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これは氷の惑星アースと金の惑星ガイアの物語・・・。
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静かに『フレア』は目を覚ました。
その目の前には久しぶりに見る最も大好きなヒトの姿。
【お早う。 良く眠れたかい?】
頭の中に響き渡る声に懐かしいと思いながらも、そのヒトの腕を握り締める。
珍しい『フレア』の行動にそのヒトはきょとんとした顔をしている。
そんなヒトに対し、『フレア』はチカラを込めてこう言った。
「お願い、リヴァ。 もう一人の私が壊れそうなの!」

 

 



久しぶりにフレアの内に入ったリヴァエラ神は驚愕の眼で、二人のフレアを見ていた。
まだ幼気な小さきエルフは息も絶え絶え、痙攣を起こしている。
もう一人は髪が長く、そんな長い髪から出ている跳ね毛はまるで蝶の舌みたいにくるりと巻いており、もう一人のフレアをぎゅっと抱きしめていた。

「リヴァ!!」
【ちょっと貸して…】と、髪が長い『フレア』に言って小さき身体で必死に痙攣を起こしているフレアを抱きあげる。
刹那、小さきフレアは手をもう一人の『フレア』に向かって伸ばした。
「…ま…守…る…。 ワタシ…」
「無茶をしないで! お願い!」
泣きじゃくりながら長い髪の『フレア』は言った。
【そうだよ。 もう一人の言うとおりだ】
静かに、そして揺り籠のように小さきフレアを抱きしめた。
【こんなに無茶をして、まるで義務でもあるかのようだ。 でも、今は寝なさい。 無茶はいけないと散々私は言った筈だ】
真ん丸い瞳でフレアはリヴァエラ神を見つめている。
「ゴメン…ナサイ」
そして、言われたとおりに目を瞑った。
まるでこれまで眠っていなかったかのように、小さなフレアは眠り始めた。
そんなフレアを見つめている『フレア』は安心した面持ちで、「リヴァ…ありがとう」と言った。
【それよりも、どうしてこうなった? 『コスモ』】
リヴァエラ神の問いにフレア…否『コスモ』は俯いた。
「私が我儘言ったの。 アレクサンドリアを守りたいって。 嫌な予感が沢山していて、動物達も「あそこは怖い」って逃げてきて。 それでこの子に言ったら「いいよ」って言ってくれて…」
【それでああなったわけ、か】
「だから…ごめんなさい」
【今回は掠り傷で大した事はなかったけど、貫通してたら封印が解除されてごめんじゃ済まされなくなってしまう。 だからこそ、暫くは氷樹の間で大人しくしているように】
その洗礼に対して『コスモ』は はい、と答えるしかなかった。

――――――

船員を含めた10人は船に乗り、やがて外側の大陸へと辿り着いた。
そこから徒歩で黒魔道士の村へと着いたのは、リンドブルムを出て3日の事だった。
黒魔道士の村はしんと静まり返っており、まるで誰もいないかのようだ。
「ちょっと僕、捜してみる」
ビビはそう言い、いつもの墓地に歩いていった。

そこには一人だけ、ぽつりと黒魔道士が立っていた。
「他の皆はどうしたの!?」
ビビの問いに黒魔道士は静かに答える。
「皆、クジャについて行ってしまった。 残っているのは僕とチョコボ舎にいる二人だけだ」
「どうして、何であんな奴と一緒に!!」
責めあげるかのように問い続けるビビに対し、黒魔道士は溜息をついた。
「皆知ってしまったんだ。 僕らに与えられた時が限られているって事を。 それでクジャが自分に付いて来れば命を延ばしてやるって…」
「だからってあんな奴の言うことを信じるなんて! あいつが何をしてきたか、忘れたの!? まるで…僕たちをモノの様に扱って…」
「所詮、僕らはそういうモノかもしれない。 元は人間の言うことを聞く為に造られたものだから」
さわりと、風が靡いた。
「クジャと一緒に何処に?」
「それは教えられない。 仲間を裏切ることになる」
「じゃあ、何で君はここにいるの!?」
その問いかけに黒魔道士は答えなかった。


ふと、何かの気配を感じ取ったのか、リーズはチョコボ舎に一足早く足を運んでいた。
チョコボ舎に行く道のりを歩いていた刹那、ごりっという固形を踏んだ音がした。
それを拾ってみると、なにかの生物の餌のようだ。
刹那、鳥の鳴き声が辺り一面に響き渡った。
そしてその音に対し、喜びを感じ取ったのか、一人の黒魔道士がチョコボ舎から飛び出してきた。
そこにリーズの姿があるのを知らずに。
「あ…」
そう言い、黒魔道士はしばらく固まっていたが、すぐさまチョコボ舎へと慌てて入っていった。
リーズは「あらあら」と呟き、冷静にチョコボ舎の扉を開くと、そこには誕生したばかりの雛が周囲を見渡す光景があった。
その姿に二人の黒魔道士は「生まれた…」と感動をしていた。
リーズは黒魔道士達の感動している姿を見て、「なるほど…」と呟く。
くるりと、先程チョコボ舎から出てきた黒魔道士は恥ずかし気にリーズに振り向き、口を開いた。
「僕達…チョコボの卵の世話があるから残ったんだ…」
「僕らも皆と一緒に行くって行ったんだけど、皆はチョコボの卵を守って欲しいって…」
「ぼ…僕らが守って暖めてあげたんだ…」
「み…皆にも早く見せてあげなきゃね…。 皆…喜ぶだろうなぁ」
「名前も考えてあげなきゃね…」
「あ…あれ、何だか変な感じ…」
「ぼ…僕も…」
生物の誕生に思わず涙ぐむ二人を見て、リーズはにこりと微笑んでいた。
微笑まれて、さらに恥ずかしくなったのか、黒魔道士は少し頬が赤めいている。
感動しっぱなしの二人に対し、邪魔をするのも何なので、そそくさとリーズはチョコボ舎から出て行った。
そこには仲間全員の姿ともう一人の黒魔道士がいた。
「貴方もあの卵が心配でしたか」
知識の守護神に言われ、その黒魔道士は俯いた。
「分からないんだ。 どうしようもなく怖くて、逃げ出したくなって、クジャに縋りたくもなった。 でも…きっと、それより大切なものがあると…」
俯きっぱなしの黒魔道士に対し、ビビは「ねぇ、一つ聞いてもいい?」と問いかける。
「僕も、もうすぐ止まってしまうの?」
その言葉に仲間全員が驚愕する。
そんな驚愕の言葉に対し、黒魔道士は顔をあげ、「…分からない…」と言った。
「ただ、僕らより先に作られた君…プロトタイプは少しは長く動くってクジャが言ってた…」
「でも、いつかは止まってしまうんだね?」
ビビはそれを聞くと、にこりと微笑んだ。
「僕ね。 僕のお爺ちゃんが死んだとき…よく分からなかったんだ。 ビビ、悲しむ事はないって言われて、ああ…だから悲しんじゃいけないんだって。
だからなのかな…。 止まってしまう仲間がいるって話を聞いても、変な気持ちがもわもわ広がるだけで、良く分からなかった。 どうすればいいのか、この気持ちが何なのか。
でもね。 ダガーお姉ちゃんのお母さんが死んだ時、泣いているおねえちゃんの顔を見て思ったんだ。 ああ、こういう事なのかな、って。
でも、そう思ったのは僕が人殺しの道具じゃないからだよね?」
その問いに答えるように、リーズはこくりと頷いた。
「まだ難しいことが一杯で良く分からない事だらけだけど、僕はそれが分かったから良いんだ。 だからこそ、皆をまた人殺しの道具にしようとするあいつは…クジャだけは許せない!
あいつに騙されなければ、きっといつかは皆にも分かってもらえるんだ。 僕らは人殺しの道具なんかじゃないんだって」
ビビの言葉に感化されたのか、黒魔道士はぽつりと呟く。
「この大陸の東に…クジャの隠れ家がある」
そう言うと、黒魔道士は元来た道へと歩いていく。
「船でこの大陸の東側に渡り、流砂の流れ込む地を捜すといい」
黒魔道士の後ろ姿にビビはぺこりと頭を下げた。
「僕らもいつか…君のように強くなれるかな…」という言葉を残して、黒魔道士の姿は見えなくなった。


              

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