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これは氷の惑星アースと金の惑星ガイアの物語・・・。
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イーファの樹の下の攻防から2日。
ビビは久しぶりにアレクサンドリアの城下町を探索していた。
パックと出会い、ここから旅が始まったが、それから何も変わっていない町並み。
だが、これから起こる世界すら驚愕し、震えるような出来事をビビはまだ知らなかった。

 


ふと、どん と誰かとぶつかる。
「あっ! 悪ぃ…って、ビビじゃねえか!」
目の前にいたのは知っている顔―ブランクだった。
「こんにちは…」と、ビビはいつものおどおどしい態度で挨拶をする。
「魔の森で会って以来だなぁ。 元気にしてたか?」
「う…うん。 ブランクのお兄ちゃんも?」
「ああ。 あれからマーカスに助けられてな…。 そうそう思い出した。 それから大変だったんだぜ? スタイナーのおっさんと…フライヤって言うネズミ女と…それから…あのアレクサンドリアの女将軍…」
「ベアトリクスっス」と、隣にいたマーカスがブランクに助け舟を出す。
「そうそう、ベアトリクスって奴がボロボロになっててよ。 俺とマーカスはそいつらを担いで城から抜け出すのがまた大変で…ってマーカス!?」
すたすたと歩いていくマーカスに気付き、ブランクは大きく叫ぶ。
「兄貴、早く行かないとまたルビィが怒ってしまうっスよ…」
「そうだなぁ…それはやばいぜ。 悪いな、ビビ。 ジタンに会いに来たならそこの酒場にいるから会いに行けよ!」と、ビビが「う…うん」と言おうとする前に走り去っていった。
そぉ…と、酒場の扉を静かに開けると、そこにいたのは顔を膨らませているフレイアの姿と飲んだくれているジタンの姿があった。

「ちょっと!! 朝から何飲んだくれてるの! しっかりしてよ、ジタン!」
「… …」
フレイアの言葉の攻撃に対し、ジタンは終始無言だ。
「もう…。 ってビビ、居たの?」
ビビの存在に気付いたフレイアはビビに声をかける。
「う…うん」
「ジタンが朝から飲んだくれてるの。 ダガーさんに一回振られたってだけで」
「五月蝿い五月蝿い五月蝿い!!」
ジタンは聞きたくないかのように大きく叫ぶ。
「俺の気持ちが分かってたまるか!!」
「じゃあ、どっかいこうよ。 こんな薄暗いところで、根にへばりついているなんてジタンらしくないよ」
ぐいぐいと引っ張る見た目が幼女に対し、はぁ とジタンは溜息をつく。
刹那、エーコが酒場に入ってくる。
「フレイア! ちょっと良い?」
「どうしたの? …その人、誰?」
エーコを見ながら、フレイアは眉をしかめる。
そう。エーコの隣には見知らぬ老けた年寄りがいたのだ。
「今からこのおじさんのお家に行くの! だからフレイアも付いてきて欲しいの!」
「いいけど…」と、ちらりとジタンを見る。
朝から飲んだくれては、ごろごろしているジタンに対し、エーコにおじさんと呼ばれた老は、「今、トレノでカードゲーム大会をやっているようですが…そちらに出場してはどうですか?」とジタンに声をかける。
それもその筈。飲みふけていたジタンの机には数枚散らかしているがカードがちらほらあったのだ。
「カードゲーム大会か…」
赤く染まったジタンの顔はみるみるうちに、やる気に満ち溢れていく。
「私もカードゲームやりたい!」
ばっ、と手をあげたのはフレイアだった。
「だから、ジタン。 トレノってとこについたら教えてよぅ」
「僕も行ってみたいなぁ」
それまで酒の臭いと暗気に満ち溢れていた酒場が、段々賑わっていく。
その様を老は微笑みながら見つめていた。


こうして総勢5人がトレノに行くことになり、城の地下へと案内されたジタン達。
「そういえば、ここからリーズに乗って城を脱出したんだっけ…。 まだ霧は残っているようだな」
「何だか、霧が晴れる前のイーファの樹みたいな感じね」
「でも前より霧は薄くなったような気がするよ?」
それを老は聞きながら、何かを集めている。
「へぇ…。 でも、ここからどうやっていくの?」と、フレイアの疑問に対し、老は微笑みながら「ガルガントに乗り、真っ直ぐ行くのです」と返答する。
「それで餌を集めているんだ。 私が呼んであげようか?」
フレイアはそういうと「おーい!」と暗い道へと叫んだ。すると、フレイアの叫び声に呼応するようにガルガントがわさわさと大量に現れた。
「…また大量に呼び出したな…」
唖然とするジタンに対し、老は驚くこともなく、平然としていた。
フレイアはそれが不自然に感じながらも、ガルガントに餌を与えた。


大量のガルガントに乗り、トレノに着いた一行。
エーコは振り向き様に「ねぇ」と老に話しかけた。
「エーコ、ちょっと町を見てきてもいい? マダイン・サリの事お話するのは後でいいよね?」
その言葉に老は微笑み「どうぞどうぞ、何も急ぐ事はございませんのでな」と、返答した。
そう言われ、微笑みながらエーコはビビを引きずり、町へと駆け出していった。
老はふと思い出し、ジタンに「そういえば、今日がカードゲーム大会の受付最終日ですぞ」と言った。
「そうか。 じゃあ、ちょっくら行って来るかな」
「私にも教えてよ、ジタン」
「分かってるよ!」

さて、一足先に街に繰り出したエーコとビビはというと。
「あの…何で…?」
おどおどとビビはエーコに話しかける。
「何でジタン達と一緒に行かなかったって?」
「…うん」
「あの二人はニブチンだから、一人になんなきゃ分かんないの」
「…フレイアも一緒だけど?」
「フレイアは良いの! 空気読めるから! にしても、あんたもニブチンね!! ジタンはね、ダガーの事が好きなの! でもジタンはかっこつけたがるから喧嘩しちゃうの! 分かる!?」
「あんまり…よく…」
「エーコが一緒にいてもかっこつけちゃうからね、ジタン。 困ったもんだわ」
そういいながら、エーコは町の奥へと入っていく。
ビビも同じく、しかしおどおどしながらエーコを追いかけた。

さて、ジタンはフレイアと共にカードゲーム大会の参加をするために会場までやって来た。
「現在はカードゲーム大会エントリー受付中でございます。 カードゲーム大会においては、2勝した方だけが、チャンピオンへの挑戦権を得ます。 チャンピオンに勝てば豪華賞品がプレゼントされます」
「へえ。 チャンピオンってどんな奴なんだ?」
「そりゃもうとびきりの…」
「そんな凄い奴なのか?」
「それが何と! 聞いてビックリ!!」
「だからどんな奴なんだよ!?」
「実はですな…」と、カード売り場の男はジタンに耳打ちした。
「な、何ぃ!! セ、セーラー服の可愛い女の子だとぉ!? そ、そりゃ是非ともお手合わせ願いたいもんだな!!」
「でしょでしょ? だったらエントリーを…―」と、売り場の男が言おうとした刹那。
こちらにやってくる一人の女の子に釘漬けになった。
「大公様、こっちですよ!」
「わ、わかっておるブリ…しかし何分この体では大変ブリ…」
「泣き言言ってちゃ、チャンピオンの名が泣きますよ。 さ、エントリー、エントリーっと…」と、女の子が受付をしようとする最中。
「父ちゃんブリ虫だよ! きったなぁい!」
「しっしっ、ブリ虫め。 あっち行きやがれってんだ!」
「あの…すいません。 このブリ虫…私の…」
「えっ、チャンピオンのペットなの!?」
「こ、こりゃまた失礼いたしました!」
「いえいえ…いいんですけど…」
「ワシは、いつからお前のペットになったブリ!?」
「しょうがないですよ、大公様は今ブリ虫なんですから」
「うるさいブリ! ワシはチャンピオンじゃぞブリ! どいつもこいつもブリブリブリブリ…」
「何だいたのか、ブリ虫のシド大公さんよ」
夫婦漫才をしている一人とブリ虫に対し、ジタンは話しかけた。
「相変わらずの無礼な態度ブリ…」
「まあまあ…ところでさ、何でおっさんがこんなとこに来てるんだ?」
「うむ、まあこの大会に参加したかったブリが、他にもちょっとテストしておきたい事があったブリ」
「他にも?」
「はい、新型飛空艇ヒルダガルデ2号の試運転です!」
「霧がなくても飛べるっていう、あの新型飛空艇か?」
「そうブリ、まだ速度を上げる事は出来ないブリが、何とかここまで来れたブリ。 それに…」
「それに?」と、ジタンがふと奥の道から歩いてくる二人組みを見た。
「シガンおじさん! リーズさん!」
フレイアが嬉しそうに二人のほうへと歩みを見せる。
「シド大公さんが送ったのか」
「そうブリ」
ブリ虫が胸を張ろうとした刹那。
「大変大変大変ー!!」
エーコが慌てて走ってきた。
「何だ、エーコじゃないか?」
「大変なの! 今、トレノのモーグリから話を聞いたら…アレクサンドリアが…アレクサンドリアが…!!」

――――――

場所は変わって人々が寝静まったアレクサンドリアの街に男が現れた。
それは、ジタン達にはとても因縁深い男…愚者クジャ。
「明日の為に願って人は眠る…。 昨日の不幸を全て忘れてしまう為に。 そして喜びに満ちた夢を見る事を願う。 そう、辛く苦しい現実を忘れてしまいたいから」
クジャは周囲を見渡した。暗くそれでも未だにほのかな光が揺れる。
「…至って静かないつもの夜だね。 新しい女王の誕生を祝い、アレクサンドリアの街も喜び疲れたようだ。
喜びの酒が、辛く悲しかった過去を洗い流しバラ色の未来をもたらしてくれると信じてる。
でもまだ宴は終わっちゃいない。 いや、違うね。 本当の宴はこれからさ」
そういうと、手を空に広げて叫んだ。
「さあ始まるよ! 歓喜の炎がアレクサンドリアを焦がす宴が! おいで、バハムート! 昔の主に捧げる鎮魂歌を奏でておくれ!」
刹那、黒く淀んだ暗黒の空から、黒い竜が舞い降りてきた。
そして眠りについている町並みを睨みつけ、炎を巻き上げていく。

それをアレクサンドロス城の窓から見た、ダガー…否、ガーネットは睨みつける。
「ガーネット様!!」
ベアトリクスは焦りながらも、冷静に対処するかのようにガーネットの名を呼ぶ。
「あれは、バハムートですね。 ベアトリクス、急いで皆を集めてください!」
「はっ!」
ベアトリクスは、走り去っていく。その姿を見ながらガーネットもまた、その場を去ろうとした刹那。
おおん、と獣の咆哮が鳴り響いた。
「!!」
それはガーネットの姿を瞳に宿らせようとしていた。
そしてその姿を見つけて、また咆哮を鳴らす。
赤く長い鬣、白い体、そして赤い瞳。不思議と誰かに重なる。
「…貴方は…フレアさん!?」
それが窓越しにでも聞こえたのか、また咆哮が聞こえた。
そしてべきべき、と何かがはがれる音がする。
白い体が黒く変色をし、そこから黒い蔓の様なものが現れた。
肉球がありそうな足。それが広がり、まるで全てを引き裂きそうな程に爪が尖った。
そして、先程とは程遠い黒く重い咆哮が聞こえ、その姿はその場から走り去っていった。
その豹変と化した姿…咆哮…そこから見えたのは最悪の光景。
それを頭に浮かべた刹那、ガーネットはその場に倒れ、意識を失ってしまったのだった。

――――――

「この船はやけに揺れるな…」
がたがたとした飛行艇とは何か違う音がこの場に溢れる。
それが何を物語っているのか、シガンには分かっていた。が…。
「仕方がないブリ。 何せワシがこの体で作った飛空艇ブリ。 あちこちに緩みとか弛みとかがあってもおかしくないブリ」
「おかしくないブリ ってこの船、すんごくやばいんじゃねえのか?」
「ふむ、ワシの勘が正しければ…アレクサンドリアに辿り着くのがきっと精一杯だと思うブリ!」
「まぁ無理しちゃってますから落ちちゃうときは落ちちゃうってことで」
「大丈夫なのかよ! ってリーズ、怖い事言うな!」
「ジタン…。 僕…何だかちょっと気分が…」
「ビビ、船室で休んできた方がいいよ?」
「う…うん」
ふらふらとしたビビの後ろ姿を見て、シガンは溜息をする。
刹那、アレクサンドリア城が見える丘に人影が見えた。
それは一人だけではない。数百…数万と溢れかえっていた。
「これは…!!」
異常な人影に飛行艇は着陸することを余儀なくされた。


飛行艇から降りた一行は周囲を見渡す。
燃え盛る町並みがそこからは見え、それを見て、泣き崩れる者もいた。
「あんた達は、何処から来たんだ?」
「あ…アレクサンドリアだ。 そこに巨大な竜が現れてあれよあれよと炎で町を包みやがった…。 そして変な赤い獣が俺達を黒い蔓のようなもので捕まえて…なぜかここに…」
「赤い獣…蔓だと!?」
切羽詰った声で、シガンは叫んだ。
「それってもしかして、フレアのことか?」
ジタンの質問に対し、驚愕しているシガンの代わりにリーズが答えた。
「ええ。 恐らくは、「死」のチカラを発動させていますね」
「「死」の…チカラ?」
「フレアのチカラの一つだ。 それを発動させると、体に負荷をかける代わりに思い通りに魔法を発動させることが出来る」
「それを使うということは、相当無理をしている証拠です。 それに…」
リーズは、ちらりと未だに赤く燃える町を見ながら嘆く大量の人影を見る。
「これだけの量の人を数分でこの場に移動させるのは、さすがに…」と言い、珍しく悲しい顔をする。
刹那、ぴかぴかとエーコの懐で何かが光りだした。エーコはそれを取り出す。
それは今日、ガーネットと出会い、二分した召喚士の絆の証…2つの宝珠。
「ダガー…?」
「どうした、エーコ。 ダガーがどうしたって?」
「この光は、もしかして召喚士が呼ばれている…?」
動揺しているエーコを見て、シガンはリーズに対し「リーズ。 ヴァシカルで私とエーコをあの城まで連れて行け」と命令を出した。
「それくらいなら行けるだろ? いや、行け」
「分かりました」
「私はどうする? ジタンと一緒に行けば良い?」
ヴァシカルの翼が広げる光景を見ながら、フレイアは冷静にシガンに問いかけた。
「ああ。 頼む」
「おいおい…。 どうなってるんだよ。 俺はどうすれば良いんだ」
「話している暇はない。 行かせてもらう」
そういうと、ヴァシカルに乗ってシガンとエーコは行ってしまった。
一人、呆然とするジタン。
そんなジタンをフレイアは「私達も行こう! ジタン。 ダガーさんも待っているよ!」と一人じゃないことをアピールするかのように言った。
「そうだな。 行こう! アレクサンドリアへ! シド大公、ビビを頼む!」
ブリ虫にそう言うと、氷鳥を追う様に2人は燃える町へと目指して走っていった。

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