踏み入れたが…。
それでも所々、ぐつぐつと煮えぎっているようで、中は相当熱い。
ジタンはぽたりと汗を掻いた直後。
きゅおんと鳴く空を飛ぶものがジタン達の真横を通り過ぎた。
「何だ!?」
「影から見たら小さな竜…のようですねぇ」
「休んでいる火山なのに元気そうだねぇ…」
休火山に元気に空飛ぶ火竜。不思議ではないが、普通なら火竜は小さければ小さいほど、活火山での活動の方が動き回る習性がある。
だが、先程の影は活火山と同じ程に、同じ風に動き回っている…。
リーズはおかしいと思い、もう一度その竜を見てみた。
背中に…何かいる!?
敵もいないのに突然詠唱を始めるリーズを見て、ジタン達は驚いた。
「どうした、リーズ!」
「落としますから、拾ってくださいね」
言っている意味が分からないうちにリーズの詠唱が終わり、風の周波が放たれた。
火竜はその風にあおられ、そこからぽろりと影が落ちた。
言われたとおり、それを抱えたジタンは驚愕した。
「お…女の子!?」
白銀のさらさらな髪、左片方だけ縛ってあり、星が散らばったヘアピンでそれを留めてある。
耳は小さくぴんと尖っており、ふわふわの白銀の服は動きやすそうにも見える。
青く爽やかな瞳を大きく見開き、ぱちくりしているその幼女はリーズを見て微笑んだ。
「リズだー」
「やっぱり貴方だったのですね、テイルちゃん」
名前で呼ばれて嬉しそうにしている幼女―テイルはふわりとジタンの腕から降りる。
「知り合いか? リーズ」
「ええ。 でもどうしてここに?」
テイルはうーんと、と困ったかのように言葉を発した。
「よくわからないけど、しゅぎょうちゅうによばれて、えっとぉ…ドラゴンさんがいたからそのこにのって…うーんとぉ」
「恐らくこういうことでしょうか? 他の世界にいたのを呼ばれて、困り果てていた時に竜がいて、それと遊んでいた…と」
「たぶんそうだとおもう!」
マイペースな幼女に珍しくリーズは溜息をついた。
「フレイアが無理やり召喚した奴じゃないの?」
「この子はそうじゃないようですね…」
「フレイアちゃんになにかあったの!?」
がっしりとビビの袖を掴み取るテイル。
それをやられて、ビビは困り果てているようだ…。
「フレイアが悪い奴らに連れ去られてしまったのですよ。 これでは皆が困ってしまいます」
「そうなの…。 テイルもいくの!」
手を上げるテイルに対し、「お前もついてくるのか?! 危険だぞ!」と警告を告げるジタン。
「これでもテイルちゃんはかなり強力なチカラを擁しておりますし、フレイアよりも一応生きていますから大丈夫ですよ。 それに、テイルちゃんもこのままでは元の世界へと戻れませんし」
えへん、とテイルは偉ぶっている。
「仕方ないなぁ…」
「テイルつよいもん! おにいちゃんもこのこたちもまもれるもん!」
テイルが強がってそう言った刹那、ドン!という音が目の前で発した。
そこには大量の小さき火の竜がいる。
襲い掛かってくる!とリーズ以外の全員が目を瞑ったが。
「あんないしてくれるの!?」
とてつもない穏やかな声がテイルからした。
「テイル…平気なのか?」
「平気というより、この子もドラゴンなので、こうやって竜と仲良しになっちゃう習性をもっているのです。 まぁ、テイルちゃんの場合は誰でも『感応能力』で仲良くなってしまいますが…」
「『感応能力』って何?」
「他の者に対し、その感情を感じ取れる能力です。 ですが、その能力に長けた星の民は僅かで、とても貴重な存在と言われてます」
そんな能力にしてやられた火のドラゴンたちの案内により、最下層らしきところまで辿り着いた一行。
「ジタン、フレイアだよ!! クジャも、黒魔道士の村のみんなもいる!」
「なんだ、あの魔法陣…」

魔法陣の中にフレイアは座っていた。
その周りで双子が魔法を詠唱している。
「無限の命を持ちし召喚獣達よ!」「無限の力を持ちし召喚獣達よ!」
「今此処に永き眠りから解き放たん!」「今此処に永き宿りから旅立たん!」
「汝に光明を!」「汝の解放を!」
「時は来れり!」「時は満てり!」
詠唱をするが、何も起こらず、しんとしていた。
それを見てフレイアは溜息をする。
「変でおじゃ~る」「変でごじゃ~る」
「また失敗でおじゃる!」「また失敗でごじゃる!」
「何か間違えたでおじゃるな~?」「ま、間違えてないでごじゃる! 間違えたのはそっちでごじゃ~る!」
「ま、間違えてないでおじゃ~る!」
「本当でごじゃるか~?」「本当でおじゃ~る!!」
双子のやりとりに「いい加減にしてくれないか?」と、どす黒いクジャの声が響く。
「僕は言い訳なんか聞きたくないんだよ。 そんなことよりもこの小娘から早く召喚獣を手に入れろ」
「無理でおじゃる!」「これ以上の方法は知らないでごじゃるよ!」
「分かってないね君達。 僕はどうしても、アレクサンダー以上の力を持つ召喚獣を手に入れなければいけないんだよ! あのガーランドを葬り去れるだけの力を持つ召喚獣をね…。
奴のあの強さは尋常じゃない。 今の僕では、簡単に消されてしまう…。 テラの計画が発動するまえに奴を倒さなければ、僕が僕でなくなってしまうんだよ!!
どんな方法でも構わない! さっさと続けるんだ!!」
そんなやりとりに対し、当の小娘は溜息をついた。
「無駄だよ。 そんな方法ありはしないって」
「そう…。 君がそういうならもうこれしかないんだろうねぇ」
クジャの手にはいつもフレイアが抱えている大きな鞄があった。
「ここには綺麗な宝石がたんまりある。 ということはこれらを使って召喚しているしか方法がない。 でもどれもかしこも反応がない。 でも君がいつもの抽出方法では無理だというなら…これが正解かな?」
きらりと赤く光る少し大きめな宝石をクジャが手にした瞬間。フレイアの顔が強張った。
刹那。
ぴゅん、という音と共に何かが飛んで、その鞄とフレイアを奪った。
それは白い流星のような小さな竜だった。
顔立ちはドラゴンなのだが、アザラシのようなヒレを持っており、どうやって飛ぶか分からないが、妖精のような翼を持っている。
長くつるっとした尾を持った竜はフレイアをジタン達の所へ降ろした。
「やっぱり来たか…まぁ良い。 これでこれを召喚できるってわけだ」
そうして手に持っていた赤い宝石を天に掲げた。
「さあ来い! そして僕のしもべとなるが良い!!」
どん、とした衝撃が走る。
そしてそれはふわりと現れた。
それは少女だった。
赤いツインテールの髪に、黒い魔道着を着ている。
赤き瞳はきらりと光り、周囲を見渡している。
「呼んだのは、貴方ですか?」
少女は赤い宝石を持ったクジャに対し、口を開いた。
それを見たクジャはくつりと微笑み「ああ。 そうだ」と答えた。
「君に頼みがある。 こいつらを抹殺して欲しい」
そう言い、ジタン達を指差した。
「…分かりました」
少女は頷き、手を天にかざし、大きな火炎の球をつくりだしていく。
「リーズ! 何とかできないのか!?」
「無理ですね…。 フレイアさんはもとより、あの宝石がないと…」
それにしてもあの火炎玉…。と、リーズは思った。
恐らくは手加減が出来ない…ではなく、手加減をするつもりがないのだろうと察した。
そしてそれを防ぐことがこの状況下、あまりにもできない。
というのは周囲が狭すぎと、守るものがあまりにも多すぎるため。
それでも、とリーズも詠唱を始めたときだった。
目の前に一匹のモーグリが立ちはだかった。
「モグ! 駄目よ、エーコの後ろに隠れてなきゃ!」
『エーコ、今までありがとう』
「何を言ってるの…モグ!」
『心配ないクポ! いつでもエーコと一緒クポ!』
モーグリの身体から眩い光が溢れ出てくる。
それは強大なチカラとなり、獣のようなものが出てきた。
「『テラ・ホーミング』!!」
白い閃光は赤い火の玉目掛けて飛んでいく。
赤き少女の天空にあった大きな火球は一気に離散した。
呆然とする少女の横でくつくつと笑うクジャ。
「環境に反した感情の爆発…完全トランス化した召喚獣。 それが生きようとする欲望であれ、他者を守ろうとする欲求であれ…。 例え、他者の魂であっても何者をも凌ぐ強大な力をもった魂…」
そうか、あれか。
「ついてこい、僕よ。 後でいいものを見せてやる」
「…はい」
「そういえば、お前の名前を知らなかったな。 何と言う?」
それは何も反応せずに平然と告げた。
「カーマインと申します」

跡形もいなくなったクジャを見て、逃げられたとジタンは察した。
それよりもエーコは座りっぱなしだ。
「エーコ…大丈夫?」
フレイアは声をかけるが、ショックからか下を向いている。
「エーコ…知らなかったの。 モグが召喚獣だったなんて…。 ずっとエーコを守ってくれてたの。 あんなに弱虫だったのに…」
「そうか…」
憂鬱な空気が周囲に溢れる。
それに呼応したのか…ぐつぐつと何かしらの音が響いた。
それは双子だった。だが、双子は不自然なまま身体を寄せ合い、融合していく。
それはひとつの魔物へと変貌を遂げた。
ぐええ、と吐き出した瘴気は毒のようで、ジタンは気分が害されていくような感覚に陥った。
べしゃりとそれらが飛び散っていく。それらは酸性の性能もあるのか、地面を抉り溶けさせていく。
それに当たれば痛いというレベルではない。
遠距離から攻撃はしているが、致命的な反応がない。
その時、フレイアが白く小さい宝石を掲げた。
それに呼応するようにテイルが光り輝いた。
「星屑の竜の呼応を聞け!『スターライト・ブレス』!!」
眩いブレスが小さな星竜から解き放たれ、瘴気を出す魔物は消滅した。
「ふう…何とかなったぜ…」
へなへなと座り込んだジタンに対し、「テイルのお陰だね!」と元気いっぱいのフレイアは言った。
「ありがとう…テイル」
「すごいでしょ、わたし!」
自慢気なテイルに対し、「う…うん!」と先程のモグの件を引きずっているエーコは頷いた。
「そろそろかえらないと…。 カーマインちゃんがきになるけど…だいじょぶだよね! フレイアちゃん!」
「うん、頑張ってみるよ」
満足したのか、テイルはきらきらと光り輝いて、宝石の中へと去っていった。

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