周りを見渡してみた。
フレア そして頑固なおじさん スタイナーが倒れていた。
「フレア!スタイナーのおっさん!」
「・・・ん。ここは・・・ひ・・姫様は・・」
「ここにはいないようだぜ? おっさん」
「姫様に万が一の事があったらただでは済まさんからな・・・!!」
「それはいいとしてだ。フレア・・起きろ」
「ん・・・・・・・うん・・・」
そう言ってフレアは起きるが、ものすごく眠たそうな瞳をしていた。
「ああ・・・・ジタン・・リズは・・?」
「お嬢ちゃんは知らないなぁ・・」
「まぁ・・・リズは・・大丈夫・・うう・・・睡魔が・・」
「眠たそうだな・・どうしたんだ?」
「うん・・・? 魔力・・の・・使い・・すぎ・・・で・・ふわぁ・・」
そう言って大きな欠伸をする。
「魔力の使いすぎ?」
「うん・・・まぁ・・それは・・-」
そう言ってフレアは寝こけてしまった。
「お・・おい!起きろよ!!」
そして一つの悲鳴が聞こえた。
「ん!?あの声は・・ガーネット姫!?」
ジタンは森の奥へと入っていこうとする。
「待たれ!フレア殿はどうする-」
「おっさんが抱いてな!」
「・・・・・」
そういって小さな少女をお嬢様抱っこをして持ち上げた。
「・・・軽い」
森の奥へと進むと、ビビとリーズが居た。
しかし、そこには・・・。
「た、大変だ!」
「何だあいつは!?」
見ると、巨大な植物のような魔物がまるで鳥籠のように蔓を使いガーネットを捕らえていた。
フレアを抱きながらスタイナーも駆けつける。
「ひ、姫様に何をするつもりだ!!」
「話が通じるような相手じゃない! リーズ!いくぞ!」
「ええ。ガーネットさんはあの魔物に体力を吸われているみたいです。なんとか私の回復魔法で命に別状はありませんが・・・」
「? リーズ」
「私、あまり攻撃的なことは好きではないので・・」
「・・・・んなこといっているひまはないだろ・・」呆れてモノが言えないジタン。
「だからこそ、ビビさんがいるじゃありませんか?」
「ええっ ぼ・・ボク!?」 突然呼ばれて驚くビビ。
「貴方、ファイアの魔法を使ってましたよね?あの時」
「う・・うん」
「なら、ばしばし使ってください!本当だったらフレアがいたらこんな敵はあっさり殺すことはできますが・・」
そういってスタイナーに抱かれている小さなエルフを見る。
敵が居るというのに調子よくすやすやと眠っているフレア。
「分かった・・僕やるよ!岩砕き、骸崩す、地に潜む者たち 集いて赤き炎となれ! ファイア!」
そうビビが唱えた時 どこからともなく火が現れ、敵に直撃した。
それに沿って、ジタンが攻撃をする。
しかし、敵は火が弱点なのかはよく分からないが ガーネットを連れて逃げていってしまった!
「姫様~、姫様~っ!!」
「何処へ行ったんだ!?」
さすがにリーズも今回はお手上げのようで。
「むー・・・分かりませんね・・・。この霧さえなければ、風で探し出せたのに・・・。こういう時にフレアがいれば・・」
「そういえば フレア、『魔力の使いすぎ』だとかなんとかいってたけど」
それを聞いて、リーズは重いため息をついた。
「・・・しょうがないですね・・一旦戻りま-」
そうリーズ言った刹那、後ろに魔物が居たのを感じた。
しかし、時既に遅し。
魔物が怪しげな煙を吐いてきた。
「危ないっ!」
「うわぁっ!」
「ぐおぅ! 姫…… さ…… ま……」
そう言って、ビビとスタイナーは倒れてしまった。
それに加えての攻撃。
「・・・まずい。逃げましょう!行方を失った風たちよ・・・我らにさらなる危機の回避を! ダテレポ!」
そういって リーズ・ジタン達は、不時着した劇場艇に逃げていったのであった。
------
待っていたのは、バクーだった。
「そいつぁ無理だ。 お前も見たろ、船の周りは霧から生まれたバケモノだらけだ」
その言葉でジタンはむっとする。
「あんな奴ら何て事ない。オレ達が揃って行けば平気さ!」
「それはそうかも知れねえ。でもケガ人はどうするんだ?」
「一緒に連れてきゃいいだろ?」
「そんじゃあ、襲われた時に動きが取れねえで、やられちまうぞ。ガーネット姫にゃ気の毒だがよ、仕方ねえ、仲間の方が大切だ」
「畜生ッ!!」
そういって扉を蹴った。
「ケガ人がみんな回復するまでタンタラスはここで待機すんぞ!!身勝手な行動は許さねえぞっ!ジタン!」
「・・・・女を見捨てるなんて、見損なったぜ」
「俺の答えは変わらんぜ。気に入らねえなら、タンタラスを辞めんだな」
そういってバクーは部屋を出て行ってしまった。
「畜生・・・!でも俺はあの子を見殺しにはできないんだ・・・なんでかは分からねぇ・・でも・・救いたい・・」
「・・・懲りねえな、お前も。今度は何をしでかすつもりだ?」
そう言ったのはいつの間にかいたブランクだった。
「ガーネット姫を助けに行くのさ。あのおっさんもフレアもリーズも一緒に連れて行く」
「正気か? 森の主ってのがどんな奴かはわからねえんだぜ?第一、ボスがそんな勝手な事、許す訳がねえ。」
「わかってるさ・・・」
しかし、ジタンの瞳は諦めを見せない。
それをみてブランクは、舌打ちをした。
「ったく、お前の思い切りの良さには相変わらず嫌気がさすぜ。とっととボスと話つけてきな。モタモタしてたら手遅れになるぜ」
「ありがとう・・ブランク」
「アレクサンドリアのおっさんとちびは縛り付けておいて お嬢ちゃんが調合した薬を飲ませておいた。ちょっとは不安だが・・お嬢ちゃんによると二人とも体力は回復しているってよ」
それを聞いて安心したジタンは 頭のバクーの元へと走っていった。
------
人の気配がした・・・。
ずっと眠っていた少女はついに目を覚ました。
「ん・・・・リズか」
「はい・・・フレア、調子はどうです?」
「どうもこうもないだろう・・まだだるさが残ってるし」
お陰で目が覚めたけどね と微笑するフレア。
「さすがにウォームは使っちゃいけませんよ・・!人一人守るのならまだいいとして、劇場艇全体なんて-」
「分かってるって・・」
「分かってるのなら何故使ったのですか!」
どんどんとリーズは声を張り上げていく。
「へへ・・リズに心配されるなんて思ってもいなかった」
そして言った言葉。
「分かってるのなら何故使ったか?決まってるだろ?守りたかったからさ。あいつら全員を」
さすがにここにいる奴らを見捨てるわけには行かないと思ったのだろう・・。
全くこの人はお人よしなのだから・・。
でも、「・・・・ここで待っててください。あなたは今度魔力を消耗したら-」
「わーかってるって! だから私もついてくから!」
これ以上言うことを聞いてくれないと思ったリーズは、あっさり敗北を認めた。
「・・・はぁ・・分かりました。代わりにこれをつけてせいぜい頑張ってください」
それは星がたくさんついていたブレスレットだった。
------
ジタンは意を決めて 頭のバクーの元へといった。
「待ちくたびれたぞ。来ねえかと思っちまったじゃないか・・・やっぱり助けに行くんか?」
「あいつと約束したからな。最後までちゃんと誘拐してやる。」
「ガッハッハ! 理由なんて聞いてねえよ。 あの姫、なかなか美人だから、おめえが惚れるのも仕方ねえ! 理由なんて、それで充分だ。んで、覚悟は出来てんのか? タンタラスの掟は絶対だかんな。相手がお前でも手加減しねえぞっ!!」
「ああ、わかってるさ」
「よ~し、思いっ切りやんぞ! 隣の貨物室で相手してやらぁ!!」
「いつでも来い!!」
「本気で行くぜっ!」
ジタンはバクーに向かっていくが、流石にナイフと盗賊剣とでは差があるのか、
「ガハハハ、くすぐったいじゃねえか。その程度じゃ姫は助けられんねーぞ!」
とバクーは余裕綽々だ。
しかし、
「俺は絶対にガーネットを助ける!!」 そう言って、バクーの盗賊剣を跳ね除けた!
床に転がる、盗賊剣。
その盗賊剣を見て、くつくつとバクーが笑う。
「・・・おめーの勝ちだ、ジタン。 いい腕してやがるぜっ! 結構痛かったぞ!! 姫様の事はよろしく頼むわ!ガッハハハハッ!」
そう言い、愛用の盗賊剣を持ちバクーは部屋を後にした。
「手加減するなら最後までしてくれよ・・・」
------
その頃、スタイナーはガーネットの人形をじっと見つめていた・・。
(このような醜い人形に姫様の名前を付けおって・・・。それに姫様は16歳である!それにしても、不細工な人形だ・・・。姫様はもっと清らかな-)
「いい歳してお飯事か?」
後ろを振り向いた時には遅かった。
そこにはいつの間にかジタンがいたから。
恐らくはジタンの瞳には人形と戯れている酷いおじさんが映っているのだろう。
「な・・・何を言うか、貴様~っ! 自分は姫様の事を案じておったのだっ!!
貴様らが誘拐などと言う不届きな事を企むから、このような事になったのだぞっ!
姫様に万が一の事があったらただでは済まさんからなっ!!」
微妙に自分をフォローしているスタイナー。
それを まぁまぁ と抑えようとするジタン。
「そうカッカしなさんな。これからオレはガーネット姫を助けに行く! おっさんにも来て欲しいんだけど・・・。どうだ、大人しくするって約束するんなら連れてってやるよ!」
「貴様ら盗賊の考える事だ、また良からぬ企みでもあるのだろう!」
「心配するな。オレがひとりで決めた事だ。タンタラスの行動とはまったく関係ない。ガーネット姫を助け出す。ただそれだけさ・・!」
「・・・その言葉に偽りはあるまいな?違えるような事があればその場で貴様を斬り捨てるぞ!!」
「OK~、それじゃ決まりだな。頼りにしてるぜ、おっさん!」
「よいか! 決して貴様を許した訳じゃないからなっ!」
「わかったって・・・」
「よし、ならばあの黒魔道士とフレア殿、それにリーズ殿にも来てくれるよう頼もうではないか。」
「黒魔道士・・ビビの事か・・」
「うむ、ビビ殿の黒魔法は、あの化け物にも効果的であった。関係のない者を巻き込みたくはないが、今は姫様の命が懸かる一刻を争う事態・・・。姫様をお助けするためにはビビ殿の力が絶対に必要である!それにフレア殿とリーズ殿もついていくといった感じであったが・・」
「よし、そういう事なら早速、ビビに話に行こう」
そう言って階段を下りていくとビビがいた。
「待たせたなビビ、お姫様救出作戦開始だ!」
ほっと撫で下ろすビビ。
「良かった、気をつけてね!」
「お前も一緒に来てくれ」
「えっ、ボクが・・!?ボクなんかついてってもきっと何の役にも立たないよ・・」
「いや、ビビ殿の黒魔法は森のモンスターに有効であった。こんな半端者の盗賊よりずっと頼りになるのである」
指で指されたような気分になった ジタン。
「で、でもボク自信がないよ。さっきだって背後を取られて攻撃を受けたし・・」
「姫様のため・・いや、アレクサンドリアのために、ビビ殿の力を是非貸していただきたい!」
「責任を感じるなら自ら行動する。それが男ってもんだろ、ビビ? さぁ、化け物は待っちゃくれないんだ。 早くガーネット姫を助けに行ってやろうぜ」
そういわれたので 純粋なビビは、
「う、うん。足手まといにならないように頑張るよ」
------
「待ちくたびれたよ・・」そう言ってきたのはフレアだった。
「お前・・調子はいいのか?」とジタンが不安そうに言う。
「まぁ・・なんとか。リズがこれをくれたからね」
キラリと光るブレスレット。
「くれたのではなく貸してあげたといったほうがいいのでは?」
後ろから言ってきたのはリーズだった。
「あまり無茶をしないで下さいよ? フレア」
「大丈夫だって!まぁなんとかなるっしょ!」
そして5人は 再び森へと入っていった。
------
しかしもう一人 危険な森へと入っていこうとする者がいた。
「ほんとにいいのか?」
「心配すんじゃねえ、俺達も準備が出来たらすぐ出発すっからよ。その大陸図持ってきな。リンドブルムまではまだ遠いぜ」
「わかった! またアジトでな。」
「おう!」
それはブランクだった。
------
森の中へと進んでいく5人。
しかし、それを妨げる動く植物がいた。
それをばっさばっさと切っていく。
「動くってことは・・生きているのですかねぇ?」
「たぶんそうじゃないかなぁ・・」
さりげなく言ったビビの一言で、
「でしたら私は回復役で」
とかなり主調するリーズ。
「・・・攻撃しろよ」
とウンザリと言うのがジタンだったりする。
(まぁ・・回復役のほうが 直ぐに癒されるからいいんだけど・・)
と毎日のように顔を見合わせていたフレアは思った。
(大体リーズが攻撃するのは私に何かあったか・・・ぐらいだけど)
そして奥に到着。
紅い植物の幹がぴきぴきと音を立てていた。
その中心にいたのが-
「姫様~~~っ!!」
捕らわれていた ガーネットだった。
「こいつが親玉か!」
そういってナイフを出す。
「貴様は一切手出しするなっ!アレクサンドリアの姫が盗賊に助けられたとあっては!」
「ひとりで手に負える相手か!!来るぞっ、ビビ・フレア・リーズ!!」
そういって紅い植物の魔物(プラントブレイン)に近づき、攻撃を仕掛ける。
バチバチバチ・・・。
フレアが攻撃を仕掛けた後、そんな音がした。
「!」その音に気付いたが一足遅かった。
バチィ!
そう言って雷が落ちた。
しかし、
透明なガラスのようなモノがそれを妨げた。
リーズのバリアが張られていたのだ。
「ふう・・さんきゅ リズ」
「貴方は無理をしてはいけないので初級のフェイでもかけといてください」
「言われなくてもやってるよ フェイ!」
そういって火の玉がプラントブレインに当たる。
しかし、しかしだ。
考えてみて欲しい。
今 戦っているのはジタン・フレア・ビビ・スタイナーである。
回復・援護系魔法を唱えているのはリーズだ。
そしてどんどんとプラントブレインに生命を吸収されるガーネット。
リーズの回復では何とかなっているのは事実だが・・・。
(このままでは いつかはガーネット姫が・・・)
そう思い、皆焦り始めていた頃だった。
「危なっかしくて、見てられねーな!退いてな、俺が手本を見せてやる」
と後ろから突然いってきたのは、ブランクだった。
皆の手が一気に止まる。
あれだけ 無責任な事を言っていた人が今まさにここにいるとは、
よほどではない限り考えられないのだからしょうがないと言えばしょうがない。
「こらこら!お前達も止まってないで攻撃しろよ!?」
そういって攻撃を再開した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「姫様、お気を確かにっ!!」
「リーズさん、あの調合薬持っているか?」
「もってなくても大丈夫ですよ~」
そう言って詠唱を始めた。
「暮れう無き力を定め ここに浄化と未知の力を目覚めさせん! ラリトス!!」
すると、どんどんとガーネットの顔色がよくなってきた。
「すぐに良くなりますぞ」
「これで少し休めば大丈夫だね!」
とホッとしたのはつかの間。
がさがさ がさがさ がさがさ がさがさ。
一気に騒ぎ始める森。
「クッ、次は何だ……!?」
そう言ったブランクの目には最悪なモノが写った。
突然植物の魔物が大量に出現したのだ。
「だめだ、囲まれるぞ!!」
「リズ・・・やっぱり私は見ていられないよ・・・」
そう言うと植物たちの前に立ちはだかった。
「意とも無き闇を貫く糧の者たち 我の名を示し、火となれ!! フレアっ」
一気に森に火が広がっていく。
しかし、不思議な事に それはジタンたちにとってはそんなに熱くは無かった。
ということはこの炎は幻影なのか・・・一瞬そう思ったが植物たちは怯んでいるようだ。
それでも植物たちはめげない・・・。
ぱきぱきぱき。
音がした。
絶対的に植物たちが出せない 出せる筈も無い音が。
「な・・・何の音だ?」
「逃げましょう・・嫌な予感がします」
そう言って逃げ出した6人の瞳には・・・森の奥から植物の魔物諸共、森が石化してくる様だった。
------
はぁはぁはぁはぁ。
どんなに頑張って走っても道連れ的な植物たちには勝てなかった。
魔物に追いつかれ、その鋭い蔦でジタンを絡めようとする。
その時ジタンは横から衝撃を受けた。
ジタンは後ろを見た。
ジタンが衝撃を受けた理由・・・。
身代わりに捕まっているブランクの姿で直ぐにわかった。
「ブランク!!!!」
「いけっ ジタン!」
そう言って投げつけてきたものは一つの地図だった。
その地図は地面をころころと転がり、その転がりバウンドしている地図を手に入れ、握り締めながらジタンは必死に走った。
-----
「余計な事しやがって・・・ブランク・・・!」
森は誰の侵入も拒むかのように入口付近を蔦が絡み合い、そして静かに石に姿を変えてしまった。
ブランクもまた、森の奥で変わり果てた姿になってしまっただろう・・。
静けさが・・・5人を襲った。
------
「大丈夫かな、お姫様・・・」
ビビが不安そうに言う。
ここは魔の森のすぐ側付近。
しかし、魔の森はというと相変わらず静かな音を立てていた。
「大丈夫・・だって・・・・リズの・・回復・・魔法・・うーん・・」
無理でも目を開けてようとするフレア。
目の周りをごしごしとさせる。
「どうした?フレア」
「・・・おかしーなぁ・・ものすごく・・睡魔・・・が・・・・」
フレアは、そう言ってまた寝てしまった。
「お・・おい!!」
「おかしいですねぇ・・きっちりとスリースターズはフレアがつけてあるというのに」
そう言い、眠りこけてしまったフレアを見つめる。
「すりー・・すたーず?」
「魔力を制御する 魔法アイテムです。これさえあれば、フレアは絶対眠れないと思ったのに・・・・」
うーん とひたすら悩むリーズ。
「この霧・・・ですかね?」
「霧・・!?でも俺らは全く眠らないぜ?」
「多分、元々フレアが霧に弱かったのでしょうね。彼女はチカラを沢山持っていて、そういう気候やら汚染やらにはかなり敏感ですし」
「じゃあ何でリーズは寝ないんだ?つーかチカラってなんだよ」
「チカラはチカラですよ。詳細は言えませんが。私は風の力で常に自分の身体をガードしてますからこれぐらいなら平気です」
まぁ・・ と言葉を続けるリーズ。
「もう一回フレアを持っていてもらいますかね?おじさん」
「お・・・おじさんじゃないですぞ!!」
「う、うぅ・・・ん・・」
そう言って起きたガーネットに対し、「ガーネットさん・・調子はどうですか?」と聞くリーズ。
大丈夫です と少々顔色が悪いが言うガーネット。
「・・スタイナー? わたくし、 助かったのですね・・?」
「命に代えても姫様をお守りするのがこのスタイナーの務めであります!」
「姫さんを助け出したのはオレの腕とビビの黒魔法だぜ!それにフレアの魔法とリーズの回復魔法が無かったら・・・」
そしたら 皆死んでいただろう・・・。
「皆様に感謝します」
そう言ってガーネットはお辞儀をした。
「フレア殿、リーズ殿、ビビ殿はともかく、
そ奴にそのようなお言葉は必要ありませぬ!
そもそも、このような事になったのは貴様が姫様をさらった事が原因!!
それを後で助けたからと言って、偉そうにするのはまったくお門違いである!よいか、城に戻ったら貴様など!」
「ジタンさんも頑張ってましたよ?それなのに貴方はそれを無効になさるおつもりですか?」
とびしっとリーズが言う。
それに続いて言うガーネット。
「スタイナー・・・わたくしは自分の意志でアレクサンドリア城を出たのです」
「そう、そこへガーネット姫をさらいに来たオレ達タンタラスと意気投合したって訳さ」
「な・・・!?」
「この方が言った通りです」
「まっ、そういう訳だからさ、仲良くやっていこうぜ、おっさん!」
と肩を叩こうとしたら回避されたジタン。
「貴様とて知っておろうが、この”霧”の呪われた謂れを!!この”霧”特有のモンスターを!心身に異常をもたらすという話を!姫様、このような危険な場所からは一刻も早く離れるべきであります」
「無茶言うなよ、おっさん!目が覚めたからって、まだ彼女の体力が回復した訳じゃないんだぜ。それにフレアとリーズはどうするんだよ?」
特にフレアは眠りに陥っている始末である。
「貴様の意見など聞いてはおらん!!」
「何処から”霧”の上に出るつもりなんだ?この一帯は高い崖に囲まれた低地だろ? 南ゲートと北ゲートのアーチも今は閉鎖されてるって聞いてるぜ?」
「・・・」
「宛て、無いんだな?」
「うぐぐ・・」
「姫は歩けない程に弱っているんだ。おっさんだってフラフラだっただろう?宛ても無く出発するのはかえって危険なんじゃないか?」
「貴様の指示は-」
一切いらない という前に、
「スタイナー! ガーネット姫を守るのは誰の務めだ!?」
「それは当然、王宮騎士の自分であるっ!!」
と急にしっかりと発言し、周囲の反応に気づき、「仕方ない…最低でも姫様のお体が回復するまで、ここはこのスタイナーが守るっ!!」と渋々言うのだった。
「そのほうがいいですね・・。フレアがいつ起きるのか分かりませんし。このままここに滞在しても状況悪化につながっていくように思えます」
「それじゃ、スタイナーのおっさん、よろしくさん。オレ達は上へ出る方法を考えようぜ」
と言い、ジタンとビビは地図を持って歩いていってしまった。
「もう歩けるようになったのですか?」
「ええ、リーズさんの回復魔法のお陰です・・」
「流石に回復魔法が効くのは早いですねぇ」
慎重で実行能力を持っているジタンに全てを任せ、ほのぼのと彼女たちは話す。
「魔の森から無事出られたのはジタンさんのお友達のお陰だと-」
「ブランクさんの事ですね?」
こくり と頷くガーネット。
「早く助けてあげなければ・・・!」
「すぐには助けられない。石化を解く手立てがないのです」
「でも貴方の回復魔法で・・・」
「石化と言うのは何種類か分けられるものです。
たとえばコカトリスのように元々体から出ているもの等は何とかエスナで直せますが・・・この魔の森で発生した石化はかなり異常な物らしいです。なので今の私には無理なのです・・」
「・・・そうですか・・・」「それに今、フレアが倒れている以上、早めにここから脱出しないと・・・」
後々大変な事になりそうですね とリーズは微笑した。
(そうしなければフレアは一生このままでしょうね・・・。まさかここで「破壊の力」の副作用が出てしまうとは思ってもいませんでしたが)
と、心の中でリーズは呟いたのだった。
「ほらほら・・もうすぐ始まりますよ~」
「Dの15・・ここだね」
そう言ってフレアとリーズの二人はシートに座る。
だが二人の表情はまさに裏表。
フレアはなんだか調子が悪い顔をしていて、リーズは清々しい顔をしていてとても気持ちよさそうだ。
そんな中・・・劇が始まる。
それが旅の始まりであるのを知らずに・・・。
「さあて、お集まりの皆様!今宵、我らが語る物語は、遙か遠い昔の物語でございます。
物語の主人公であるコーネリア姫は、恋人マーカスとの仲を引き裂かれそうになり・・・。
一度は城を出ようと決心するのですが、父親であるレア王に連れ戻されてしまいます。
今宵のお話は、それを聞いた恋人のマーカスがコーネリア姫の父親に刃を向けるところから始まります。
それでは、ロイヤルシートにおられますブラネ女王様も、ガーネット姫様も・・・。
そして貴族の方々も、屋根の上からご覧の方々も、手にはどうぞ厚手のハンカチをご用意くださいませ」
「ですって。いちよハンカチ出しときましょうか フレア」
「・・・・・」
ますます顔色が冷めていく状態のフレアであった。
そして劇は始まった。
「父を殺され! 母を殺され!そして、恋人と引き離されたマーカスよ!」
「おお、驚くも不仕合わせなマーカスよ!これからお前は何を希望に生きてゆけばよいのだ!」
「こうなれば我が友の為!憎きレア王の胸に烈火の剣を突き刺してやろうではないか!」
「オォーッ!」 「オォーッ!」
突然火が登った。
・・これも演出らしい。
「助太刀に来たぞ、相棒!!」
「手出しをするでない!!」
「そうはいかぬ! 俺もレア王には兄弟を殺されているのだ!!」
「ええい、下がれ下がれ、無礼者!我が野望の行く手を塞ぐ奴は誰とて容赦はせぬぞ!余に刃向かう奴は、この闇夜の露と消してくれるわ!!」
「レア王よ、我が友の心の痛みを受けてみよ!我が友の心の悲しみを受けてみよ!!」
「待てっ!」
「何故止めるっ、ブランク!!」
「ジタンよ、冷静になってよく考えてみろよ。シュナイダー王子とコーネリア姫が結婚すれば、ふたつの国は平和になるのだ!」
「笑止千万! それですべてが丸く収まれば、世の中に不仕合わせなど存在しない!」
「こうなれば、いざ勝負!」
「望むところだ!!」そういってチャンバラを始めた。
しばらくの間無言になりながらフレアはぼぉ・・・っと見ている。
「この勝負は、お預けだっ!」
「そうは、させるか!!」
そう言い、走り去っていった。
1幕目は終わったようである。
「ちょっと・・お手洗い行って来る・・」
そういってフレアはよろよろと会場を後にしたのだった。
(・・・・無理やり連れてきちゃったけど・・フレア大丈夫なのでしょうか?)
こういう所は嫌いだといっていたフレア。
流石に今回のはきついのだろうと少々苦しくなるリーズであった。
「うう・・・」
完璧に気持ち悪くなってしまった。
さらに、フレアには酷い広さの城。
「なんで・・はぁ・・こんなにお城が広いんだ・・ふぅ」
そう呟きながら、完全に道に迷ったフレアはついには劇幕裏まで来てしまった。
その時だった。
「大変でおじゃるよ!」
「大変でごじゃるよ!」
後ろには道化師がいたらしく。
「?? おじゃる?」
とかなりリアルに言ってしまったフレア。
しかし2人の道化師は気付かないのか。
「一大事でおじゃる~!!」
「ブラネ様に怒られるでごじゃる~!!」
と慌てたように言っている。
(ブラネ様・・ああ・・あそこの最高級のシートにいた貴族か・・ってそれはいい・・として)
「急ぐでおじゃる!」
「急ぐでごじゃる!」
「ちょっと待て・・・!」と知らない奴を止めるフレア。
「だれでおじゃる?!」
「だれでごじゃる!?」
「お手洗いの場所・・・知らないか・・・?」
そう、今のフレアの中ではそれが一番重要なことなのだ。
「そんな事いっている暇は-」 という前に・・フレアは吐き気がした。
「・・・・・限界が・・」
うめくように言う一人の女性に対し 知らない奴は観念したのか、
「わ・・分かったでおじゃる!右に行った所にお手洗いはあるでおじゃる!」
そんなとこにあったとは・・何故気付かなかったんだろう・・。
そんなことも考えていられなくなり、ただ単に感謝の言葉を残すフレア。
「ああ・・そっか・・ありがとう おじゃるさん ごじゃるさん・・」
「おじゃるさんじゃないでおざ~る!」
「ソーンでごじゃる」 「ゾーンでおじゃる」
そんな二人を尻目に 一気に掛けていくフレアだった。
10分後・・・。
「はぁ・・すっきり」
爽快だ と言わんばかりの笑みをしつつ帰っていこうとした。
刹那。
どんっ
「わっ」 「きゃっ」
誰かとぶつかったみたいだ。
その誰かは、こう言った。
「も、申し訳ありません。事情があり、急いでいたものですから……では-」
と行こうとした時 すぐにフレアは悟り、
「ちょっとここにはいろうか」
「え?」
そう言って近くにあったドアを直ぐに開け入り、しっかりと閉めた。
「これで誰も追ってこないよ?」
「・・・・あなたは」
そう言おうとする「誰か」の前にフレアはしっかりとした口調でこう言った。
「君、ロイヤルシートにいたお姫様だよね?」
「・・・何故・・分かったのですか?」
「うーん・・ちょっと劇酔いでうつらうつらしている時に君を見たんだよ」
フレアの瞳は獣の瞳といっても過言ではない。
その為直ぐに誰が何者なのかを察知できるというわけだ。
「それはいいとして・・貴方にお願いがあります」
「?」
「貴方の言ったとおり、私はアレクサンドリア王女のガーネット=ティル=アレクサンドロスと申します。今すぐ、わたくしを誘拐してくださらないかしら?」
「単刀直入にいうけど・・何故?目的は?どうするわけ?」
そう責められ、ガーネットはうつむく。
「・・・それは・・」
それは、自分に自信がないからだ と感じるフレア。
そう思った彼女はこう言った。
「・・じゃあ無理だな。諦めなさい」
「諦めたくない!!私は・・・-」
その時 突然扉が開いた。
「ふぅ・・ やっと観念してくれたようだな?・・って・・あんただれ」
知らない者に軽くいわれてむっとするフレア。
「失礼な。というか・・何で後ろにリーズが・・」
そう後ろにはフレアの相棒 リーズがこっそりといたのだ。
「ん?この人知っているのか? 何故か 貴方、ある一室の場所知ってますか? とかなんとかいわれて・・・ぐえっ」
そう言って前に倒れこむ・・というか潰れる 奇妙な男。
「フレア~・・大丈夫でした?」
「はい・・まぁ・・なんとか」 と怪訝そうに返事を返す。
「あの尻尾をつけているのがジタンさんっていう人です。ここまで来るのに相当駆け回りましたよ?」
「どうやってきたんだ・・・ああ・・風か」
こくりと頷くリーズ。
「それはいいとして・・貴方はどうするのですか?」
彼女―ガーネット姫は再びこう言った。
「お願いです!私を誘拐してください!!」
「な、何だって!? それじゃ、あべこべ・・」
とジタンが言い終わる前にその時外から扉を叩く音がした。
「姫様~こちらの部屋ですか~~?」
「・・プルート隊が来たようです・・・!」
こっそりというガーネット。
プルート隊とはある意味では姫を守るということで設立されたようだ。
しかし、そこから逃げている・・・ということは・・?
「何だか訳ありのようだな・・・? よし・・! ここはひとつ、オレに任せなっ・・!!」
とジダンが小さな声で自信満々に言った。
「ありがとう、恩に着ます。 えっと・・」
「俺はジタン。で、お二人さんはどうするんだ?」
と言われたので。
「どうしましょうね~ 冒険が大好きなフレアさん?」 とフレアにわざと返してみる。
「・・・分かったよ・・付き合うよ・・」ほぼ泣きそうな声で言うフレア。
こうなったらやるしかないだろう。
なにしろリーズは 一つ決めたらそれを叶えるまで永遠と付き合わされるから。
「私はフレア。よろしくな」
「私はリーズです。どうぞよろしく・・っていっている場合じゃありませんね」
と先ほどのプルート隊の「姫様~」という声を聞いてリーズが言った。
「ここがばれるのも時間の問題だね。さてお二人さん。ここからどこがいきたい?」
悩みこむジタンとガーネット。 どこがいきたいと突然いわれても困るのだが・・。
「とりあえず・・劇幕裏に」そこに行けば仲間と合流できる・・。そう思ったジタンは劇幕裏に行く事を決意した。
「了解。・・・テレポ!」
短縮的な魔法を口ずさみ、劇幕裏へといったのであった。
フレアのテレポで劇幕の裏へと飛んだ4人。
近くにはトンカチを持った男がいた。
「あ、ジタン!早く、こっちへ来るずら!!」
「きゃっ!」
と無理やり引っ張られるガーネット。
「ガーネット姫、フレア、リーズ心配しなくてもいいよ、こいつは仲間のシナ!」
「そ、そうなのですか?それは驚いたりして大変申し訳ありませんでした」
「でもまあ、その面じゃガーネット姫が驚くのも無理はないぜ」
「何だと! これでも毎朝、きちんと手入れしているずらっ!」 と反抗的になるシナ。
「えっとですね・・・」
「どうした?リーズ」
「後ろから人が来るんですけれど、それってプルート隊では-」
「「ええっ」」
全員がはもる。
まさかここまでこようとは・・・。
「待たれいっ! 姫様!このスタイナーがお助けに参上しましたぞ!」
「だってさ、ガーネット」 と逃げた張本人のガーネットに問うフレア。
「こらそこ!姫の事をむやみにいうものではない!!」
「ウルサイおじさんが来ましたね・・どうします?」
「とりあえず この軍隊をガーネット姫に近づかないようにしないとな」
「分かりました。先に行っててください!」
突然そういわれ、
「リーズさん???」
とガーネットは声を掛けた。
このまま置いてきぼりにしたら、スタイナーに捕まってしまうのでは?
そんなガーネットの考えをよそに
「心配しなくても大丈夫ですよ~。私たちは」
とにっこりと微笑むリーズ。
「まぁ まかしときなって。リーズはこういう時に本領発揮するんだ」
とフレアも自信満々だ。
「了解! ガーネット姫行きましょう」
「は・・はい」
そういわれて3人は走っていった。
「おのれ、姫様を誑かす悪党共めがっ! こうなったら!」
そういってリーズに剣の矛先を見せる。だが、その間にリーズの詠唱は終わっていた。
「・・・スロウガ!」
「う・・動けぬ―」
というスタイナーを無視し、フレアは詠唱をした。
「良い眠りを・・フェイサー」
そう唱えた途端
「・・・・・・・・・ブリ虫は苦手でござる~!!」
といい逃げていった。
※フェイサー:人の精神の弱点を読み、それを見せる 幻術の一つ
「ブリ虫って何?」
「知りません」
いつものようにリーズはのほほんと そしてキッパリと言い返した。
一方 逃げていったジタン達というと・・・「どうします? 行き止まりですよ!!」
どうやら行った先は行き止まりだったらしい・・。
「う~ん、困った……」とジタンが困り果てていると。
「ジタン! No.2に乗るずら!」とシナが言った。
「よしッ! ガーネット姫、こっちだ!」
と促している刹那。
「・・・・そうはさせんゾー!」
ドドドドド という音を立てて、ものすごい勢いで走ってくるスタイナー。
そう、ブリ虫で引いた後 裏から再び追いかけてきたのだ。
ジタン達は昇降機に乗って上へと逃げる。
それを追ってスタイナーも続く。
その上では芝居が大詰めを迎えていた・・・。
鐘が鳴り響き、捕らえられているマーカスの命も後わすかとなっている・・・という芝居の中。
「後ひとーつ!」 レア王役である盗賊団の頭 バクーは大きな声で堂々と言った。
その時、下からジタン達が迫り上がってきた!
さすがにバクー扮するレア王は驚きをみせる。
(ひ、姫様?)
(みんな! このまま芝居を続けてくれ!)
ぼそりとそして劇をしている盗賊団の皆に聞こえるように声を発するジタン。
一方、全くと言っていいほど事情が今一飲み込めないスタイナーは
「? ここはいったい何処でござるか?」 と ほけっ としていた。
そんなスタイナーを後目に、機転を利かせたマーカスは
「コーネリア!」
目の前にいたガーネットに対して言う。
(ん・・・ んっと・・)(恋人役のマーカスだ!) こっそりとガーネットをフォローするジタン。
「マーカス!」(そうそう、その調子!)
(うふふ、お芝居には少し興味がありましたの) と自信気に微笑む。
(よし! しばらくは芝居を続けよう。 ブラネ女王も観てるはずだしな!)
バクーの言葉に、タンタラスのメンバーは わかったという顔をすると大波に乗ったように、芝居はついに感動のエンディングへ。
「マーカス、逢いたかった・・ もう離れたくありません。このまま、私を何処かへ連れて行ってくださいまし!」
「どうだい? レア王さんよ、ふたりの仲を認めてやってくれよ!」
「だめだ! もう離れたくない・・・だと? ならん! それはならん!コーネリアは、この、シュナイダー王子と結婚するのだ!のう、シュナイダー王子!」
バクーはスタイナーを王子役として声を掛ける。が、スタイナーは訳がわからず、
「じ、自分と姫とがでありますか!?」
と、驚愕した大きな声で発言した。哀れと言った方がいいのか・・どうなのか・・。
「ええい、刃向かう奴は皆殺しだーっ!!」
しかし、ジタンとマーカスは王の側近に殴りかかる。
「ぐえっ!」
「痛いでよっ!」
「適わないぜよ」 「逃げるでよっ!」
側近が逃げ出すのを無視してレア王は姫に近づいていく・・。
「コーネリアよ、さあ、父と一緒に城へ帰るのだ。」
「嫌です! 私、もう嫌です!」
「コーネリア・・ もう、これ以上、父を困らせないでくれ。お前のためを思ってこその結婚なのだ。わかってくれ」
「そうはさせまいぞ、レア王! 今こそ、年貢の納め時!親の仇、そして、愛するコーネリアのため・・!この刃にものを言わせてやる!」
マーカスがレア王に剣を突き刺そうとするその時。
コーネリアが王の前に飛び出して、その剣先が姫の体を突き抜けた!!
「うッ!!」
「ど、・・どうして!?」
「マー・・・カス・・ごめんね。こんな人でも、私の父なのです・・」
「コーネリア!」
「姫様ああああっ!!」
ちなみに上記の 姫さま といっているのはもちろん先ほど驚愕の顔をしていたスタイナーである。
「父上、わがままばかりで申し訳ありませんでした。でも、どうかマーカスを許してくださいまし・・・」
そう言うとコーネリアは息絶えた・・・。
「何て事だ! もう、コーネリアの声は聞けないのか!もう、コーネリアの温かい温もりには触れられないのか!こうなれば、もう俺が生きている意味はない!!」
そう言うとマーカスは自らの首に剣を当てた!!
「うぐっ!」
「マーカス!」
それを観劇しているブラネ女王は、思わず涙ぐみ、
「うおぉぉぉ! 今年のお芝居はイイわぁ。がおおおぉぉぉぉぉ! 泣かせるじゃないのぉ」
(そういえば、ガーネットはどうしたのかしら?)
ブラネ女王は一瞬、娘の事を思ったがもはや自分自身のことで精一杯である。
「あぉっ、あおっ、あぉっっっ!!」
再び芝居に感激し始めた・・。
裏手で芝居を見ていたリーズはキラキラした瞳で、「ガーネットさん 素晴らしい芝居ですね~。私、感激しました」と言っている。
だが・・・フレアはまた少々気分が悪くなったらしく・・・吐き気を伴いそうな顔をしていた。そんな中。
「・・・あれ?あんな所にだれかいる」
そう言ってものすごい端っこに居る小さな人を見つめた。
ビビとパックである。
「く~っ、いい芝居だぜ!」
「うん、そうだね。」
「これでこそ、頑張って屋根の上を通ってきた甲斐があるってもんだな、なぁ、おい!」
と、パックが視線をずらすとそこにはプルート隊がいた。
「やべ! 逃げるぞ!ビビ!」
「こら待てー!!」 「タダ見は許さんぞー!!」
慌てて逃げるふたりだが、ビビは転んでしまい
「バカッ! 置いてくぞ!!」
「熱血~~~~~~~~っ!!」「待たんかーっ!!」
「な・・なんだあれは・・」 と驚きを隠せないフレア。
「このまま行けば・・舞台の上・・ですね・・」 と冷静に言うリーズ。
しかし、舞台の上では芝居が続いてるのだが・・・。
「父を許してくれーっ!!」
「姫様~~~っ!!」
そんな感動と一人本気で泣いているしている場面に、逃げてきたビビが飛び出してきた。
「ごめんなさーい!」
「こら待てー!!」
「待たんかーっ!!」
ビビは倒れているコーネリア姫を飛び越え、舞台のあちこちを走り回る。
ジタン達は何が何だかわからない状態に陥った。
「来ないでーっ!!」
ビビは追いかける兵士達に思わず炎の魔法をかけてしまう。
そしてそれは倒れている姫のフードにかかってしまった。
思わずガーネットは、
「熱ぅーいっ!」
なんと、顔を隠していた焦げたフードを脱ぎ捨ててしまったのだ。
そして観客もざわめき始めた。
(あ・・・あの人はガーネット姫では・・?)
(なんであそこに・・いやなんで劇に・・?)
バクーがジタンに促す。
「ジタン! そろそろ潮時だ!これで劇団タンタラスもおしめえだな!」
イコール逃げるぞ という合図でもあった。
「ガーネット姫! 逃げるぞ!!」
「何が何だか、訳がわからないぞ!?」
「スタイナー! もう、これ以上、わたくしを追いかけないでください!!」
「う~~~むぅ。そう言う訳にはいかないであります~~~っ!!」
「相変わらず頑固者ねっ!」 と、ガーネットが言う。
「がんこなおじさん」 と舞台の上へときたリーズが言う。 「もう少し、きちんと役回りを考えてればよかったのに・・」
フレアも登ってきたらしく、「残念無念って訳だ」 と言う。
「こんな奴は放っておいて早く行こう!」
と言って、ジタンはガーネットを引っ張り走って行こうとしたが気になっていた少年ビビに声を掛けた。
「おい、お前、大丈夫か!?」
「う、うん。ちょっとコケただけ―」
「えええいっ! 姫様、覚悟なされい~っ!」
懲りないのか・・ そういってガーネットめがけて走ってくるスタイナー。
その時。
何かが切れた音がした。
「・・・いいかげんにしないとサイレスしますよ?」
その音の主はリーズだった。
にっこりと微笑みながらもその裏には「いい演技だったのにめちゃくちゃにしたのはこいつだ。絶対に許さない」という悪夢にも似たオーラがでている、とフレアは思った。
「り・・リズ。おさえて・・おさえてくれ」
そう 震えながら言うフレアがいた。
「もう限界です。 サイレス!」
― ― ― ―
何とか劇場艇の操縦席に逃げたバクー・フレア・リーズ・ジタン・ガーネット・ビビらは
「準備完了したずらよ!」
「こっちもOKだ!!」
「お~~~っし!! 出発進行だ~~~!!」
「らじゃ~~~っ!!!」
「行くぜーっ!!」
劇場艇の動力が稼働を始め浮かび上がっていく・・・。
そんな中、怒ったブラネ女王は兵士に命じて砲台の準備を始め、劇場艇に多数の銛が撃ち込まる。
「やばいな・・」
「フレア・・?」
「リズ 後は頼む」
そう言って詠唱をはじめた。
「悠久なる我が火よ・・守りを経て我が前へ・・ ウォーム!!」
そういって出たのは狐の尾のような火だった。
そのまま、劇場艇を守るかのように回り込んでいった。
「な・・なんだこれは!」
バクーが驚いて声を発する。
「ウォーム・・・火の守りです・・」
そう言ったのは、リーズだった。
「それはいいとして・・何か飛んできますよ・・?」
ブラネ女王が更なる砲台を準備させそこから砲弾が撃ち込まれた。
それは炎の魔物ボムの姿となり、こちらに向かって飛んできた。
一方スタイナーはそれでもまだガーネット姫を押さえようと立ち向かってくるが
・・・後ろから迫るボムの姿にはきづいていない!!
「おっさん、後ろを見ろ。」
「お願いスタイナー、後ろを見て!」
「むぐ・・むぐぐぐ・・(そのような手には騙されんぞ!ええいっ、観念するのだ!!)」
とでもいいたいが、サイレスの名残があるのか、口封じされて上手く声が出ない。
「ボムがぁ」 と自分の事のように目をつむるビビ。
そんなビビに対し、スタイナーもようやくボムの姿に気づいたようだ。
しかし、時既に遅く。
ボムは大爆発を起こしはしなかった。
何故か?
「・・・アクア!」
リーズの魔法がその前に発動したからだ。
ブラネ女王が悔しがる中、劇場艇はアレクサンドリアを後にした。
しかし、エンジン部にボムの影響が残っていたのか。
霧の海に入った途端・・・ 「お、落ちるずらっ!」
劇場艇は霧の海に沈み、森の中へと墜落していく。
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目の前で逃げていく劇場艇を見ながら、ブラネ女王は口惜しそうに 「あの小娘が・・ まだ子供だと思っていたのに、まさか、あんな大胆な事を考えていたとは・・な」
そういい、王の間へと行く。
「ゾーン! ソーン! 例の物は、もう使えるようになったのか?」
「もう、実戦で使えるレベルでおじゃるよ。」
「ガーネット姫なんてイチコロでごじゃるよ。」
そんな二人をよそに ブラネ女王はイライラしながらこう言った。
「誰が殺せと言った!?ガーネットは生かして連れ戻せ!絶対に!」
「ねぇ、だいじょ~ぶ?」 そう言ってきた見知らぬ女の子。
「 ハイ! 大切なチケット!じゃあねっ!」
そう言うと、女の子は男の子が落とした劇のチケットを拾ってあげると 彼女もまた城へ向かって走っていった。
アレクサンドリア・・・景色がとても綺麗で、このガイアの中ではもっとも美しい地。
煌く大地が旅人を誘うとも言われている。
そんな輝かしい場所から物語は始まる。
男の子が気を取り直して前に進もうとすると今度は後ろからネズミの子がぶつかってきた。
「イテッ! お前っ、邪魔なんだよっ!!!」 悪態をつけて走り去っていった。
それにしても今日はいろいろな人達が城を目指している・・そしてぶつかる。
やはり自分はそれぐらいチビなのか と改めて思う男の子。
横を見ると、ガイドが貴族達を案内している。
何故こんなにも今日は、貴族達がきているのだろうか。
それもそのはず、ここアレクサンドリアで大人気の劇団『タンタラス』が人気の劇を上演するとあって、貴族も庶民も皆こぞって城へと向かっているのである。
男の子は このチケットをどうすればいいのか と街の人に聞くと、
「 早速広場のチケットブースに立ち寄ってくるといいよ。そこでスタンプをもらわないとお城の中へは入れないからね」と言うことなので広場へと向かい、チケットブースを覗き込むとチケット屋のおじさんが話し掛けてきた。
「何かご用?」
「ん、んっと・・これ見たいんだけど」
と言い、男の子はチケットを取り出し、見せる。
しかし・・それは。
「おやぁ? そのチケットは何か変だねえ。こりゃ、偽物だな」
「え~~~っ!??」と悲鳴のような声を上げる男の子。
そのチケットをよく見ると、確かに『きみの子猫になりたい』という文字が書いてある。
がっくりと肩を落とす男の子。
「そんなにガッカリするなよ、気持ちはわかるけどさ……そうだ、これでもやるからさ、元気出しなよ!」
チケット屋から巷で流行っているカードを手渡された。
正直・・・取り替えてほしかった。
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(・・・見たかったのになぁ・・・)
仕方がないので街中をうろうろとする。
裏通りで道端に石でもあったのか、躓いてしまった。
その脇では看板屋が看板を取り付けようとしていたがその振動で看板が外れてしまい・・。
「あ! たぁ~っ、おめえがコケるから 外れちまったじゃねえか!! 」
「ご・・ごめんなさい・・」
男の子は外れた看板をなんとか直すと、看板屋は芝居を見るのか足早に去っていった・・・。
(それにしても今日はよく躓いたり・・転んだりするなぁ・・)
そう思いつつきょろきょろとしていると、向こうから先程ぶつかったネズミの子がやってくる。
辺りをキョロキョロと見回しながら、男の子の姿を見つけると
「おいっ、お前っ! さっき、持ってたチケットが偽物だって言われてただろ! 俺は、見てたんだぜ!」
「そ、そんな事ない。というか見ていたんだったらチケット頂戴!」
「嘘をつくなって! しかも俺もチケット持ってないし・・。・・・そうだ!俺の家来になれば、今日の芝居を見せてやる! 家来になるか!?」
芝居を見せてやる・・・ ということは、タダ見をするつもりらしい。
元々、純粋な性格の男の子は 嫌だ と首を振ると、ネズミの子は
「そうか・・・じゃあな!」
そう言うと足早に去っていく。
その後姿は少々寂しさが残っていた。
「はぁ・・」 結局芝居は見れそうもない。
せっかくここまで来たのに・・。
そう思い、あの時のネズミの子の話を考えてみる。
(うーん・・・家来にならないと見れないし、あまり家来なんてなりたくないし・・・)
まぁそれは相手がネズミの子なのだから仕方が無いといえば仕方が無いのだが。
しかし、見たい。
そんな欲求の中、ネズミの子と再び出会うことになった。
そう、ネズミの子が待っていたのだ。
(やっぱりきたか・・)
そう思い自信満々に行ってみるネズミの子。
「家来になるか!?」
(しょがない・・でも見たいんだっ!!)
やむを得ず首を縦に振る男の子。
ネズミの子はそれを見て、少々満足げに男の子を命令した。
「よし! そうと決まったら、早速命令だ!お前! あっちから人が来ないか、見張ってろ!」
何をするのかわからないまま通りの端に行き、見張ってると
「誰も来ないか!?」 「誰か来そうな気がする。」
「本当か!? ちゃんと見ろよ! 誰も来ないか!?」
「うん、来ない。」 「よし! じゃあ、計画実行だ!!」
そう言うとネズミの子は先程看板屋が使っていた梯子を持って走っていく。
「遅れずについて来いよ! 尖塔の中に入るぞ!これからこの塔の上に登っから! お前、先に登ってみろ!つーか早く登れ!」
ネズミの子に急かされ、塔の上へと続く梯子を登ろうとする・・が。
「お~い、早く登ってこいよ~!」
「・・・」
「???どうしたんだ?」
「ぼ・・僕・・高所恐怖症なんだ・・」
「・・・お前は家来なんだ・・俺の命令に従えよ。つーか これぐらい、大丈夫だろ?」
梯子の高さは男の子が思っていた高さよりも低かった。
「う・・うん・・何とか登れるよ・・」
「さあ! 急がないと、芝居が始まっちまうぜ!」
そう言うとネズミの子は尖塔から屋根伝いに走っていく。
流石ネズミと言っていえよう。
男の子は恐る恐る足を踏み出し、何とか尖塔から屋根に渡してある板きれを渡り、屋根に辿り着くと、ヘタンと座り込んでしまった。
「おらおら、腰を抜かしてる暇はないぜっ!」
そう言うと先に進んでしまうが、男の子が後込みをしているのを見て
「またかよ・・・ 大丈夫だって!ビビんなよ、落ちないって!」
男の子は勇気を出して再び屋根と屋根を渡してある板きれを歩く。
が、辿り着いた途端、その板きれが落ちてしまった。
「ハハハ・・落ちたな。まあ、細かい事は気にするなって!」
ふと何かを思い出したようにそのネズミは男の子に対して、聞いてみた。
「お前の名前、まだ、聞いていなかったよな?」
「・・ビビ・・」
「そうか! ビビってゆうのか!ちょっと変わった名前だな・・・。俺は、パックっていうんだ。これからもヨロシクな!」
「うん・・!」
これからって、この仲はいつまでも続くつもりなのだろうか・・?
ようやく城に辿り着くと、パックは担いでいた梯子を渡して
「この壁を越えればもう、城の中だ! さあ、行こうぜ!」
と、2人は城の中へと駆け込んでいった。
------
フレアとリーズは城の目の前にいた。
もちろんしっかりとチケットを見せて だ。
「綺麗な所ですね~」
「・・・」
「タイムからチケットを盗んできて本当によかったです~・・・どうしたんですか?」
「いや・・落ち着かなくて」
そう言われればそうだ。
フレアは貴族系の者ではないし、こんな所は久しぶり・・・というか。
(緊張する・・・)
「別に庶民に紛れて見ればいいのではないですか?」
「だったらこういうパターンがあったりしたら?例えば私がお手洗いにいったりして-」
そんなことをいっている暇は無い といわんばかりに。
「じゃあ行きますか」
と そそくさと城の中に入っていった。
「ちょ・・!最後まで話聞いてよ!」
そう言ってフレアも城の中へと入っていったのである。
少女が住んでいる世界 アースは今日も平和。
でもやはり「時の旅人」の血が騒ぐのかとっても暇そうで。
「あーあ・・・どこでもいいから冒険しに行きたいなぁ・・・でもリズが―」
「私が何ですか?」
そう言ってきたのは翠色の髪を持つ少女だった。
しかし、それは光に反射してとてもまばゆい感じである。
(まさかごろ寝をして「旅がしたい・・」と唸っていた所は・・聞いていない・・よね?)
そんな動揺を隠せない紅の髪を持つ少女をよそに話をし始めるリーズ。
「まぁそれはいいとして、フレア。これを見に行きましょう!」
と言って ばっ と広げた1枚のチラシ。
そこにはこう書かれていた。
アレクサンドリアで大人気の芝居『君の小鳥になりたい』を上演します!
「月日は・・・って 明日じゃん!?」
「はい。明日ですけど?」
「う・・私こういうもの好きじゃ-」
その言葉を遮り。
「旅したいとわがまま言っていた人・・誰ですかね?」
「う・・・(き・・聞いていたのか)」
「せっかく・・人がついに手に入れたものを・・すぐにぽいぽいと捨てるのですね?」
「・・・わかった・・行くから・・だから殺さないで・・・」
半場脅しなのか、それとも本気なのかは知らないが。
小さなナイフで脅すリーズ。
・・恐喝ですか?
「よろしい。ではすぐさま行かないと間に合いませんから 直ぐに仕度してくださいね フレア」
そう言って小さなナイフをしまった。
そんな彼女を見つめていたフレアは思う。
(・・どこにあったんだろう・・あのナイフ・・)