「さあて、お集まりの皆様!今宵、我らが語る物語は、遙か遠い昔の物語でございます。
物語の主人公であるコーネリア姫は、恋人マーカスとの仲を引き裂かれそうになり・・・。
一度は城を出ようと決心するのですが、父親であるレア王に連れ戻されてしまいます。
今宵のお話は、それを聞いた恋人のマーカスがコーネリア姫の父親に刃を向けるところから始まります。
それでは、ロイヤルシートにおられますブラネ女王様も、ガーネット姫様も・・・。
そして貴族の方々も、屋根の上からご覧の方々も、手にはどうぞ厚手のハンカチをご用意くださいませ」
「ですって。いちよハンカチ出しときましょうか フレア」
「・・・・・」
ますます顔色が冷めていく状態のフレアであった。
そして劇は始まった。
「父を殺され! 母を殺され!そして、恋人と引き離されたマーカスよ!」
「おお、驚くも不仕合わせなマーカスよ!これからお前は何を希望に生きてゆけばよいのだ!」
「こうなれば我が友の為!憎きレア王の胸に烈火の剣を突き刺してやろうではないか!」
「オォーッ!」 「オォーッ!」
突然火が登った。
・・これも演出らしい。
「助太刀に来たぞ、相棒!!」
「手出しをするでない!!」
「そうはいかぬ! 俺もレア王には兄弟を殺されているのだ!!」
「ええい、下がれ下がれ、無礼者!我が野望の行く手を塞ぐ奴は誰とて容赦はせぬぞ!余に刃向かう奴は、この闇夜の露と消してくれるわ!!」
「レア王よ、我が友の心の痛みを受けてみよ!我が友の心の悲しみを受けてみよ!!」
「待てっ!」
「何故止めるっ、ブランク!!」
「ジタンよ、冷静になってよく考えてみろよ。シュナイダー王子とコーネリア姫が結婚すれば、ふたつの国は平和になるのだ!」
「笑止千万! それですべてが丸く収まれば、世の中に不仕合わせなど存在しない!」
「こうなれば、いざ勝負!」
「望むところだ!!」そういってチャンバラを始めた。
しばらくの間無言になりながらフレアはぼぉ・・・っと見ている。
「この勝負は、お預けだっ!」
「そうは、させるか!!」
そう言い、走り去っていった。
1幕目は終わったようである。
「ちょっと・・お手洗い行って来る・・」
そういってフレアはよろよろと会場を後にしたのだった。
(・・・・無理やり連れてきちゃったけど・・フレア大丈夫なのでしょうか?)
こういう所は嫌いだといっていたフレア。
流石に今回のはきついのだろうと少々苦しくなるリーズであった。
「うう・・・」
完璧に気持ち悪くなってしまった。
さらに、フレアには酷い広さの城。
「なんで・・はぁ・・こんなにお城が広いんだ・・ふぅ」
そう呟きながら、完全に道に迷ったフレアはついには劇幕裏まで来てしまった。
その時だった。
「大変でおじゃるよ!」
「大変でごじゃるよ!」
後ろには道化師がいたらしく。
「?? おじゃる?」
とかなりリアルに言ってしまったフレア。
しかし2人の道化師は気付かないのか。
「一大事でおじゃる~!!」
「ブラネ様に怒られるでごじゃる~!!」
と慌てたように言っている。
(ブラネ様・・ああ・・あそこの最高級のシートにいた貴族か・・ってそれはいい・・として)
「急ぐでおじゃる!」
「急ぐでごじゃる!」
「ちょっと待て・・・!」と知らない奴を止めるフレア。
「だれでおじゃる?!」
「だれでごじゃる!?」
「お手洗いの場所・・・知らないか・・・?」
そう、今のフレアの中ではそれが一番重要なことなのだ。
「そんな事いっている暇は-」 という前に・・フレアは吐き気がした。
「・・・・・限界が・・」
うめくように言う一人の女性に対し 知らない奴は観念したのか、
「わ・・分かったでおじゃる!右に行った所にお手洗いはあるでおじゃる!」
そんなとこにあったとは・・何故気付かなかったんだろう・・。
そんなことも考えていられなくなり、ただ単に感謝の言葉を残すフレア。
「ああ・・そっか・・ありがとう おじゃるさん ごじゃるさん・・」
「おじゃるさんじゃないでおざ~る!」
「ソーンでごじゃる」 「ゾーンでおじゃる」
そんな二人を尻目に 一気に掛けていくフレアだった。
10分後・・・。
「はぁ・・すっきり」
爽快だ と言わんばかりの笑みをしつつ帰っていこうとした。
刹那。
どんっ
「わっ」 「きゃっ」
誰かとぶつかったみたいだ。
その誰かは、こう言った。
「も、申し訳ありません。事情があり、急いでいたものですから……では-」
と行こうとした時 すぐにフレアは悟り、
「ちょっとここにはいろうか」
「え?」
そう言って近くにあったドアを直ぐに開け入り、しっかりと閉めた。
「これで誰も追ってこないよ?」
「・・・・あなたは」
そう言おうとする「誰か」の前にフレアはしっかりとした口調でこう言った。
「君、ロイヤルシートにいたお姫様だよね?」
「・・・何故・・分かったのですか?」
「うーん・・ちょっと劇酔いでうつらうつらしている時に君を見たんだよ」
フレアの瞳は獣の瞳といっても過言ではない。
その為直ぐに誰が何者なのかを察知できるというわけだ。
「それはいいとして・・貴方にお願いがあります」
「?」
「貴方の言ったとおり、私はアレクサンドリア王女のガーネット=ティル=アレクサンドロスと申します。今すぐ、わたくしを誘拐してくださらないかしら?」
「単刀直入にいうけど・・何故?目的は?どうするわけ?」
そう責められ、ガーネットはうつむく。
「・・・それは・・」
それは、自分に自信がないからだ と感じるフレア。
そう思った彼女はこう言った。
「・・じゃあ無理だな。諦めなさい」
「諦めたくない!!私は・・・-」
その時 突然扉が開いた。
「ふぅ・・ やっと観念してくれたようだな?・・って・・あんただれ」
知らない者に軽くいわれてむっとするフレア。
「失礼な。というか・・何で後ろにリーズが・・」
そう後ろにはフレアの相棒 リーズがこっそりといたのだ。
「ん?この人知っているのか? 何故か 貴方、ある一室の場所知ってますか? とかなんとかいわれて・・・ぐえっ」
そう言って前に倒れこむ・・というか潰れる 奇妙な男。
「フレア~・・大丈夫でした?」
「はい・・まぁ・・なんとか」 と怪訝そうに返事を返す。
「あの尻尾をつけているのがジタンさんっていう人です。ここまで来るのに相当駆け回りましたよ?」
「どうやってきたんだ・・・ああ・・風か」
こくりと頷くリーズ。
「それはいいとして・・貴方はどうするのですか?」
彼女―ガーネット姫は再びこう言った。
「お願いです!私を誘拐してください!!」
「な、何だって!? それじゃ、あべこべ・・」
とジタンが言い終わる前にその時外から扉を叩く音がした。
「姫様~こちらの部屋ですか~~?」
「・・プルート隊が来たようです・・・!」
こっそりというガーネット。
プルート隊とはある意味では姫を守るということで設立されたようだ。
しかし、そこから逃げている・・・ということは・・?
「何だか訳ありのようだな・・・? よし・・! ここはひとつ、オレに任せなっ・・!!」
とジダンが小さな声で自信満々に言った。
「ありがとう、恩に着ます。 えっと・・」
「俺はジタン。で、お二人さんはどうするんだ?」
と言われたので。
「どうしましょうね~ 冒険が大好きなフレアさん?」 とフレアにわざと返してみる。
「・・・分かったよ・・付き合うよ・・」ほぼ泣きそうな声で言うフレア。
こうなったらやるしかないだろう。
なにしろリーズは 一つ決めたらそれを叶えるまで永遠と付き合わされるから。
「私はフレア。よろしくな」
「私はリーズです。どうぞよろしく・・っていっている場合じゃありませんね」
と先ほどのプルート隊の「姫様~」という声を聞いてリーズが言った。
「ここがばれるのも時間の問題だね。さてお二人さん。ここからどこがいきたい?」
悩みこむジタンとガーネット。 どこがいきたいと突然いわれても困るのだが・・。
「とりあえず・・劇幕裏に」そこに行けば仲間と合流できる・・。そう思ったジタンは劇幕裏に行く事を決意した。
「了解。・・・テレポ!」
短縮的な魔法を口ずさみ、劇幕裏へといったのであった。
フレアのテレポで劇幕の裏へと飛んだ4人。
近くにはトンカチを持った男がいた。
「あ、ジタン!早く、こっちへ来るずら!!」
「きゃっ!」
と無理やり引っ張られるガーネット。
「ガーネット姫、フレア、リーズ心配しなくてもいいよ、こいつは仲間のシナ!」
「そ、そうなのですか?それは驚いたりして大変申し訳ありませんでした」
「でもまあ、その面じゃガーネット姫が驚くのも無理はないぜ」
「何だと! これでも毎朝、きちんと手入れしているずらっ!」 と反抗的になるシナ。
「えっとですね・・・」
「どうした?リーズ」
「後ろから人が来るんですけれど、それってプルート隊では-」
「「ええっ」」
全員がはもる。
まさかここまでこようとは・・・。
「待たれいっ! 姫様!このスタイナーがお助けに参上しましたぞ!」
「だってさ、ガーネット」 と逃げた張本人のガーネットに問うフレア。
「こらそこ!姫の事をむやみにいうものではない!!」
「ウルサイおじさんが来ましたね・・どうします?」
「とりあえず この軍隊をガーネット姫に近づかないようにしないとな」
「分かりました。先に行っててください!」
突然そういわれ、
「リーズさん???」
とガーネットは声を掛けた。
このまま置いてきぼりにしたら、スタイナーに捕まってしまうのでは?
そんなガーネットの考えをよそに
「心配しなくても大丈夫ですよ~。私たちは」
とにっこりと微笑むリーズ。
「まぁ まかしときなって。リーズはこういう時に本領発揮するんだ」
とフレアも自信満々だ。
「了解! ガーネット姫行きましょう」
「は・・はい」
そういわれて3人は走っていった。
「おのれ、姫様を誑かす悪党共めがっ! こうなったら!」
そういってリーズに剣の矛先を見せる。だが、その間にリーズの詠唱は終わっていた。
「・・・スロウガ!」
「う・・動けぬ―」
というスタイナーを無視し、フレアは詠唱をした。
「良い眠りを・・フェイサー」
そう唱えた途端
「・・・・・・・・・ブリ虫は苦手でござる~!!」
といい逃げていった。
※フェイサー:人の精神の弱点を読み、それを見せる 幻術の一つ
「ブリ虫って何?」
「知りません」
いつものようにリーズはのほほんと そしてキッパリと言い返した。
一方 逃げていったジタン達というと・・・「どうします? 行き止まりですよ!!」
どうやら行った先は行き止まりだったらしい・・。
「う~ん、困った……」とジタンが困り果てていると。
「ジタン! No.2に乗るずら!」とシナが言った。
「よしッ! ガーネット姫、こっちだ!」
と促している刹那。
「・・・・そうはさせんゾー!」
ドドドドド という音を立てて、ものすごい勢いで走ってくるスタイナー。
そう、ブリ虫で引いた後 裏から再び追いかけてきたのだ。
ジタン達は昇降機に乗って上へと逃げる。
それを追ってスタイナーも続く。
その上では芝居が大詰めを迎えていた・・・。
鐘が鳴り響き、捕らえられているマーカスの命も後わすかとなっている・・・という芝居の中。
「後ひとーつ!」 レア王役である盗賊団の頭 バクーは大きな声で堂々と言った。
その時、下からジタン達が迫り上がってきた!
さすがにバクー扮するレア王は驚きをみせる。
(ひ、姫様?)
(みんな! このまま芝居を続けてくれ!)
ぼそりとそして劇をしている盗賊団の皆に聞こえるように声を発するジタン。
一方、全くと言っていいほど事情が今一飲み込めないスタイナーは
「? ここはいったい何処でござるか?」 と ほけっ としていた。
そんなスタイナーを後目に、機転を利かせたマーカスは
「コーネリア!」
目の前にいたガーネットに対して言う。
(ん・・・ んっと・・)(恋人役のマーカスだ!) こっそりとガーネットをフォローするジタン。
「マーカス!」(そうそう、その調子!)
(うふふ、お芝居には少し興味がありましたの) と自信気に微笑む。
(よし! しばらくは芝居を続けよう。 ブラネ女王も観てるはずだしな!)
バクーの言葉に、タンタラスのメンバーは わかったという顔をすると大波に乗ったように、芝居はついに感動のエンディングへ。
「マーカス、逢いたかった・・ もう離れたくありません。このまま、私を何処かへ連れて行ってくださいまし!」
「どうだい? レア王さんよ、ふたりの仲を認めてやってくれよ!」
「だめだ! もう離れたくない・・・だと? ならん! それはならん!コーネリアは、この、シュナイダー王子と結婚するのだ!のう、シュナイダー王子!」
バクーはスタイナーを王子役として声を掛ける。が、スタイナーは訳がわからず、
「じ、自分と姫とがでありますか!?」
と、驚愕した大きな声で発言した。哀れと言った方がいいのか・・どうなのか・・。
「ええい、刃向かう奴は皆殺しだーっ!!」
しかし、ジタンとマーカスは王の側近に殴りかかる。
「ぐえっ!」
「痛いでよっ!」
「適わないぜよ」 「逃げるでよっ!」
側近が逃げ出すのを無視してレア王は姫に近づいていく・・。
「コーネリアよ、さあ、父と一緒に城へ帰るのだ。」
「嫌です! 私、もう嫌です!」
「コーネリア・・ もう、これ以上、父を困らせないでくれ。お前のためを思ってこその結婚なのだ。わかってくれ」
「そうはさせまいぞ、レア王! 今こそ、年貢の納め時!親の仇、そして、愛するコーネリアのため・・!この刃にものを言わせてやる!」
マーカスがレア王に剣を突き刺そうとするその時。
コーネリアが王の前に飛び出して、その剣先が姫の体を突き抜けた!!
「うッ!!」
「ど、・・どうして!?」
「マー・・・カス・・ごめんね。こんな人でも、私の父なのです・・」
「コーネリア!」
「姫様ああああっ!!」
ちなみに上記の 姫さま といっているのはもちろん先ほど驚愕の顔をしていたスタイナーである。
「父上、わがままばかりで申し訳ありませんでした。でも、どうかマーカスを許してくださいまし・・・」
そう言うとコーネリアは息絶えた・・・。
「何て事だ! もう、コーネリアの声は聞けないのか!もう、コーネリアの温かい温もりには触れられないのか!こうなれば、もう俺が生きている意味はない!!」
そう言うとマーカスは自らの首に剣を当てた!!
「うぐっ!」
「マーカス!」
それを観劇しているブラネ女王は、思わず涙ぐみ、
「うおぉぉぉ! 今年のお芝居はイイわぁ。がおおおぉぉぉぉぉ! 泣かせるじゃないのぉ」
(そういえば、ガーネットはどうしたのかしら?)
ブラネ女王は一瞬、娘の事を思ったがもはや自分自身のことで精一杯である。
「あぉっ、あおっ、あぉっっっ!!」
再び芝居に感激し始めた・・。
裏手で芝居を見ていたリーズはキラキラした瞳で、「ガーネットさん 素晴らしい芝居ですね~。私、感激しました」と言っている。
だが・・・フレアはまた少々気分が悪くなったらしく・・・吐き気を伴いそうな顔をしていた。そんな中。
「・・・あれ?あんな所にだれかいる」
そう言ってものすごい端っこに居る小さな人を見つめた。
ビビとパックである。
「く~っ、いい芝居だぜ!」
「うん、そうだね。」
「これでこそ、頑張って屋根の上を通ってきた甲斐があるってもんだな、なぁ、おい!」
と、パックが視線をずらすとそこにはプルート隊がいた。
「やべ! 逃げるぞ!ビビ!」
「こら待てー!!」 「タダ見は許さんぞー!!」
慌てて逃げるふたりだが、ビビは転んでしまい
「バカッ! 置いてくぞ!!」
「熱血~~~~~~~~っ!!」「待たんかーっ!!」
「な・・なんだあれは・・」 と驚きを隠せないフレア。
「このまま行けば・・舞台の上・・ですね・・」 と冷静に言うリーズ。
しかし、舞台の上では芝居が続いてるのだが・・・。
「父を許してくれーっ!!」
「姫様~~~っ!!」
そんな感動と一人本気で泣いているしている場面に、逃げてきたビビが飛び出してきた。
「ごめんなさーい!」
「こら待てー!!」
「待たんかーっ!!」
ビビは倒れているコーネリア姫を飛び越え、舞台のあちこちを走り回る。
ジタン達は何が何だかわからない状態に陥った。
「来ないでーっ!!」
ビビは追いかける兵士達に思わず炎の魔法をかけてしまう。
そしてそれは倒れている姫のフードにかかってしまった。
思わずガーネットは、
「熱ぅーいっ!」
なんと、顔を隠していた焦げたフードを脱ぎ捨ててしまったのだ。
そして観客もざわめき始めた。
(あ・・・あの人はガーネット姫では・・?)
(なんであそこに・・いやなんで劇に・・?)
バクーがジタンに促す。
「ジタン! そろそろ潮時だ!これで劇団タンタラスもおしめえだな!」
イコール逃げるぞ という合図でもあった。
「ガーネット姫! 逃げるぞ!!」
「何が何だか、訳がわからないぞ!?」
「スタイナー! もう、これ以上、わたくしを追いかけないでください!!」
「う~~~むぅ。そう言う訳にはいかないであります~~~っ!!」
「相変わらず頑固者ねっ!」 と、ガーネットが言う。
「がんこなおじさん」 と舞台の上へときたリーズが言う。 「もう少し、きちんと役回りを考えてればよかったのに・・」
フレアも登ってきたらしく、「残念無念って訳だ」 と言う。
「こんな奴は放っておいて早く行こう!」
と言って、ジタンはガーネットを引っ張り走って行こうとしたが気になっていた少年ビビに声を掛けた。
「おい、お前、大丈夫か!?」
「う、うん。ちょっとコケただけ―」
「えええいっ! 姫様、覚悟なされい~っ!」
懲りないのか・・ そういってガーネットめがけて走ってくるスタイナー。
その時。
何かが切れた音がした。
「・・・いいかげんにしないとサイレスしますよ?」
その音の主はリーズだった。
にっこりと微笑みながらもその裏には「いい演技だったのにめちゃくちゃにしたのはこいつだ。絶対に許さない」という悪夢にも似たオーラがでている、とフレアは思った。
「り・・リズ。おさえて・・おさえてくれ」
そう 震えながら言うフレアがいた。
「もう限界です。 サイレス!」
― ― ― ―
何とか劇場艇の操縦席に逃げたバクー・フレア・リーズ・ジタン・ガーネット・ビビらは
「準備完了したずらよ!」
「こっちもOKだ!!」
「お~~~っし!! 出発進行だ~~~!!」
「らじゃ~~~っ!!!」
「行くぜーっ!!」
劇場艇の動力が稼働を始め浮かび上がっていく・・・。
そんな中、怒ったブラネ女王は兵士に命じて砲台の準備を始め、劇場艇に多数の銛が撃ち込まる。
「やばいな・・」
「フレア・・?」
「リズ 後は頼む」
そう言って詠唱をはじめた。
「悠久なる我が火よ・・守りを経て我が前へ・・ ウォーム!!」
そういって出たのは狐の尾のような火だった。
そのまま、劇場艇を守るかのように回り込んでいった。
「な・・なんだこれは!」
バクーが驚いて声を発する。
「ウォーム・・・火の守りです・・」
そう言ったのは、リーズだった。
「それはいいとして・・何か飛んできますよ・・?」
ブラネ女王が更なる砲台を準備させそこから砲弾が撃ち込まれた。
それは炎の魔物ボムの姿となり、こちらに向かって飛んできた。
一方スタイナーはそれでもまだガーネット姫を押さえようと立ち向かってくるが
・・・後ろから迫るボムの姿にはきづいていない!!
「おっさん、後ろを見ろ。」
「お願いスタイナー、後ろを見て!」
「むぐ・・むぐぐぐ・・(そのような手には騙されんぞ!ええいっ、観念するのだ!!)」
とでもいいたいが、サイレスの名残があるのか、口封じされて上手く声が出ない。
「ボムがぁ」 と自分の事のように目をつむるビビ。
そんなビビに対し、スタイナーもようやくボムの姿に気づいたようだ。
しかし、時既に遅く。
ボムは大爆発を起こしはしなかった。
何故か?
「・・・アクア!」
リーズの魔法がその前に発動したからだ。
ブラネ女王が悔しがる中、劇場艇はアレクサンドリアを後にした。
しかし、エンジン部にボムの影響が残っていたのか。
霧の海に入った途端・・・ 「お、落ちるずらっ!」
劇場艇は霧の海に沈み、森の中へと墜落していく。
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目の前で逃げていく劇場艇を見ながら、ブラネ女王は口惜しそうに 「あの小娘が・・ まだ子供だと思っていたのに、まさか、あんな大胆な事を考えていたとは・・な」
そういい、王の間へと行く。
「ゾーン! ソーン! 例の物は、もう使えるようになったのか?」
「もう、実戦で使えるレベルでおじゃるよ。」
「ガーネット姫なんてイチコロでごじゃるよ。」
そんな二人をよそに ブラネ女王はイライラしながらこう言った。
「誰が殺せと言った!?ガーネットは生かして連れ戻せ!絶対に!」