「匂いアルよ。カエルの匂いがするアルよ」
そう言いながらクイナはその大きな身体とは裏腹に、素早く走っていく。
「カエルはいいから外側の大陸への入口を探してくれよ。恐らくは此処にあるはずなんだから」
「カエルはこっちアルね!!」
目的のカエルのためにいざ!という気分なのかかえるにだけ目を奪われる哀れなクイナ。
「お、おいクイナちょっと待てったら!!しょうがないなぁ、全く…」
食欲豊富なのはいいが、しっかりと物事を探して欲しかったジタンであった。
クイナは茂みの中へとどんどん入り込んでいく。
突然何かの入口らしきところに出てしまった。
そこに立ち往生しているカエルが一匹。
「やっぱりカエルアルね!! 待つアルよ!!」
クイナはそう言い、ぴょーんとカエルジャンプをお見舞いさせるが、やはりそこはカエル。
素早く横の茂みへと入り去ってしまった。
「また逃げられたアルよ…」
残念そうにクイナは言う。
「それよりクイナ、カエルどころじゃないぜ」
そう。そんなカエルの話をしている場合ではない。
「見ろよ!これこそ俺達が探してた採掘場の入口…じゃないのか?」
「こんなの初めて見たアルよ。ジタン、ホントにココ入るアルか?」
「今更何言ってんだよ。ここから外側の大陸へ抜けられるかもしれない。さぁ、行こうぜ!!」
こうしてジタンは地下へと潜っていくのであった。
忘れられた道、フォッシル・ルー。
かつては採掘場として幾人もの鉱夫が中に挑んでいった場所である
だが、今ではその存在は忘れ去られている。
今でもまだ何人かは採掘をしているという噂がある。
その為、やけにまだ新しきランプ達がぶら下がっている。
中に入ると、空洞のような小部屋があった。
ジタンは覗いてみるが暗くてよく見えない。
刹那。
「な、何だ!!」
突然その小部屋から巨大な機械が襲いかかってきた!!
どうやら罠が仕掛けられていたらしい。
「冗談じゃねぇぞぉー!!」
ジタン達は必死で逃げるが、それでも尚その巨大な機械は止まることがない。
幸いか不幸か、その道のりは常に直進。
だからこそ人間には幸なのだが、その巨大な機械も速さを増す。
誰もが「一体何処まで逃げれるのか」と全速力で走りながら考えていた時だった。
ひゅん、となにか炎のような玉がその機械と衝突した。
その衝撃で、ジタン達はなんとか次の空間に入り込めた。
「危なかったな…」
ホッとするジタン達だが、そんなこともしてられない。
「やれやれ、思ったより役に立たなかったようね。」
「誰だ!」
その人物はダガーを見て、にやりと微笑んだ。
「捜したわよ、ガーネット姫」
「ど、どちら様?」
その美貌に驚愕しながらも、でれーっとなるジタン。
(鼻の下伸ばさないでよ!)
「ハイ…分かってます」
「私はラニ。ブラネ女王の命令でガーネット姫を捜していてね」
「…アレクサンドリアに戻るつもりはありませんよ?」
「生憎、用があるのはガーネット姫じゃないのよ」
「…どういう事だ?」
「ガーネット姫が城から持ち出したある物に用があるの」
「!!」
「返してもらいましょうか! あればブラネ女王の物ですから」
「…そこまで聞かされたら、返すわけにはいきません」
「やれやれ、聞き分けがないわね。さっきのようには逃げられないわ。素直に返した方が身のためよ。さ、大人しく出す物出してちょうだい!」
「お母様がそんな命令するなんて…」
「ゴチャゴチャ言ってんじゃないわよ! さぁとっとと出しな!それともここでくたばりたいの?」
「嫌だと言ったらどうしますか?」
「バカね。決まってるでしょ!ペンダントを渡して楽になりなさい!」
そう言うとラニが襲いかかってきたが、ラニの後ろからあの時の「炎の玉」がひゅんと振ってきた。それはラニの背中に見事に命中する。
ラニは後ろを振り返り「な…何をする!」と怒りに満ち溢れた。
丁度ランプの光が差し込んでいないところに人がいるのか、ジタン達の場所からはそれの正体は見ることが出来ない。
「この…ガキが!!」
そう言い、ラニはそれに近づく。
だが、そこが丁度凸凹になっていたのか。
「ぎえっ」と哀れな悲鳴を上げてそこに躓き倒れた。
「ガキ」というからには少年か少女かどちらかであるだろうが、その子はすぐさまぱたぱたと走っていった。
「あ…あいつは…」
その後姿を目にし、ジタンはその子を追って走っていく。
「ジタン!!待って!」
そう言い、ダガーとビビ クイナも追いかける。
…哀れなことに地面に寝そべるラニを踏みつけて。
「お…覚えてなさいよ!!この復讐は絶対してやるからね!!」
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その少女は暗い洞窟の中を走っていた。
何故暗闇でも転ぶことなく走れるのか…追いかけているジタンは不思議に思った。
だが、その速さは街中にいる幼女と同じ程なので、簡単に少女の手を掴むことができた。
「は…放してよっ」
「お前…やっぱり…」
暗闇でも、何処かで見たことがある顔だとは思っていた。
思っていた、が…。
「ジタン、どうしたの-」
慌ててダガーとビビ、そしてクイナが駆けつける。
「それが…こいつ…」
「放してってば! 大体あんた達を助けたのは興味本位って奴からなんだから別に良いでしょ!?」
「あー、煩いなぁ。少しぐらい黙ってろよ」
「だったらその手を放してよ! そうしたら少しは黙ってあげるもん」
ぷい、と暗闇の向こう側へと少女は向いた。
「に…似てる」
「確かに…フレアに」
フレア、という単語に少女はぴくりと耳を動かし 問いをジタン達にかけてみた。
「今…あんた達フレアって言った?」
「あ…ああ、そうだけど」
「あんた達はお姉ちゃんの知り合いなの?」
ぐい、とジタンの服を引っ張った。
「ってことはお前はフレアの妹…なのか?」
少女はこくりと頷いた。
「私、フレイア=リヴァイスっていうの。お姉ちゃんの知り合いならお姉ちゃんがどこにいるか、分かる?」
「知ってるけど…」
そう言い、ビビは俯いた。
* * *
「そうだったんだ…。私達が色々と探索している時にそんなことになってるなんて…」
「でもお前の姉は生きてるんだ。それにリーズも一緒だしな」
俯いているフレイアに「だから元気出せよ」と声をかけ、ぽんと小さな肩を叩いた。
「リーズさんが一緒だと今の所、大丈夫だけど…。おじさんに早く報告しに行かないといけないなぁ」
「…おじさん?」
ダガーの問いに、こくりとフレイアは頷いた。
「うん、お姉ちゃんのお父さんのこと!」
「ということは、やっぱりこの採掘場を抜けたら大陸があるのか?」
「うん。私、そこから来たもん。でもここから結構あるよ?」
「案内…お願いできるか?」
ジタンの言葉にぱぁ、と花が咲くかのようにフレイアは微笑んだ。
「うん、まっかせてよ!」
そう言い、ぴゅー と口笛を吹いた。
刹那。
どどっと押し寄せる虫達。
「ガルガント!? こんな所にいるなんて」
「しかもこんなに…」
「うん。この子達は精霊の媒体として生きている存在だから、私の言うことを聞いてくれる優しい子達なんだ!」
そう言い、ガルガントを撫でながらフレイアは自慢をする。
「この子達はこの洞窟の全てのルートを知ってるから、すぐに洞窟抜けることが出来るよっ!」
「そうか…。よーし!」
そう言い、ジタン達はガルガントの背中に乗り込んだ。
目指すは…出口と神秘なる謎に包まれた大陸。