「この調子で行けば10分ぐらいでギザマルークの洞窟だな」
貴族のような格好をしている少年・・ジタンは言った。
「それにしても・・こいつはすごいな・・」
エルフの少女・・フレアは驚いたかのように改めてチョコボを見る。
それは 見たこともないかのように・・。
「知らないのか?チョコボのこと」
「ああ・・まぁ・・」
と 困惑するフレア。
(まぁ・・私のところでは雷鳥とかパルとかいるからなんともいえないけど・・)
「チョコボは、嘴で穴を掘ったり 人間の言葉を理解する力があるんだ。その代わり飛べないけど・・」
「へぇ・・」
そうフレアは言い、今乗っているチョコボの頭を撫でた。
その刹那。
『・・大丈夫なのか?』
低く、男のような声がフレアの頭に響く。
『・・私が代わりにお前の身体を使っても良いが-』
まだだ・・・まだ私は・・・。
『しかしお前ももはやこの霧のせいで限界ではないのか?』
その通りだ。 でも今、ここでお前に変わったら・・ジタンたちは・・。
『人間達なぞ 当てにしなくても、お前は強いのではなかったのか-』
「うるさい!!!!」
つい、怒鳴り声を上げてしまったフレア。
その怒鳴り声で後ろを振り返りフレアを見る3人。
「あ・・・・ごめん・・・・・」
頭の先まで真っ赤になるフレア。
(は・・恥ずかしい・・)
男の微笑する声が聞こえてきた。
『・・ふふ・・それでは観戦しているとするか・・。お前が思うぐらいにあの人間達は強いのか否かを、な』
そうして男の気配はなくなったのである。
「・・どうしたんだ・・フレア・・」
「いきなり声を上げてビックリしたではないか・・」
「いや・・その・・・」
もうどうする事もできないといった状態だったが。
「ジタン!!あれ!」
そう言ってビビが指をさす方向には 一つの洞窟があった。
ギザマルークの洞窟。
通常ならば水が滴る涼しげな場所なのだが・・・今となっては血が滲む戦場と化している。
「おい! 大丈夫か!?」
そう言って入り口にいた瀕死のブルメシア兵へジタンは声をかける。
「お、お前は、あの黒魔道士達の仲間ではないな・・」
そう言って綺麗な音を奏でるものを懐から探しだし、それをジタンに渡す。
「こ、このベルを持って王国まで行ってくれ・・・黒魔道士の奴らは俺達のベルを奪っていった・・。
奴らに気をつけて王宮にいる王をお守りしてく・・・-」
そう言って力を尽きた。
そう・・・目の前で死んでしまったのだ。
しかし・・・。
「こんなところで感情的になっている場合ではない・・!一刻も早く ブルメシア国まで行かなければ・・!」
そういって前に進むが。
一つの扉があった。
「くそっ・・!開かない!!」
そう言ってジタンが扉を蹴り上げた時だった。
きぃぃぃん という共鳴音が洞窟内に鳴り響いた。
そして扉は開いたのである。
「・・ほう・・。このベルが扉の鍵となっている訳だな?」
粉々に崩れてしまったベルを見つめながら言うフレア。
「そうらしいな・・」
そう呟いて扉をくぐった時だった。
だが一人のブルメシア兵が黒魔道士に倒されている・・・!!!
「な・・・」
「お前達 ここから進めないようにしてやるでおじゃる!」
壁から現れたのは双子のソーンとゾーンだった。
「それいけ!黒魔道士達!!」
そう言うと、駆けて来たのは数体の人形達。
「キル!!キル!!」
そう言って人形達は雷の魔法やら氷の魔法やら唱えては、ジタンたちに襲い掛かったのである。
しかし、魔法使い達を相手にしてきたジタンたちには雑魚そのもの。
「魔力を弾き飛ばせ!アルスター!」
「竜剣!!」
「ファイラ!!」
「マンイータ!!」
何とか全てを倒すが、ソーンとゾーンはいつの間にか姿を消していた。
ただ・・一言もらしつつだが・・。
「うひょ~ 凶暴な奴らでごじゃる~!!」
「逃げるでおじゃるよ~!!」
そうして、ジタンがよく目をこしらえて黒魔道士の懐を覗いてみると
キラリと光るベルが一つ。
「これで二つ目・・!」
そして中央の扉を開いた広場には大きな大きなベルがどしりと落ちていた。
「な・・なんだこのでかいベルは・・」
「あなたーっ! あなたーっ!」
そう言って叫びつづけるモーグリが一匹。
外見からして、メスのようである。
「どうしたんだ?」
「あ、あたいの・・モグミの・・主人が、この大きなベルの中に入って・・・出られなくなったんです! クポ~~~~~~~~~ッ!!」
そう言って何故かビビに抱きつくモグミ。
困惑するビビに対し、フライヤはというと。
「可哀想じゃの、助けてやろうではないか?」
「だけど、このでっかいベル、普通の力じゃ持ち上がんなさそうだぜ?」
「困ったのう・・・」
「そんなぁ~~~~~~~~、ん?」
モグミは突然ビビの懐を嗅ぎ始める。
「あ・・あの・・・・」
もっと困惑するビビ。
「あっ! あっ!あの、あの、あの、あの、あの、もしかして、もしかして、もしかしてクポの実を持っていらっしゃらない?」
「え・・?うん・・・もってるよ・・・」
「あの、あの、あの、あの、それ、頂けないかしら?」
「うん・・あげる」
ビビはそれをモグミに手渡すと、いきなり大声で叫んだ。
「ありがとう~~~~~~~~ッ!!あなた! あなたの大好物のクポの実よぉ~~~~~ッ!!」
誰にも持ち上げることの出来なかった巨大なベルをどーんと跳ね除け、中からオスのモーグリが飛び出してきた。
「クポの実、大好きクポぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
そう言って洞窟の入り口へと駆けて行ってしまったのである。
「「「・・・・」」」
全員その光景に・・白けてしまった。
「と、とにかく、ありがとうございました。これをどうぞ・・」
そう言ってビビに渡したのは一つのベル。
「あなたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!置いていかないでクポぉぉぉぉぉ!!」
そう言ってオスのモーグリを追いかけていってしまったモグミ。
「・・大丈夫かな? あの新婚夫婦・・・」
------
奥の方へと行くとまたもや扉がふさがっていた。
「これで・・3つ目・・」
そう言って扉を開けると、またもや瀕死のブルメシア兵が・・。
「フライヤさん・・・ 気をつけてください・・・ギザマルーク様が変なふたり組に操られ・・。荒れ狂われて・・・-」
「お・・おい・・・」
そうブルメシア兵がいった言葉は最後の言葉だったようだ・・。
ごごご・・・と音がした。
そんな音がした時4人の目の前にいたのは・・巨大なエイのような竜だった。
巨大なエイのような魔物は荒れ狂っていた。
「ぐぉぉ!」
「ギザマルーク様!落ち着いてくだ-」
「フライヤ!!危ないっ」
体当たりしてくるギザマルークをフレアはフライヤを庇うかのように突き飛ばした。
「もうあの瞳は操られてる証拠だ。誰が何を言ったって全部「敵」なんだよ」
「・・・・」
「覚悟を決めなきゃいけない・・フライヤ」
「・・覚悟などとっくの間についてる!」
フライヤの本気の瞳を見つめ、微笑するフレア。
「じゃあ、後宜しくっ」
「は?」
恥ずかしそうに頭を掻きつつ、口を開く。
「こんな狭い所じゃ、私は不利なんだよ。魔法も獣歌もこんな狭い所じゃ、使えない。寧ろこの空間さえも切ってしまう・・・そしたら大変な事になっちゃうだろ?リーズじゃないけど、私は援護魔法するから宜しくって事!」
「じゃあ、援護宜しく―」
そう言っている間にも吐き出される水魔法ウォータ。
水の圧迫感がジタンたちを襲う!
「癒しの書よ・・聴き手に華胥の生命を・・・オーラ!」
ふわりとした赤の光が眩しいほどに輝いた時、
水の圧迫感・・そして切り傷などを癒していく。
「暗雲に迷える光よ、我に集い その力解き放て! サンダラ!」
ビビが唱えた魔法に咄嗟に気付いたギザマルークは、ビビに向かって突進していこうとする。
「うわぁ!」
しかし、その突進はジタンによって封じられた。
「今だ!!」
すぅ と一呼吸し一気に駆け抜けていく。
「・・・竜剣!!!!」
一気にギザマルークの懐に入り、竜の力の如く槍で叩きつけた。
------
「・・ギザマルーク様が荒れ狂うとはただ事ではない・・・王が危険じゃ!!」
そして洞窟の出口に出たとき、そこには水の都が見えていた。
霞んで、淀んでいる都は・・・ただ単に雨が降っていた。
しかし・・・。
「飛空挺はがたがた、積み荷は無くなり、南ゲートは損壊!あまつさえ、この自分が盗賊の片棒を担いでしまうとは・・・」
「スタイナー・・」
「おっさん言ってるのは分かるが・・南ゲートは・・」
その言葉をさえぎり、フレアが言う。
「まぁスタイナーがいう言葉は分かる。だが・・・これぐらいやらないとあいつらからは逃れられなかったんだ」
少々しょんぼり気なフレア。
あまりやりたくはなかったというのが彼女の本音なのだが。
「あまりフレアを責めちゃいけませんよ?おじさん。それにフレアの行動は正しかったです。
フレアのお陰でなんとかぎりぎりゲートを抜けれたのですから。大一閃の押す力が無かったら・・今ごろは-」
「まぁとにかく!!いまさら後悔したって遅いということだ」
とこの話を切り上げるジタン。
「・・・ええい、こうなれば!覚悟を決めました!! 城にお戻りになられる日まで、このスタイナー、お供させていただきます!!」
また懲りずに・・・。はぁ、とジタンは溜息をついて仕方なく張本人のダガーに聞いてみる。
「ダガーいいのか?こうなったらこのおっさん、地の果てまでだってついてくるぜ?」
そんなジタンに対し、「ありがとう、ジタン。大丈夫です」と冷静な口調でダガーは言った。
そして巨大な巨大な山が見えてきた。否、それは山ではなく・・・機械の塊といえよう。
「これがリンドブルムだ」
「ふえぇぇぇ」
とあっけにとられるのが フレア。
(こんな技術・・・この星にあったなんて・・・私たちの星の技術もまだまだですね・・・)
そう感じて止まないリーズ。
その様子を見て微笑するダガー。
「リンドブルムはお城の中に街があるのよ」
そんな会話を尻目にジタンは思う。
(・・・リンドブルムに着けばダガーとの旅も終わりかぁ。いい感じになってきたのになぁ・・・)
そんなことを考えていたジタンに対し、ビビが問いをかけてきた。
「ねぇ・・ジタン」
「ん?どうしたビビ」
「ボクと・・・あの黒魔道士って呼ばれてた人達って・・おんなじなのかな?」
ビビの言葉にその場にいた全員が凍りつく。
なんていってやればいいのか分からない。
だが・・・スタイナーは違った。
「ビビ殿はビビ殿であって、彼らは彼ら、ではありませんか?いったい何の事を-」
「おっさん、良い事を言うな!」
といってスタイナーの背中をバシッと叩くジタン。
「何があろうとビビはビビって事さ! な?」
「う、うん!」
「よ~し、ビビ。甲板に出よう!!リンドブルムの城下町は飛空艇から見ると気持ちいいんだぜ!」
「えっ?」
「ほら早く! 正面玄関の天竜の門がすぐそこだ!!」
「なぁリズ」
「なんですか?」
「・・ゆっくりしような?」
もちろんです とリーズがいう。
このところ ずっと旅をしっぱなしで休憩すら取れなかった。
少しの滞在なら旅に支障はないはずだ。
それに ジタン達とはこの町で別れるつもりなのだから。
そうこうしているうちに飛空挺は城の中へと入っていく。
------
「城の中に飛空艇ポートがあるとは・・・ブラネ様のレッドローズでさえすっぽりと入ってしまう大きさではないか」
スタイナ―が驚くが、ダガーは慣れている様で、
「ダガーは来た事があるみたいだな?」
悟って言うジタン。
「ええ、小さい時に何回かは・・・。でもお父様が亡くなられてから来るのは初めてです」
前から誰かが来る気配がした。
「おっと、早速お出迎えですぜ、お姫様!」
「わたくしはアレクサンドリア王国の王女ガーネット=ティル=アレクサンドロスです。シド大公殿に会いに参りました」
「一国の姫君がそのようなボロ船に乗ってくる訳がありませぬ!第一、姫様の御付きがこのメンツとは・・・」
「な、何を言うか、無礼ではないか!姫様はお忍-」
「まぁ あやしいとは思いますけどね」
怒り心頭のスタイナ―に対して のほほんというリーズ。
「・・・・では、何か王族であるという証をお持ちですかな?」
「はい」
そういって差し出したのは・・・。
「・・・このペンダントは・・・天竜の爪?! いや・・・似ているが、形が違うようだ。 オルベルタ様をお呼びしろ!」
兵士が呼びに行った直ぐ後、ジタンとスタイナーが口喧嘩は始まる。
「貴様のように知性のなさそうな奴が一緒にいるから我々までもが怪しまれるのだ!」
「おっさんが知性溢れる紳士に見えるとはとても思えねえけどなぁ?」
「き、きっさまぁ!!私がプルート隊だといえばすぐに-」
「・・・他人の城でごちゃごちゃいうもんじゃないんだけど」
と ワイワイ(?)している時に。
「これは何の騒ぎだ?」
「はっ、怪しい者達が大公殿下との謁見を願い出ていまして。その上、天竜の爪にそっくりなペンダントを所持しておりまして・・・」
「! 後は私が引き受ける。お主達は下がってよい。」
「はっ!」
懐かしむように大臣を見つめるダガー。
「オルベルタ様!」
「失礼しました、ガーネット様」
そう言って頭を下げるオルベルタ。
「さっ、どうぞこちらへ。大公殿下がお待ちかねです。」
「「「「・・・お待ちかね?」」」」
全員が全員そろって同じ言葉を言った。
------
エレベーターのようなもので上へ上へと上がっていくジタンたち。
リフトというらしいが3つの高層で成り立っているという。
下は霧がかかっていて現在通行禁止。ジタンたちが乗った中層は城下町へといけるエアキャップがあるらしい。
そして上が特別な人ではないとたち入りは許されない大公の間がある。
「なあ、ダガー、シド大公ってどんな奴なんだ?
オレ、リンドブルムにずっといたけど今まで一度も見た事がないんだよなぁ」
「シド大公殿下は、いつも一歩先の事をお考えの人。少し変わっているところもありますが、お父様の親友でもあった、頼りになるお方です」
そう言ってダガーは不安が隠せなくなった。
「大公殿下は・・・わたしの話を聞いてくださるのかしら?」
「心配するなって、オレが無理矢理にでも聞かせてやるさ」
「ここが大公の間です。・・・殿下、アレクサンドリアよりガーネット姫が参られました」
「ぶりっ!?ホントぶりか!?」
そう言って飛び出してきたのは・・・
「!! ブ、ブ…… ブリ虫ぃーーーっ!!」
スタイナーは近づく虫を思いっ切り張り飛ばす。
「ぐはっっ!!」
一気に飛んでいったものだからブリ虫は重症。
「ああ・・・駄目ですよ スタイナー。これは・・・この人は・・・」
「殿下っ!!」
「「で・・殿下!??????」」
「し、失礼な奴ぶり・・・!」
「いま 回復の魔法を・・・」
そういい、リーズはブリ虫-殿方に対して回復の魔法をかけてあげた。
「あ・・・ありがたいぶりっ はぁぁ気持ちいいぶり」
気持ちよさげに髭を上下にさせるブリ虫。
「そのヒゲは、おじ様なんですね?」
「うむ、シド=ファブールであるぶり。我が『天竜の爪』と似たペンダントを下げていると聞き、姫だと確信していたブリ。久し振りに会えたというのに・・・このような見苦しい姿で済まぬブリ。」
「私からお話ししましょう・・・ 半年ほど前の晩、何者かがこの城に忍び込み、陛下の寝込みを襲ったのです。
我々も駆けつけるのが一歩遅く・・ 陛下はこのような姿に変えられ・・・ヒルダ大公妃は連れ去られていたのです。」
うーん とシドを見て言うリーズ。
「元に戻せる方法はあることはありますが・・・ブリ虫というものがなんなのかが分からないので元に戻せません・・・」
「まぁ リズは全能ではないからしょうがないよ」
とフォローをするフレア。
「リンドブルム城に忍び込むなんてオレくらい腕の立つ奴の仕業だな」
とジタンが他人事のように言ったのだが・・・「貴様達がやったのか!?」とスタイナーが冗談をスルー出来ずに睨み付けた。
「それは絶対にないブリ」
そうシドはきっぱりと断言した。
「知っているのか、オレ達の事を?」
「この国を治める者として、それぐらいは知っておかねばな」
「おじ様、今日はお母様の事でお願いがあってここへ参りました!」
「うむ、わかっておるブリ。じゃが、皆は疲れておるだろう。今日は一日ゆっくりと休むが良いブリ。話は明日、じっくり聞かせてもらうブリ」
「さあ、どうぞこちらへ。お洋服の準備とお食事の用意が出来ております。」
堅苦しい所が超が付くほど嫌いなフレアは城下町へと逃げ出したのはいうまでもない。
------
リンドブルムの夜はあまりにも短いようで。
「城のお上品な食事ってのはどうも苦手なんだよなぁ・・・。よくダガーはあんなので食った気になるよ」
「だよなぁ・・・全く。城育ちの者は皆いいなぁ。 あれで慣れてるんだから・・ ほんとまいっちゃうよ」
「だよなー・・てっっ!!!」
ジタンは横を見た。
はぁ とため息をつくフレアがいた。
「フレア・・ついてきたのか・・」
「だって ここ迷いそうだから・・」
「まぁとりあえず・・ お!?今日のスペシャルメニューは沈黙のスープか、悪くないな」
「スープか・・おいしそうだな」
「入るか?」
「ああ」
二人は食堂の中へと入っていった。
「おやっさん、いつもの安っちいスープ二つ頼むよ!」
「だ、誰だ~!? うちのスープにケチ付ける奴は!って・・・ジタンか。 最近顔を見せなかったが元気そうだな!」
「ヘヘッ、おやっさんも!」
「沈黙のスープ2つだなっ! よし、少し待っててくれ。」
そう言ってとことこと煮込み始めた。
「・・・ふう」
「なにため息付いてるんだよ」
「なんだかな あの南ゲート・・・やっぱり私の所為だなーって」
「・・・・」
「昔から・・昔からだ。私が力を制御できなかったのは。いまではなんとかできる感じになってきたけど・・・まだまだだな。
それに・・・」
すっと出したのは 一つの大剣。
「こいつもそろそろ潮時かな・・・」
「その剣は・・?」
「私の村に伝わる名剣だ。ずっと封印を解いていたから ちょっとやばいかな・・。また封印しないと」
「へぇぇ・・綺麗だな」
きぃぃ と音がした時 大剣は羽のペンダントと化していた。
「これでよしっと」
それを護身用なのか、フレア自身の首にかけておくことにした。
「そこの尻尾・・・」
「何だと!? そう言うお前も尻尾があるじゃねえか!・・って」
「ふふ・・久しぶりだな・・」
「・・・?? 知り合いか? ジタン」
「よ、よぉ! えっと・・・どなたでしたっけ?」
「この私を忘れたのかい?」
「覚えてるさ! お静だろ?」
「・・・違う」
「クリスティーネだっけ?」
「違うっ!」
「あ、わかった! 小さい時、隣に住んでたネズ美だろ!でっかくなったな~」
「しつこいのじゃっ!!」
「・・・・・」
呆れてモノが言えないフレア。
「冗談だよ、いい女の名前は忘れないさ。ほんと、久し振りだな、フライヤ」
「ほんと、相変わらずじゃな」
すっとフレアが渡されたのは沈黙のスープ。
それを手にとり ごくりと一口飲みつつ 様子を見つめる。
「何年ぶりだっけ・・・」
「3年振りぐらいかの。」
「あれからどうなんだ? 見つかったのか、恋人の消息は?」
フライヤは頭を横に振った。
「だめじゃ、まったく・・・」
「という事は・・・リンドブルムに来たのはやっぱりアレなのか?」
「うむ、狩猟祭にはいろんなところから腕に覚えのある者が集まるからな」
「狩猟祭?」
飲みながら言うフレア。
「ああ・・年に一回行われる祭りさ」
「どんな祭りなんだ?」
「あまり・・大声ではいえないが・・・モンスターを街に解放して、そのモンスター達を倒していくんだ」
「・・・さぞかし街の人間にとっては危なげな祭りなんだな」
「まぁな。でもフライヤ きっとみつかるさ!」
「お主は参加せんのか?」
「う~ん・・ オレはパスね。」
「・・・私やりたいな・・・」
ぼそっと言うフレア。
「・・・!フレア」
「まぁ いい武器があれば・・な! それじゃ宿に戻るわ」
「分かった。気をつけてもどれよ?」
「ああ・・」
そう言って宿屋に戻るフレア。
「・・・制御できない・・か」
そういって胸を触る。
この中には・・目覚めさせてはならないのがいることは知っている。
でも・・・いつ目覚め・・いつどうなるか・・。
「あぁ・・もっと旅をしたいな・・・」
ただただその姿を映していたのは・・・赤い赤い月だった。
------
翌日。
「フレアッ!」
そう言って引き止める 耳に羽が生えている少女 リーズ。
「ん?どうしたリズ」
そう言って振り向いた 耳がとがっている エルフのフレア。
「頼みモノがあるんですけど・・よろしいですか?」
「いいけど?何?」
「霧耐性のものなら何でもいいので 買ってきて欲しいんですが・・」
「うん 分かった。2つ分ね?」
「そうですねー 何があるか分かりませんし」
「じゃあ行ってくるわ」
そういって街にくりだしていった。
鳩が飛び出し 羽ばたく。
それはいつもの・・・そういつもの平和。
朝日が眩しく 目が覚めたジタンの横には いつのまにかビビが起きていた。
「おはよう、ジタン」
「早いな、ビビ」
ビビは窓の外を見ていた。人々が行ったり来たりしている。
「リンドブルムの街って賑やかだね、こんなにたくさんの人、ボク初めて見た。でも・・・独りになりたくなった時は、みんな何処に行くのかなぁ・・・」
「この街はいつもこんな調子さ、いろんなところから人が集まってくる。飛空艇技師を目指す奴や、劇場艇で役者になりたい奴・・・。まっ、中にはオレみたいなはみ出し者もいるんだけどな!気付いたら、オレはこの街にいてタンタラスの奴らと暮らしてたんだ」
「へー、タンタラスの人たちはここに住んでるの?」
「ああ、劇場街にオレ達のアジトがあるんだ。オレはアジトへ戻るけど、どうだ、ビビも一緒に来るか?」
「ううん、ボクは街を見に行ってくるよ」
「そうか、それなら、オレがガイドしてやってもいいぜ」
「えっ、いいよ・・・ ボク一人で大丈夫だから」
「そうか、オレがいちゃ邪魔だな、可愛い女の子見つけて来いよ!」
ビビは、曖昧に「うん」というしかなかった。
「さーて!アジトへと行きますか」
そう言ってエアーキャップへと乗り込んだら・・・。
「あれ?フレアじゃないか おはよう」
「ん・・ジタンか」
そう言うと 手の中で鉱石のような物で遊んでいた。
「どうしたんだ?それ」
「ああ・・リズから霧耐性のものを調達してきてといわれてさ、そしたら合成屋にこれがあったから。今は形を作ってるんだ」
「へー・・どうやってやるんだ?」
「まず 鉱石を封呪の結界の中に入れて、そして-」
そう言っている合間にエアーキャップは劇場街についた。
いまだに説明しようと四苦八苦のフレアを無視し、
「おっ ついた」
そう言ってジタンは降りるのであった。
------
アジトには誰もいなかった。
「戻ってきてる訳ないか・・・ あいつらがいないと静かすぎるぜ。あーーーっ!!!何か頭ん中がもやもやするっ!!!」
「へー ここがアジトかぁ」
もやもやしているジタンを尻目に、ひょこっと顔を出すフレア。
やはりジタンの後をついてきたらしい・・・。
「? こ・・・これ・・・」
そう言って床に落ちていたキラリと光る物体を手にし、絶句するフレア。
「・・? どうしたフレア。ここは全く高価な物なんて-」
「いや・・これ・・魔法耐性と魔法攻撃に比例する力があるらしい。ちょっとこれもらってもいいか?」
「ああ、つーか そんなに高価な物なのか?」
「魔法使いじゃ分からないけど かなり価値がある」
そう言って魔法陣を創り始める。
「・・・Magic・・creation」
フレアの前には一つの弓があった。
しかしそれは飛ばす時に必要な糸がついていない。
「・・・これは弓か・・?でも糸が・・」
「糸は魔法で何とかなる。それにしても自分なりに作ったが、こうもうまくいくとはなー」
とフレアは満足気だ。
その時 鐘が鳴った。
「もうそんな時間か・・・ 今、どうしてるかな、ダガー」
「気になるなら会いに行けば?愛しきダガーさんに」
「ああ そうするよ ってぇ!!!!!!」
真っ赤になりながらエアーキャップの方へと走っていったジタンであった。
「・・図星かぁ」
城の方へと走っていこうとしたら 目の前にどっしりと鎧が止まっていた。
「どうしたんだ、スタイナー?」
「また貴様の仕業だな! 姫様は何処にいるんだ!」
「おい、落ち着けって、オレだって今来たばかりなんだ」
「姫様が見当たらないのだ。この部屋にいるようお願いしたのに」
「何処かそこら辺に散歩にでも行ったんじゃないのか?」
「何を呑気な事を! 姫様はリンドブルムに来るまで、何度も危険な目に遭われているのだぞ。万が一、姫様が一人の時に何かあったらどうするつもりなのだ!貴様とは話にならん! 自分は姫様を捜しに行く!」
「・・・・二人とも・・聞こえないのか?」
後ろからのんびりときたフレアが二人に対して言った。
「ダガーの声」
そう言ってフレアは天空に指を差す。
「綺麗な声だ・・」
「そうですねー」
「・・・っ! り・・リズ。いたのか」
むー とした顔でフレアに文句を言うリーズ。
「いたのか はないですよっ!!」
「ご・・・ごめん」
そうこうしているうちに ジタンは走っていってしまった。
「あっ貴様-」
スタイナーも追いかけようとしたが 後ろから はしっ と誰かがひっぱった。
フレアとリーズだ。
「まぁまぁ スタイナー。ジタンさんに任せましょうよ」
「そうだよ スタイナー。あの二人・・仲いいから」
そんな二人に捕まったら最後。
一体どんな事をされるのか。
スタイナーは身の程を知ることとなる。
------
「いくら伝統行事だからって少々、荒っぽ過ぎやしないか?特に、あのデカい奴には何人もやられてるんだぞ・・・」
呆れたように そして嫌な予感がするかのように兵士は言う。
こいつらを倒せるのはいないのでは・・・?
しかし 商人の顔色は違っていた。
「いやいや、それが良いのです! これぞ男の祭り!血が騒ぎますな!」
わくわくしているかのように血が上っている(一種のバーサク状態とも言える)商人は誰にも止められない。
「予定よりも早くファングが放されたようです」
冷静に言う兵士は しかしながら冷や汗をかいていた。
「危ないわね~、まだオルベルタ様から指示は来ていないのに」
「上では間もなく獣を放すと思われますが・・・」
「そうね、奴が出てくる前にムーを放しちゃいましょう!急いで!」
そういって檻の中からモモンガのようなモンスターが解き放たれた。
「準備、整いましたー!」
「よーし、そのまま待機!」
「今年の奴は今までになく絶好調じゃ! 誰にも倒せんじゃろ!」
がたり がたり。
恐怖の音を奏でる檻はまぎれもなく故障しそうな勢い。
「ヒャハハ、元気じゃの!」
「おいっ、止めさせろ! まだこいつを出すのは早い!」
「知らんよ、奴は自由じゃ。ワシの言う事などきかんて。」
「くそっ! すぐに門を開けさせろ、城壁が壊されてしまうぞ!」
「ゆっけ~い! ザグナルちゃん!!」
そう言い城壁が少々傾いたまま、強大な獣は町へと放たれた。
狩猟祭。それは魔物ハンターや冒険者等が自分たちの力を見せ付ける場所。
「わっりぃ、わりぃ! ちょっと準備をしててさ」
と 冗談チックに言うジタン。
「では、そろったところで、『望みの品』はもうお決まりですか?」
「ああ、オレはやっぱりギルだぜ!」
そういったのはジタン。
「私はアクセサリにしようか」
ふむ と考えながらもいうフライヤ。
「じゃあ私は・・いちよ鉱石かな?」
武器もあるし と そういったフレア。
「ビビ選手は何にしますか?」
「え、えっ! ボクも出るの!?」
自分は出ないはずだった・・ そうビビは思っていたのだが。
「お前ならイイ線いくと思ってオレがエントリーしといてやったんだ。黒魔法があればどうって事ないって、なっ?」
「で、でもぉ~」
「相変わらず勝手じゃな」
フライヤがそういったが ジタンはその言葉を無い事にした。
「どうなされますか?」
そう 急かされ。
「あっ、じゃあでます・・。ボクはカードを・・」
やはりビビは純粋といえる・・・。
「わかりました、ギル、アクセサリ、鉱石にカードですね。そろそろお時間です。ジタン選手 フレア選手は劇場街、フライヤ選手は工業区、ビビ選手は商業区へ向かってください」
エアーシップに乗り込んだ時は もう始まっていた。
「いい眺めですねぇ~」
そう呟く・・というよりも風のようになびく声を発するリーズ。
「あ・・リーズさんも出なかったんですか?」
「あまりこういうものは好きではなくて・・」
そう言っている間に 一人だけ知っている人物がいた。
ビビだった。
「あっ! あそこにいるのはビビさんですねー。小さいのに頑張ってますねぇ」
「がんばれぇぇぇぇ!ビビ殿おぉぉぉぉぉ!!」
隣からビックリするほどに大声を発するスタイナー。
そんな燃えるスタイナーとはうってかわって。
「・・・・・まぁフレアが楽勝で優勝ですね」
そう呟いたのはリーズとフレアが長年付き添った間柄とフレア自身が「力」の持ち主であったからだ。
それは この二人のコンビにしか分からない事だが。
------
しばらくしてフレアはのんびりと商業地区を歩いていた。
まるでその街をのんびりと楽しみながら見学しているかのように。
「フレアー!!!」
泣きながらビビはフレアの元へと走ってきた。
「?・・・!!! これは・・でかいな・・」
ずっしりと目の前にいる巨大な獣 ザグナル。
天空を見ないとどんな顔をしているかさえ分からない。
「助けて~」
「まぁ まかせなって!」
ぐるる・・と お腹を鳴らせるザグナル。
「まぁ まずは落ち着こうか・・・」
そう言った刹那。
「な・・なにこれ・・」
ビビの目の前には・・正確に言えば 獣の足元に。
大きな呪文譜が編み出されていた。
フレアの手に絡み・・ フレアは静かに詠唱を始めた。
「汝 自ら 生死を分け 只管 力を拒む ・・・ 哀れなき生命よ・・・ 我にひざまつかん」
フレアはそう言うと獣は大人しくなった。
「我は尊重なり 我は力なり 我は暴徒なり 我は炎なり 自ら力を称え 我と共に・・・ ラン!!」
その時だった。
火が・・まるで火炎が 獣を暖めるかのように丸め込み
そして・・爆発したのだ。
紛れもなく 近くにあった建物が壊れるのではないかと思うほどの爆発。
しかし、建物の損傷は無かった。
ただ・・損傷があったのは・・・ザグナルのみ。
もはや決着はついていた。
『タ・・・タイムアップ! 終了です!!
優勝は・・・ フレア選手! 見事優勝です!』
------
はぁはぁ とよろよろと。
歩いてくるのは瀕死の兵士。
一体何があったのか・・・周りはそう思うほど。
「いや~、実に見事だったブリ。望みの品とハンターの称号を与えるブリ!」
そういってシドはフレアに金に光る鉱石を渡した。
「オリハルコンブリ! ココでしか手に入らない最高級モノだブリ!」
「ありがとうございます」
ハンターの称号と共にもらうフレアは満足そうで。
そんな時だった。
「はぁ・・はぁ・・」
ブルメシアンの兵士は辛そうに壁にもたれながら歩いてきた。
「お前!まだ大公様は優勝者と話しておるのに・・」
「シド大公・・・・ ご無礼をお許しください・・・!我が王から・・・火急の言伝でございます・・・」
「何だとっ!」
(陛下、そのお姿では!)
(・・・よく見るブリ。あの者は戦乱により視力を失っているブリ。だからこの姿を見られても大丈夫だブリ)
オルベルタにそう呟き、
「して、言伝とは?」
ブルメシアンの兵士に向かって話し掛けた。
「我が国は・・・敵の軍の攻撃を受けておる・・・!戦況は・・極めて不利・・・!援軍を・・送られたし!敵は・・とんがり帽子の・・軍隊でございま・・・す・・・」
ひゅうひゅう言う傷ついた兵士。
それを見て シドは、
「言伝お聞きいたした。直ちに我が飛空艇団を送る!!」
「あ・・・ありがとう・・ござい・・ま・・」
そう言って血だらけで倒れてしまったのだ。
「・・・・・」
リーズは首を横に振った。
やはり治癒が間に合わなかったらしい・・。
「そうか・・・」
がっくりとシドはうなだれた。
「ここに来るのがやっとだったらしいな。ブルメシアで何があったというのか・・」
「しかし、シド様。どうなさるおつもりで? 狩猟祭で城には僅かな兵士か・・ 飛空艇団を動かすには足りませぬぞ」
そう言ったが もはやシドは決意していた。
「国境に配備した飛空艇団を呼び戻すブリ。ブルメシアを見殺しには出来ん」
たとえ、アレクサンドリアから目を離すとしても。
王の間から出た後で。
「とんがり帽子か・・ ビビと同じ黒魔道士かも知れぬな」
そっとフライヤはビビの帽子を撫でる。
同じでもビビは罪は無い。しかし、脅威になることは間違いないだろう。
「・・・・・・」
そんな思いを知っているのか ビビはうなだれた。
「私は失礼する。飛空艇団を待ってはおれん」
同族だからなのか、いつもとは違ってイライラとしているフライヤ。
ちょっとまて とジタンはいいながら王の間から歩いてきた。
「仲間の故郷が攻撃されてるんだ、これを聞いて黙っていられるか! お前が嫌でもオレは行くぜ!」
「済まない・・ ジタン」
待って! そういいながら ぱたぱたと走ってきたビビ。
「ボクも一緒に行く。自分の目で見たいから・・」
そういった 黄色の瞳は決意と不安を意味していた。
「・・わかった」
「私も行きます!」
「姫様! 危険であります!」
「スタイナーの言うとおりですよ?危険だとわかっている場所に連れて行く事は出来ません」
きっぱり というリーズ。
真剣な眼差しでダガーを見る。
「危険なところなのはわかってるわ!」
「あんたは死というものを知らないからそういえるんだ!」
普段ならにへらと笑うフレアだが。
やはり真剣そのもので。
「フレアさん!!」
「ダガー・・今、目の前で死んだブルメシア兵を見てどう思った?」
そう質問するジタン。
「……可哀想、って……」
「そう、可哀想、だ・・ そう思うのは悪い事じゃないさ。けどダガーはまだこう考えられない・・。
『自分もこうなるかもしれない』って・・。お母様を説得するなんて、そんな甘い事言ってられる状況じゃないんだよ!」
「でも!!」
「まあまあふたりとも・・」
そう言って階段を下りてくるシド。
「今は言い争う時ではないブリ!」
「大公殿の言う通りじゃ、早くブルメシアに向かわねば。地竜の門を開いてもらえぬか?」
「うむ、歩いていくのならば、あそこから出るしかないブリな。では、地竜の門が開くのを待つ間、腹を満たしていくといいブリ」
「腹が減ったら戦はできぬと言いますしねぇ」
いつもの調子でリーズが言った。
そして皿が並んでいく最中。
フレアはリーズに呟き 声を掛ける。
(リズ)
(なんですか?)
(あのさ、多分この調子じゃダガー アレクサンドリアに行くだろうな。だからその時、ダガーについていってくれないか?)
(・・・私は貴方と行きたいのですが・・・)
(じゃあ聞く。君はあれから「死」を克服したの?)
(・・・無理ですよ、それは。あなたのように親も姉妹的な子もいる周囲が充実しているならまだしも・・・親も死に同族はうざったいし・・・)
段々とリーズの同族の恨みの話になってきたので、はぁ とフレアは溜息をついた。
(じゃあ・・連れて行けない・・)
(分かってます。 前々からそのつもりでしたし)
(・・・・ごめんな・・リズ)
大丈夫です とひっそりという。
(ご幸運をお祈りしておりますね)
「あれ・・? ボク、お腹がいっぱいみたい。何だか眠くなって来ちゃ・・た・・」
そう言ってがっくりと そして静かに寝始めるビビ。
「・・・・・ダガー・・・?君は一体なに・・を・・」
ジタンも寝ないようにしていたがしばらくしたら寝音を奏で始めた。
「・・・これはいったいなにが・・」
「スリプル草よ?これを入れて皆を寝させたの。でもスタイナ―のには入れていないわよ?」
小さい葉っぱをスタイナーに見せるダガー。
「スタイナー、わたしは自分が出来る事をしたいの。 みんな勝手に決めて欲しくない!」
「それは姫様の身を案じての事!自分は戦争の悲惨さを知っています。命令でも、お受けする訳にはいきません!」
「もしブルメシアを襲ったのがアレクサンドリアだったとしたら・・・。 今度の戦争は『霧の大陸』の3大国を巻き込む大戦争になる。でも、わたしはアレクサンドリアの王女、わたしにしか出来ない事がきっとあるはずよ! 正直言うと・・お母様が死ぬのを見たくないのよ・・!」
「・・・・」
深く深く考えるスタイナ―・・。
そして結論はすぐさま出た。
「姫様のお気持ち・・・!このスタイナー、良くわかりました!!自分は姫様について行くであります!」
「ありがとう、スタイナー」
そういって出て行こうとしたが。
「・・リーズさん」
そうリーズが待っていた。
「・・・貴方も・・私を妨げるのね・・?」
「違いますよ?」
さらりというリーズはまるで風のようだ。
「貴方も私と同じ・・。死というものは嫌です。でも彼らは・・ジタンさんたちは知っている。フレアでさえも・・ね。
だからそんな臆病な私は貴方達の命を守ります。まぁ無論何を言われてもついて行きますからね」
「・・・ありがとう・・リーズさん・・!」
そう言って笑顔でその場を出るダガー。
「さあ、みんなが起きる前にリンドブルムを出ましょう!」
(行って来ます・・フレア)
(いってらっしゃい・・リズ)
「やられたブリな・・・」
そう言ってむくりと起き上がる5人。
「スリプル草か・・。箱入りかと思っていたが、あの娘、意外とやるものじゃな」
舌打ちをして怒るジタン。
「いったい何考えてんだっ!?まさか先にブルメシアへ向かったのか?」
「だとすれば、まだ間に合うかもしれないブリ。」
「ビビ、起きろ! すぐにブルメシアへ出発だ!!」
「・・・ふぇぇ?」
「・・寝ぼけてる場合じゃない!」
「ギザマルークの洞窟へ向かおう!そこを抜ければ、ブルメシアじゃ!」
「・・フレアは?」
「あの娘、先に行ってると言って出て行ったみたいじゃ」
「そっか・・・」
そういえば・・・。
何故かあの場にはフレアとリーズはいなかった・・・なんでだろうか。
「こっちこっち! ほら、急いで!!」
がたり と動き出した飛空挺に急いで飛び乗ろうとする一同だが・・。
一番おどおどしていたのはダガーであった。
「大丈夫だって、ほら、もう飛んじまうから早く!」
「そんな事言われても・・・」
それはそうだ。
自分が逃げてきた所へと戻るのだから・・・。
「リンドブルムに連れて行くって、約束するよ!」
そういえば何とかなるような気がする。そう考え、はっきりとした口調でダガーに言う。
そんな考えとは知らないダガーは仕方なく、「・・・わかりました、乗ります」と言ったのであった。
「ジタン・・僕先に入るね」
「おう!」
そう言ってビビは入っていったのだが。
「でっ!」
ビビが突然止まるものだからフレアが転びそうになった。
「どうした?ビビ-」
ビビの直ぐ奥には ビビにそっくりな者がいた。
いや、それは「者」よりも「物」といったほうがいいかもしれない。
「・・なんだこれ・・」
「驚いたな・・・ 動いてる。ダリの地下で作った人形を同じ人形が運んでいるのか」
(・・・これがあの猫が言っていた・・・)
フレアはビビに問い掛ける。
「ビビ・・・?」
「ううん。だって・・・ボクの事・・・見えてないみたい・・だから。何度も・・何度も・・話し掛けたけど・・・・・振り向いてくれないから」
苦しそうな言葉を少しずつ文章にしていくビビ。
それを聞いていたダガーはそんなビビをぎゅっと抱く。
「悪いけど、ちょっと上に行かなきゃならないんだ。
放っておくと城に着いちゃうからな・・・ビビを頼む ダガー」
「う・・うん・・」
「私も残りますんで大丈夫ですよ~」
上っていった二人を見届け、考える。
(一体誰がこんな事を?)
------
順調に目的地へと走っていく飛空挺。
しかし、その目的地はやはり・・・。
「順風である! ブラネ様もきっとお喜びいただけるであろう。
・・しかし、確かに離陸の時にあの盗人がいなければ姫様を置き去りにするところであった。
・・・ここはひとつ!
吊し首ではなく、終身刑を請願してやる事こそ真の騎士たる者の取るべき道であろう!
だがあれは、この船の乗組員が耳を貸さなかったからである。城に戻ったらば、素性を調べねば-」
「なにをごちゃごちゃいっているんだ?」ひょこっと顔を出したフレア。
それに驚いたのか、「どわっ」とひっくりかえるスタイナー。
「おいおい・・こんなんでビックリしてちゃ困るんだけど・・まぁいいか」
「・・・・フレア殿ではありませんか。一体何用で-」
といい終わる前に 船が一揺れ。
その原因は・・・フレアのみぞ知る。
「き、き、き、き。」
「どうかしたのか? 奇声なんか出しちゃって」 けろっと言うジタン。
今彼は目的地のルートをアレクサンドリアからリンドブルムへと変更したのである。
それ故に ジタンが手にしていたのは操縦機。
「きっさま~~~っ!! 許さんっ!!」
そう言って ジタンを掴みに掛かるが・・。
「あーあ・・・スタイナー・・何してるんだか」
ジタンは盗賊でもあるので 単純な行動のスタイナーをまるで慣れているかのようにかわした。
「・・・ん・・・??」
フレアが見たのは単純行動しかしていなかった黒魔道士達。
「おーいスタイナー どうやら怒らせちゃったみたいだ」
そう言ったフレアに対し、スタイナーは土下座をした。
「・・・申し訳ない! 今すぐこの男を静かにさせて元の進路に戻すので、待って頂けまいか?」
その言葉に反応したのか・・・否か。
突然黒魔道士達が船の先へと集まりだした。
ひょこっと看板へ顔を出すリーズとダガーとビビ。
「ふわぁ・・なんですか?」
見つめてくるのは 黒魔道士達。
しかし、その瞳に写っていた者は・・・!
ずどん という音が鳴り響いた。
それは雷だった。
しかし、 サンダラのようなものではない。
もっと強く・・もっと熱線が熱い・・・・・・サンダガ。
リーズが咄嗟にバリアを張ったものの・・・。
「あ・・・ あ・・」
近くに落ちたのか放心状態に陥っているビビ。
「どんな奴が2号を倒したかと思えば、貴様のような小僧とはな!
この黒のワルツ3号の敵ではないわ!!カカカカカ!」
そうして詠唱を始める 黒のワルツ3号。
しかし、庇うかのように黒魔道士達は黒のワルツ3号に集まり始めた。
「・・気にいらん。何も考えられないただの作り物が一人前に小僧を守ろうというのか?」
そう呟き サンダガを繰り出した。
一斉に飛んでいく黒魔道士達。
もうそれは飛ぶよりも落ちるといったほうが過言である。
落ちていく人形にはまだ目の輝きがなく、ただ落ちるのみ。
そんな光景を黙って見つめるしかなかった ビビは・・・・・・・・。
「う・・わぁぁぁぁあぁぁ」
そう言って身体が光りだした。
ぴんと伸びた帽子。
キラリと光るローブ。
「・・これは・・トランスですね・・」
呟いたリーズからは 黒のワルツに対する殺気というものを感じた。
「ダガー!」
突然ジタンが声を発した。
「は、はい」
「黒のワルツは俺達が何とかする。それまで舵を支えてくれ。これから危険は増えるだろう。でも今なら、まだ戻れる!
このまま国境の南ゲートに進むか、舵を戻して城に帰るか、ここはダガーが自分で決めるんだ!!
どっちにしてもオレがついてる! 船をふらつかせないように頼んだぜ!」
そして・・ 「フレア、ダガーを・・」
「まかしとけって!」
「わたしは・・・」
悩んだが もう決まっている。
自分の目的・・自分がしなければならない事を一つにして・・。
「気をつけて、ジタン!!」
決意を秘めた瞳はただ単に敵へ向かっていくジタンを見つめていた。
「Wブリザド!!!」
氷の粒が黒のワルツに降り注ぐ。
「ほう・・なかなかやるな・・ サンダガ」
「オルト!!」
リーズが放った光は黒のワルツへと飛んでいく。
「甘い!! ブレイズ!!」
桃色の渦がビビとリーズとスタイナーに攻撃を加える。
「わぁぁ!」
「これでおしまいだ!! サンダが-」
詠唱が終わる前に黒のワルツを一刀両断にする。
それはジタンだった。
一気に放った一撃は黒のワルツを死にしらしめる要因となった。
「ぐ・・・おのれ、オのれ、おのレェッ!我の存在理由ハ、勝ち続けル事のみ!!!」
そう言って逃げ出してしまった。
「・・・黒のナントカは何人いるのであるか!? キリがないのである!」
「今ので最後だと思いますよ?」
とリーズがさらり言う。
「何故そう言いきれるのでありますか!?」
「ワルツ・・テンポは4分の3拍子。だから3人だとおもいます。ほら いうじゃありませんか?行動するのは3度までって」
「は・・はぁ」
スタイナーとリーズが言い合っている間、ジタンは南ゲートがだんだん近づいてきているところを見た。
(・・・行くと決めたんだな!)
しかし現実はそう甘くは無かった。
「我の存在理由ハ勝ち続けル事のみ!!
我の存在理由ハ勝ち続けル事のみ!!
我の存在理由ハ勝ち続けル事のみ!!
我の存在理由ハ勝ち続けル事のみ……!!」
------
それは突然だった。
「進路反転であります~っ!! 姫様!今すぐ舵を戻してください!!
先の黒のワルツめが妙な飛空艇に乗って後方から迫ってくるのであります!
あれは、何をしでかすかわからん勢いでありますっ!!」
「ダガー、おっさんの言うとおりだ! アイツが迫ってきた!!全速前進で南ゲートに向かってくれ!!」
「いい加減な事を言いおって!ゲートが閉じたらどうするのだ!?」
「パワーだけのでっかい飛空艇が小回りの利く飛空艇をかわせるかよ!! あの3号を避けるのは無理だ!
だったら逃げ切る、閉じる前にくぐる! それに賭けよう!!おっさん! あのレバーで最大出力にしてくれ!!
ダガーは舵を今の位置で押さえてくれ!」
「はいっ!」
「この出力なら迷わず行けばきっと間に合う!!」
------
先ほどよりも狂った人形を見て、リーズはビビを促す。
「なんかきましたねー ビビ・・向こうへ行きましょう?」
「・・・・」
それでもビビは動かなかった。
落ちていった自分と同じもの。悲しくて苦しくて。
「ビビ・・気持ちはわかります・・でも今はそんな場合じゃありせんよ?
あの人形達の仇はフレアがしてくれますし・・ねっ」
「・・・・・・うん・・・!」
ビビは仕方なく、いそいそとダガー達の方へと向かっていった。
「よしじゃあやるか!!」
そうして詠唱を始めた。
「我の存在理由ハ勝ち続けル事のみ!!
我の存在理由ハ勝ち続-」
「うるせぇよ ただのブリキが」
そう言った後 繰り出す力。
「我はいとおき力 我は風なる崩壊 我を見 我の存在を現にせよ!! 大一閃!!」
そこはもう南ゲートの中だった。
そこが揺れたのは誰の所為でもない ただ一つの力が放った。
解き放った力は黒のワルツを破壊し、南ゲートに深い傷跡をつけた。
「・・・ちーと やり過ぎたかな・・」
フレアは呟いて後悔したが・・・後悔するのが少々遅かったようだ。
窓際から日がさしてき始めた頃・・・一人の少女が目を覚ました。
「ん・・・」
眩しさのあまり、目が覚めてしまった少女は あたりをきょろきょろとする。
4つあるベッド・・。
しかし、人の気配が無かった。
「ふあぁ・・」
思わず欠伸をしてしまうほど眠っていた事は明らかである。
森から・・あの霧から抜け出した後はどうなったのであろうか・・?
それよりもなによりも。ジタン ビビ ガーネット リズ スタイナーは何処へ???
少女が目覚めた場所は村の宿屋だった。ドアからひょこっと宿屋の亭主を見つめる。
どうやら眠っているらしく、ぐぅぐぅ という音がする。
「・・・・・・」
ついには亭主の所まで来てしまった少女。
「・・・・・よく眠ってるなぁ・・」
と ボソっと声を発した時。
「・・・・あ・・・すいません・・また眠っていました・・」
それが、客に対してする行動なのだろうか と考えてしまう。
「私の仲間は何処に行ったか知らない?」
そんな単純な言葉に亭主はびくっと身体を微妙に振るわせた。
そう少女には見えた。
「この村 ダリの探索に出かけましたよ?」
「ほう、ありがと」
(・・・・・)
少女が考える事はただ一つだけだった。
怪しい・・・。
単純に ただ仲間は何処に行ったかという言葉に反応し、
そして落ち着きを払ったかに言った「この村の探索」・・。
ガーネットは一国の王女だぞ?
それなのに探索とは・・・。
(怪しいにも程があるな・・・ん?)
少女の足元には一匹の猫がいた。
「なー」
「かわいいなぁ~」
「珍しいなぁ そいつ人見知りなのに・・ ほら穣ちゃん!小魚!そいつに餌を与えて欲しいんだが」
「分かった ありがとう!」
(よし成功! ちょっとお借りしますか!)
そう思って宿を取ってある部屋へと戻っていった。
(さてまずは・・無音(ノクターン)の結界からだな)
そう言って霧のような結界が張られる。
これで他人には猫と少女の話は聞けないようになる。
「なーなー」
「おぉ・・ごめんよぉ もうすぐやるから
瞳を知り尽くす獣の力よ・・・いざ主の元へと誘い尽くせ・・ ラフトーン!」
きゅん という音を立てた後、変化は起こった。
「な・・なにがおこったんや??」
動揺を隠せない猫。
「お 我ながらきちんと成功したなぁ」
「あんた一体何者や!!」
「私か? フレアというんだ」
「!!!!! フレアって・・・あの力の神 フレア=リヴァイス???」
「そう そのフレア」
「・・・・・・申し訳ありませんでした」
「畏まらなくてもいいから。 この町の事を全部言って欲しいんだけど。 君は知っているはずだ・・。あの亭主の反応の真実を」
「・・そこまで分かっているなんて・・分かりました、お話します。
この村は本来ならば大きな畑があったのですが、 アレクサンドリアの命令で・・というよりも この村の金儲けの事で 畑は無くなり、村の下で何かを作っているらしいのです」
「・・・村の下? なにを作ってるんだ?」
「人形です」
「人形???」
「そう、 黒魔道師団と呼ばれる『人形』をつくっているんです。 そして・・貴方方の連れの『人形』が・・村の者に捕らわれて・・」
「・・・それは ビビのことか?」
「・・貴方方の連れの一人がそう言っておりました・・ 多分その人です」
「・・・・・・ビビが『人形』・・・?」
そんなのありえないし、感情がこもっている人形なんて聞いたこと無い。
ましてや、今の技術でこんな物が作れるのだろうか・・・?
「まぁ、ありがとう。一応この村の探索にでも出かけるわ」
「・・・お気をつけて・・」
「元気でね!」
「は・・・はい!」
そう言うと、猫を亭主に返し、宿の外に出て行った。
(あ・・変な奴がこっちに向かってくるよ!)
(急いで隠れろ!後に大変なことになるぞ!)
「ん?なんだこれ」
フレアの目の前には でっかい樽があった。
「なんでこんなものがここに?」
がたっ。
樽が動いた。
「・・・・リズ?」
がたたっ
「フレアー・・助けてくださいー・・・」
「! フレアか!!」
「お・・お姉ちゃん・・?」
「・・フ・・フレアさん・・・」
「助けるけど、頭 下の方にしといて!! 上切り取って転がすから!」
そういって フェアリーソードを手にする。
ざんっ。
ぱかりと上が切り取られ、 ずてん と樽は横になった。
「大丈夫だったか?リズ」
「ええ・・ありがとうです」
「ダガー平気か?」
「ええ、なんともありませんよ?」
「ダガー???」
「そう、これから国境越えするから偽名で何とかすることになったんだ」
「国境越える事になったのか!」
「・・・やっぱり反対か・・?リーズは どちらでも と曖昧な事を言うし」
「リズ」
「はい?」
「この旅に付き合っちゃあいけない? どちらにしても、ダガーを守るといっちゃったけど」
「どちらでもかまいません。私はただフレアについていくだけです。フレアがいると、旅は面白いので・・」
「さすが、リズらしいや。 ということで一緒に国境越えするか-」
そう言った途端。
一つの雷がフレアたちに走ってきた!
集中された雷は一気にジタンたちの所へと降り注いだ。
「わっ」 「きゃっ」
「ふふふ・・・探したぞガーネット姫・・・」
そう言ったのは黒く不気味な頭に羽を持つ者だった。
「女王陛下が城でお待ちだ!」
「・・・お前ら、城の奴だったのか!?」
とジタンは驚く。
「??? 一体どういうことですか?」
「氷の洞窟でダガーさん達が倒れてた時、同じ者に襲われたのですよ」
といつものまったりとした口調はなく びしっというリーズ。
「お前達が・・・1号を? 我の名は黒のワルツ2号!1号などただ単にブリキであるに等しいわ!!抵抗など、考えるだけ無駄だ! さあガーネット姫-」
そう言い、ダガーに近づいていく。
それでもダガーは抵抗をする。
「嫌です!私は帰りません!!!」
「従わないつもりか? 辛い目に遭うぞ?」
ダガーの前に立ちはだかるのは 何処からか走ってきたスタイナーだった。
「待たれよ!姫様をお連れするのはこのスタイナーの任務である!」
「ククククク! そんな事知るか!我が任務の邪魔はさせん!!邪魔者は死ね!」
「あー・・・あのさー・・・」
そういうのは ほぼ呆れた状態のフレアだった。
「まぁ・・ちょっと身体動かしたいから、皆 防御でもしてくれないかな?」
そういって身体を伸ばす。
「フレア・・?」
「それにジタン達でも雑魚の奴だし-」
「なんだとっ 貴様! 何者だ!!」
「ん?そんなのいなくなるブリキに教えるつもりは無いよ?」
その『ブリキ』という言葉で一気にバーサク状態になる黒のワルツ2号。
「ぶりきだとぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」
そういって無詠唱でサンダラを撃つ。
「遅い遅い だからブリキだっていったんだよ」
そういって黒のワルツ2号の懐へと走っていった。
それはまさしく、獣のような素早さで。
「覇斬」
フレアがそう言った瞬間。
黒のワルツの身体は分解され、見事にチリとなり消えていった。
「・・・・一体何が起こったのでありますか・・」
呆然となった一同。
一人だけ「流石フレアです!」と絶賛しているのがいるが・・。
「うーん、なかなか好調だな」
とりあえず・・・
「ジタン」
「?」
「これに乗っていかないか?」
そういい、フレアが指差したのは偶然にも似た形で放置された飛空挺。
「飛空艇ならリンドブルムも遠くありませんわ!いえ、遠くないわ!」
「で・・・リンドブルム・・ってどこ?」
そう疑問に思ったフレア。
「アレクサンドリアの国境を越えるとリンドブルムという国に入るそうなのです。そこをどうやって抜けるか考えていましたが・・」
そう言い、リーズは飛空挺を見つめる。
「これならすぐにでも抜けれると思いますね」
「飛空艇に乗せてもらえるよう頼んでくるから、待ってて欲しいんだけど・・」
「じ、自分が頼んでこよう!」
意外にもスタイナーがそう言ったのである。
珍しそうに見つめるジタン。
「へぇ、おっさんが? どういう風の吹き回しだ?」
「ひ、姫様の事を思えばこそである! 貴様のためではない!!」
そう言って飛空挺の方に走り去っていってしまった。
思いつめた風にダガーは言う。
「・・・ジタン、この飛空艇は本当にリンドブルムに行くのでしょうか?」
「間違いなくアレクサンドリア城行きだろうな」
「どうして・・!? ジタンも『乗ろう』って・・」
「大丈夫! オレが何とかするよ!それよりも・・」
フレアとリーズを見つめる。
「君達は何で付いて来るんだ?」
前々からいいたかった言葉。
何故、こんなに巻き込まれるのがすきなのか・・・。
「まぁ・・」
フレアとリーズは顔を見合わせる。
「おもしろそうですから というのが私たちの本性ですかね」
と、にっこりと微笑んでいったのはリーズ。
その言葉を聞いてジタンは絶句し、思わず膝をついた。
「・・・氷の洞窟??」そういったガーネット。
その言葉に頷くジタン。
「その洞窟から”霧”の上に出る事が出来るかもしれないんだ、行ってみよう!」
そう言ったが、震えるガーネットを見、
「怖いか?」
「・・・はい」
「大丈夫ですよ~私がいますし」
と 自信ありげにいうリーズ。
そんなリーズをガーネットはほほえましく見えた。
「・・・やけに自信満々だな・・」
(そんなことない・・むしろ・・・)
ちらりと小さな少女を見つめる。
あれから1日が経っても、彼女は目覚める事無く永遠に眠りつづけていた。
(もう迷って入られない・・・私も『戦う』と言う事を決意しなければ・・・)
------
「・・・わたくし、聞いた事があります。氷に覆われた美しい場所だそうですね」
「ボクもおじいちゃんから話を聞いただけなんだけど・・。ここは”霧”の下から上まで続いてる洞窟なんだって」
入り口を見て口をあけたのは、ガーネットとビビだった。
「素晴らしい! ビビ殿のおじい様は博識ですなっ!”霧”を脱した暁には、是非とも感謝の言葉をお伝えせねば!」
「おじいちゃんからはいろいろ教えてもらったけど。もう死んじゃったんだ・・・」
思い出す・・ビビ。それは初めて「死」を味わった者しか分からない事。
「そ、それは・・・ 知らなかったとはいえ、失礼致した」
「ううん、気にしなくてもいいよ」
「ま、とにかく行ってみるしかねえな・・・」
そう言って氷の洞窟に足を踏み入れた。
想像を遥かに超える寒さと、創造されたいくつもの自然の芸術に
全ての者が圧倒される・・・それが氷の洞窟。
「まぁ、 何て美しいところなのでしょう。噂には聞いていましたが、これほどまでに美しいとは・・・綺麗な花・・ 何て言う名前なのかしら?」
「姫様! 無闇に触ってはなりませんぞ!」
しかし、スタイナーを無視し、氷の花を触ったのはリーズだった。
「これは珍しいですねぇ・・・」
そういってぽきんと花の根を割る。
「お・・おい!!」
「大丈夫ですよ?これはアイスシードといって 高熱を下げる植物ですから」
「どうでもいいけどさ、寒いんだし、早く行こうぜ・・・」
流石に寒くて もうどうでもいい と考えてしまったジタンであった。
吹雪く風がどんどん、強くなっており皆の足取りも重くなっていった。
ざくざくざく・・・。
「・・・?」
「なんか眠くなってきてしまった・・・ふあぁ・・」
「ぼ・・僕も・・」
そういってスタイナーとビビは倒れてしまった。
「おっさ~ん!ビビ! 大丈夫・・ じゃないな。ふたりとも何やってんだよ・・ おっさん!寝てる場合じゃねぇだろ! ビビ!!」
そう言って体を揺するが眠りが深いのか、
「・・ちっ、ダメか」
全く起きる気配が無い。
ふと、ガーネットを見る。
「あっ! ガーネットも! ガーネット~? ・・こっちもダメか」
「眠りの風鈴・・・ソーンウィンド」
「?」
唯一仲間の中で、眠っていなかったリーズ。
(確か・・常に風を身体にまとわりついているといってたな・・それのお陰か・・)
「魔法アイテムの一つです。それを1回でも鳴らせば、風に乗って眠りの花粉が飛び散り・・・眠らせる というものです」
「何で俺は寝なかったんだ・・?」
「これは仮説ですが・・多分ジタンさんは眠りの耐性が在ると思うんです。まぁ自分自身のことですのであなた自身で考えてくださいね」
「へぇぇ・・まぁ・・・うん」 と何かキレ気味のリーズに対して引いてしまうジタン。
その時、鈴のような音が聞こえてきた・・。
「! リーズの言っていた風鈴はあれの事か!!」「らしいですねぇ~」
そう言って二人は走っていった。
「チッ、死んでなかったか・・。そのまま眠ってしまえば苦しまずに済んだものを!」
上の方にとんがり帽子を被り、羽を生やした怪しい者がいた。
「何者です!?」
「私の名は 黒のワルツ1号!!」
「変な名前ですね~?」
微笑しながらのほほんと言う少女。
「なんだとっ!小娘が」
馬鹿にされて少々きれぎみな 黒のワルツ1号。
「この吹雪を起こしてるのはお前なんだな?」
「ククク・・ そういう事だ・・」
ちりん と良い音がなったとき、それは現れた。
「氷の巨人、シリオン・・ 出でよ!」
それはまさしく氷だけの巨人。なにやらトドのような姿をしている。
「おおきいですね~?」
「ただ大きいだけじゃないぞ? 行け!シリオン!」
そう言うと、氷の巨人 シリオンから冷たい息吹が吹き出してきた。
それと共に打ち込んでくる黒のワルツ1号。
『ブリザド!』
「・・!リフレク!」
そう言ってリーズは軽々と打ち込んできた魔法を吹き飛ばす。
「ふう・・どうしましょうか?」
「・・?どういうことだ?」
「シリオン・・でしたっけ。あの魔物だけはどうも、氷を吸収してしまうらしいですね」
リーズのリフレクで返したブリザラはシリオンに当たったが、全く効果が無いらしく 寧ろぴんぴんとしていた。「なら狙うのは・・」
「・・・・・・!分かった!」
そう言ってジタンはナイフを振り始めた。
それを見、詠唱を始める。
(氷といったら火・・しかし、私は火は扱えない・・ ならば!!)
「力を占める者よ・・求めあらん! フェイスロード!!」
そう言って火の灯火が現れ、シリオン 黒のワルツ1号に襲い掛かる!!
「うわぁ!!なんだこれは!!」
「色です」
そうキッパリ言った。
「いまです!ジタン」
そういわれて咄嗟のうちに 技が出た。
「フリーエナジー!!」
そういって黒のワルツ1号を一刀両断にした。
「ぐ・・・・」
「見境もなく我は願う・・・光と結晶と共に、解き放て リドネリィ・シト!!」
そう言って、光が満ち溢れた。
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「や~みなさん、無事だったかい?」
「おい、貴様! いったい何が起こったのだ?」
(何とか隠してくれないか・・?あのおっさんまた五月蝿いと思うぜ?)
(同感ですね・・)
ジタンの目と、リーズの目でやり取りをする。
「いや、大した事なかったよ。なぁ!リーズ」
「そうですね~なんともありませんでしたよ?」
「貴様ら、何か隠してるだろう?」
「・・・何もなかったって言ってるだろ?」
「・・貴様、ひょっとして姫様に何かしたのではあるまいな?」
「おいおい、おっさん勘弁してくれよ・・」
困り果てるジタン。
それを見て、ガーネットが言う。
「スタイナー、何もないと言ってるんです。ジタンに失礼ではないかしら?」
「くっ・・ わかりました。」
「まあ、皆さん無事で何よりです。先を急ぎましょうか。」
そう言って直ぐそこに見える出口へと急いで歩いていった。
(久しぶりに戦いましたが・・あれは作り物ですねぇ。何とかしてフレアを目覚めさせないと・・・)
と考えながらも もはやあまり戦いたくない と思い、ちらりといまだに眠っているフレアを見たのであった。